優勝経験のある3カ国が顔を揃えた“死の組”と呼ぶにふさわしいグループだ。1W杯初代王者で優勝2度(30年、50年)のウルグアイ、4度の優勝(34年、38年、82年、06年)を誇るイタリア、66年に母国開催を制したイングランド。この3カ国が決勝トーナメント進出をかけて火花を散らす中で、コスタリカは粘り強く勝ち点獲得を狙う。

 ウルグアイは南米予選で5位となり、大陸間プレーオフを勝ち抜いてなんとか2大会連続12回目のW杯出場を決めた。
 チームは南アフリカW杯で4位、そして11年コパ・アメリカを制したメンバーがベースとなっている。スタイルは堅守速攻。DFディエゴ・ルガノを中心に強固なブロックを築き、ボールを奪った後は素早く前線につなげる。それを受けるアタッカーの陣容は、すこぶる豪華だ。南アW杯得点王&MVPのFWディエゴ・フォルラン、今季のプレミアリーグ得点王FWルイス・スアレス、パリ・サンジェルマンでゴールを量産したFWエディソン・カバーニ……彼らの破壊力は今大会屈指と言える。基本的にはスアレス、カバーニが4−4−2システムの2トップで先発し、35歳のフォルランが出番を待つ。戦況によっては彼ら3人を同時起用する場面もあり得る。

 注目はフォルランだ。今季からJ1のセレッソ大阪に加入し、日本でのプレーを経てW杯に臨む。W杯イヤーでの移籍は慣れない環境に飛び込むことでコンディションが低下させるリスクもあった。だが、フォルランはC大阪の入団会見で「日本のサッカーは技術レベルが高く、フィジカルもハードなものを要求される、W杯に向けて、良い準備ができる」と断言。序盤こそゴールを奪えなかったものの、徐々に調子を上げてW杯代表入りを果たした。スピードの衰えは否めないが、得点力の高さは健在。フォルランがブラジルW杯で活躍すれば、Jリーグのレベルの高さをアピールすることにつながる。

 イングランドは5大会連続14回目の出場だ。言わずと知れた“サッカーの母国”だが、過去4大会はベスト8以下の結果に甘んじている。今大会で上位進出を果たし、母国の威信を取り戻せるか。
 イングランドは4−3−3システムを軸に、ゴール方向に早くボールを運ぶサッカーを展開する。中心選手はFWウェイン・ルーニーだ。最前線でボールを呼び込み、正確なシュートや鋭いドリブルで相手ゴールを脅かす。パスセンスも高く、ルーニーがボールを受けて、サイドのFWダニエル・スターリッジ、FWラーヒム・スターリングらの裏へ飛び出しを促せる。中盤ではMFスティーブン・ジェラード、MFフランク・ランパードの両ベテランが攻守においてチームを支える。

 懸念されるのは守備陣だ。DFガリー・ケイヒル、DFフィル・ジャギエルカの両センターバックは身体能力は高いが、連係に難があり、たびたび1対1の場面をつくられる。全体的に見ても前がかりになることが多く、攻から守への切り替えが遅れがちなのも不安材料だ。本番までに急激なコンビネーションの向上は望めない。激しいフィジカルコンタクトを伴ったハードな守備を徹底することが求められる。その意味で、組織力で上回るイタリアとの初戦で勝ち点を獲得できるかが、グループリーグ突破のポイントとなる。

 カルチョの国・イタリアは連覇を狙った南アW杯で屈辱の未勝利に終わり、グループリーグで姿を消した。ブラジルW杯では“アズーリ”(イタリアの愛称)復権を目指す。

 イタリアといえば、“カテナチオ”(栓抜き)と呼ばれる堅守だ。しかし、チェーザレ・プランデッリ監督がつくりあげたチームは、伝統から脱却した攻撃的なスタイルを得意とする。レジスタのMFアンドレア・ピルロを中心にパスを回し、相手の守備組織を崩しにかかる。それによって生まれたギャップを、FWマリオ・バロテッリやFWアントニオ・カッサーノが突く。4−3−1−2システムを基本軸に4−3−3、3−5−2など、複数のオプションを使い分ける柔軟性もイタリアの強みだ。
 もちろん、伝統の堅守も健在だ。中盤より下のポジションの選手が、リトリート(自陣に引いて組織を構築する守備)しながら相手の攻撃を跳ね返す。最後の砦としてW杯5大会目のGKジャンルイジ・ブッフォンも控えており、文字通りゴールに鍵をかける。

 キープレーヤーは“悪童”バロテッリだ。スピード、パワー、テクニックのすべてがワールドクラスのストライカーである。ゴール前での落ち着きもあり、豊富な得点パターンで欧州予選ではチーム最多の5ゴールを挙げた。組織的なイタリアにあって、個で局面を打開できる数少ない選手である。そんなバロテッリの課題はメンタルコントロール。不適切な態度をとったり、相手の激しいマークに激高して警告を受けるケースが少なくない。試合で退場させられてチームの人数が減れば、それが勝負の行方を左右することもある。“悪童”から“英雄”になるため、バロテッリには自己を律する心の強さが求められる。

 コスタリカは2大会ぶり4回目の出場となった。目標は90年イタリアW杯以来、2度目のベスト16だが、強豪揃いのグループでそれを達成することは容易ではない。
 システムは5−2−3の守備的布陣を敷く。5バックが自陣でブロックを築き、2ボランチがセカンドボールを拾って前線につなげるカウンタースタイルだ。理想は3日の日本代表とのテストマッチで見せたゴールだろう。ピッチ中央付近でボールを奪い、すかさずサイドのスペースへ展開。上がったクロスを、FWブライアン・ルイスが押し込んだ。この時の鋭い速攻は強豪相手にも通用し得る。
 問題は劣勢の時間帯を凌ぎ切れるかどうか。日本戦では、前半に先制しながら、後半で3ゴールを許して逆転負け。日本のパスワークで守備組織を揺さぶられ、生まれたギャップに次々と飛び込んでくる選手を捕まえきれなかった。本番までに、ボールを奪いに行く時のトライ&カバーを徹底し、できる限りゴール前でスペースを与えないようにしたい。その上で、初戦のウルグアイから勝ち点1でも獲得できれば、勢いに乗れるはずだ。

◎ イタリア
〇 ウルグアイ
▲ イングランド
  コスタリカ

(鈴木友多)