FIFAワールドカップブラジル大会が13日(日本時間)、開幕した。サンパウロでのオープニングマッチは、グループリーグA第1節で開催国のブラジル代表(FIFAランキング3位)とクロアチア代表(同18位)が対戦。ブラジルが3−1で白星発進した。先制したのはクロアチア。前半11分、相手のオウンゴールでリードを奪う。苦しい立ち上がりとなったブラジルだが、29分にFWネイマールの鮮やかなミドルシュートで同点に追いつく。後半はブラジルが押し気味に試合を進め、26分にPKを獲得。これをネイマールが確実に決めて勝ち越しに成功する。さらに終了間際、MFオスカルがダメ押しゴールをあげて勝ち点3を手にした。

 エースのネイマール、早速2得点(サンパウロ)
ブラジル 3−1 クロアチア
【得点】
[ブ] ネイマール(29分、71分)、オスカル(90+1分)
[ク] オウンゴール(11分)

 64年ぶりのW杯自国開催。優勝は義務と言っても過言ではないセレソンが、プレッシャーをはねのけ、勝利をモノにした。

 試合は日本人で初の開幕戦レフェリーを任された西村雄一主審のホイッスルでキックオフ。立ち上がり、ピッチで躍動したのはカナリアカラーではなく、赤と白の市松模様だった。開始早々、クロアチアはMFマテオ・コバチッチがPA手前からファーストシュートを放つと、両サイドをえぐり、チャンスを演出する。

 そんな11分、思わぬかたちで得点が入った。左サイド奥深くに侵入したFWイビチャ・オリッチが折り返しのクロス。これをブラジルのDFマルセロが戻りながらクリアしようとしたが、誤ってゴールに押し込んでしまう。まさかのオウンゴール。クロアチアが先手をとった。

 対するブラジルはホームの大声援がかえって重圧になったのか、本来の動きが見られない。攻撃に連動性がなく、決定機をつくる前に相手の守備網につかまるシーンが目立った。重苦しい空気がスタジアムにたちこめるなか、これを打破したのが、ブラジルの若きスーパースターだ。

 22歳のネイマール。22分、ドリブル突破から右サイドのゴールライン際まで粘って持ち込み、クロスをあげる。これをオスカルが拾って左足でシュート。GKの好セーブに阻まれたものの、ようやくカナリア軍団にリズムが生まれてきた。

 そして、試合を振り出しに戻したのもネイマールだ。29分、中央からドリブル突破。ペナルティーアーク付近から左足を一閃する。地を這うグラウンダーのシュートは飛びついた相手GKの指先をすり抜け、ゴール右隅に吸い込まれた。1−1。W杯デビュー戦での同点弾で流れを引き寄せる。

 その後はサイドバックが高い位置に陣取り、ネイマールやオスカル、MFパウリーニョらが次々とゴール前に顔を出す。ブラジルが主導権を握ったかたちで試合を折り返した。

 後半に入ってもブラジルが攻め、クロアチアが守る基本構図は変わらない。なかでもオスカルは相手に囲まれながらも、ボールをキープしてPA付近まで運び、好機を生みだす。クロアチアがボールを奪ってカウンター攻撃を仕掛けようとすると、すぐに戻ってファーストディフェンダーの役割もこなし、縦横無尽に動き回った。
 
 13分にはオスカルが右サイドから中央へ切り込み、ネイマールへボールを預ける。楔となったネイマールは右サイドを抜け出したパウリーニョへスルーパス。わずかにタイミングが合わず、ビッグチャンスとはならなかったが、得点の匂いが漂い始める。

 迎えた26分、試合は動いた。オスカルの右サイドからのクロスがゴール前でFWフレッジに渡る。フレッジが反転してボールをコントロールしようとしたところに、クロアチアのDFデヤン・ロブレンが手をひっかけてしまった。フレッジは倒れ、西村主審はブラジルにPKを与える。

 キッカーはネイマール。右足を振り抜くと、コースを読んだGKスティペ・プレティコサは左へ跳ぶ。しかし、その弾道はGKの手を弾いて、ゴール左隅のネットに達した。2−1。ついにブラジルが試合をひっくり返した。

 逆に1点ビハインドとなったクロアチアは192センチの長身DFベドラン・チョルルカらにハイボールを集め、パワープレーで反撃を試みる。41分にはMFルカ・モドリッチがミドルシュート。終了間際にはMFイバン・ペリシッチ、途中出場のMFマルセロ・ブロゾビッチが立て続けにゴール枠内にボールを飛ばすが、いずれも阻まれた。

 するとアディショナルタイム、攻勢をしのいだブラジルはカウンターで一気にクロアチア陣内へ。オスカルがドリブルで駆け上がり、PAの外から右足でトゥーキック。これが線を引いたようにきれいにゴール左隅に収まる。3−1となり、勝敗は完全に決した。

 独特の緊張感がある開幕戦で、追いかける展開になりながらも逆転に持ち込めたのはサッカー王国の底力だろう。一方で、クロアチアはエースストライカーのマリオ・マンジュキッチを欠きながらも相手ゴールをたびたび脅かし、その穴を感じさせなかった。1カ月にわたる祭典の幕開けにふさわしい好ゲームだった。

 次戦はブラジルが18日にメキシコ、クロアチアが19日にカメルーンと対戦する。

(石田洋之)

【ブラジル】
GK
ジュリオ・セーザル
DF
ダニエウ・アウベス
チアゴ・シウバ
ダビド・ルイス
マルセロ
MF
パウリーニョ
→エルナレス(63分)
オスカル
ルイス・グスタボ
FW
フッキ
→ベルナール(68分)
フレッジ
ネイマール
→ラミレス(88分)

【クロアチア】
GK
スティペ・プレティコサ
DF
シメ・ブルサリコ
ベドラン・チョルルカ
デヤン・ロブレン
ダリヨ・スルナ
MF
イバン・ペリシッチ
イバン・ラキティッチ
ルカ・モドリッチ
マテオ・コバチッチ
→マルセロ・ブロゾビッチ(61分)
FW
ニキチャ・イェラビッチ
→アンテ レビッチ(78分)
イビチャ・オリッチ