日本から約35時間をかけて、ザックジャパンの初戦の舞台・レシフェに到着した。南半球のブラジルは暦の上では冬。ブラジルの南部に位置するサンパウロは少し肌寒かった。しかし、北部のレシフェに降り立った瞬間に筆者の口から出た言葉は「暑い」。日本の約22.5倍の国土を誇るブラジルの広さを文字通り、肌で感じた。
(写真:レシフェのビーチでサッカーを楽しむ子供たち)

 筆者はドイツ経由でブラジル入りしたのだが、ドイツからブラジルに向かう機内では少し驚いたことがあった。ブラジル対クロアチアの開幕戦で、スコアが動くたびに、機内アナウンスでその状況が知らされるのだ。ブラジルがクロアチアに先制された時は、信じられないといったような声があちこちから上がっていた。

 サンパウロのグアルーリョス空港では、出場各国のユニフォームを来た人々が行き交い、いたるところにブラジルW杯の看板や案内板が目に飛び込んできた。W杯の開催地に来たんだな、という実感がふつふつと沸いてきた。心配された治安面は、筆者はここまで無事に行動できている。しかし、サンパウロで日本人が現金や日本戦のチケットを盗まれる事件が発生したという報道もある。やはり、用心は必要なようだ。

 レシフェのホテルに着いた後は少し、外を散策した。スーパーマーケットの店員はカナリア色のTシャツを着用し、町を走るタクシーは国旗を掲げる。ホテル近くのビーチでは、子供たちがビーチサッカーに興じていた。年齢層も様々で、女の子も混じっていて、実に楽しそう。かの有名な“ストリートサッカー”ではなかったものの、子供たちの遊びの中にもサッカーが根付いていることがわかった。この辺もブラジルがサッカー王国と呼ばれる所以だろう。
(写真:ブラジルの国旗を掲げたタクシー)

 さて、日本時間15日には、日本代表が初戦を迎える。日中ならば暑さが懸念されるが、夜になると涼しさも出てくる。日本対コートジボワールのキックオフは現地時間で午後10時。気候面での心配はさほどないとみる。また、ブラジルに来て、日本人サポーターの多さには驚いた。各国サポーターと同様、日本のユニフォームを空港で見かけた。筆者がお世話になっている旅行会社によれば、「かなりの人数がブラジルまで来ている」という。中には大型バスをチャーターして、人々を送迎する旅行会社もあるようだ。日本が戦うレシフェのアレーナ・ペルナンブーコで、ニッポンコールが轟く。選手にとっては頼もしいことではないか。

 筆者はドイツからブラジルへ向かう途中、ひとりの日本の男性サポーターと出会った。その人はドイツW杯も現地まで応援しに行ったが、日本は2敗1分けでグループリーグ敗退。「まだ日本がW杯で勝ったところを生で見たことがない。今回は見たいですね」と、男性サポーターは語っていた。彼はブラジルに来るため、務めていた会社を退職したという。たかがサッカーのためにと言うなかれ。12年のクラブW杯でもブラジルのコリンチャンスサポーターが来日するために仕事を辞めたり、家を売り払って資金をねん出したりしていた。日本にも、生活を投げ打ってまでサッカーを愛する人がいる。その意味で、ザックジャパンには結果うんぬんではなく、ファン・サポーターを納得させるようなサッカーをしてくれることを願う。日本サッカーに関わるすべての人々に、Boa sorte!

※Boa sorte(ボア ソルチ、幸運を祈る)

(鈴木友多)