15日(日本時間)、FIFAワールドカップブラジル大会のグループC第1節で、日本代表(FIFAランキング46位)はコートジボワール代表(同23位)に1−2で敗れ、初戦を落とした。日本は前半16分、FW本田圭佑のファーストシュートが決まって先制。しかし、その後は個人技で押し込まれ、危ない場面を何度もつくられる。何とかしのいでいた日本だが、後半に入ってコートジボワールがエースのFWディディエ・ドログバを投入すると、立て続けに相手のFW陣に2点を決められ、逆転を許す。日本はFW大久保嘉人、FW柿谷曜一朗をピッチに入れて攻撃の活性化を図ったが、同点に追いつけなかった。

 選手の動き重く、涙雨(レシフェ)
コートジボワール 2−1 日本
【得点】
[コ] ウィルフリード・ボニー(64分)、ジェルビーニョ(66分)
[日] 本田圭佑(16分)

 悪夢ではなく、現実だった。日本は本田のゴールで先制したものの、立て続けの失点で痛恨の逆転負け。グループリーグ突破に早くも黄信号が灯った。

 スタジアムには日本人サポーター、また現地で有志が配った日の丸ハチマキを巻いた外国人も多かった。中には「ジャポン、トゥー、ゼロ(日本が2−0で勝利する」と予想してくれるブラジル人もいたが、予想と裏腹に、序盤の日本はコートジボワールに押し込まれた。相手のシンプルなサイド攻撃に後手に周り、クロスを上げられる。前半6分、MF香川真司のパスミスから速攻でFWジェルビーニョにドリブルで運ばれ、PA内に縦パスを入れられる。受けたFWウィルフリード・ボニーにシュートを打たれたが、これはDF森重真人が体を張ってブロックした。

 そんな序盤の劣勢をしのいだ日本は16分、この試合最初の決定機を生かして先制に成功した。決めたのは本田。PA内中央でパスを受けると、トラップで前方スペースに抜け出し、左45度の位置から左足を振り抜いた。降り注ぐ雨を切り裂くシュートが、ニアサイドを破った。その瞬間、スタジアムは熱狂の渦に包まれ、多くのサポーターがハイタッチして本田の先制点を喜んだ。決めた本人も雄叫びをあげながら日本ベンチに駆け寄り、仲間と祝福。本田はW杯通算3得点目で、日本人最多となった。

 先制後は、会場のニッポンコールに乗って、日本が相手ゴールを脅かした。21分、DF内田篤人が右サイドをオーバーラップし、ドリブルでPA内に進入。ついてきたDFを鋭い切り返しでかわし、左足でシュート打った。だが、これはGK正面を突き、追加点とはならなかった。その後は再びコートジボワールに押し込まれる時間帯となった。それでも守備陣の体を張った守り、GK川島永嗣のセービングでゴールは許さず、リードして試合を折り返した。

 後半に入り、先に動いたのは日本ベンチだった。8分、アルベルト・ザッケローニ監督はMF長谷部誠に代えてMF遠藤保仁をピッチへ。展開力のある遠藤を投入し、攻撃に厚みを持たせたいという意図がうかがえた。序盤は日本が相手陣内でボールを回していたものの、攻撃のかたちをつくれない。すると、徐々に相手にポゼッションで上回られ、日本がボールを追いかけさせられる展開となった。

 そんな17分、ベンチスタートだったFWディディエ・ドログバが交代でピッチに立った。この真打ち登場に、スタジアムからは大歓声。そして、精神的支柱が加わったコートジボワールは反撃のギアを一気に加速させた。
 19分、DFセルジュ・オーリエに右サイドからアーリークロスを上げられ、弾丸のように飛び込んできたボニーに頭でゴール左へ流し込まれた。再三、狙われていたサイドからの崩しで、とうとう日本はスコアを振り出しに戻された。それでも、まだ同点。日本イレブンを、サポーターがニッポンコールで鼓舞した。

 ところが、である。同点からわずか2分後、日本はコートジボワールに逆転された。再びオーリエにほぼフリーの状態で右サイドからアーリークロスを入れられ、今度はジェルビーニョにニアサイドでヘディングで合わせられた。ゴール右下に飛んだシュートが、反応した川島の手を弾き、ゴールに吸い込まれた。まるで2分前のリプレー映像。なぜ、オーリエに自由にクロスを上げられたのか。要因はドログバの間接的な影響力に依るところが大きいだろう。日本は、起点になる中央のドログバを意識するあまり、サイドに展開された時に、アプローチをかける選手の出足が遅れたのだ。

 追いかける立場になった日本は22分、FW大迫勇也を下げてFW大久保嘉人を投入。左サイドに大久保、トップ下に香川、ワントップに本田が入り、攻撃の活性化を試みた。しかし、コートジボワールの冷静なボールポゼッションを前に、なかなか攻撃を組み立てられない。41分には香川に代えてFW柿谷曜一朗がピッチに入り、DF吉田麻也がパワープレーで前線に上がったものの、ゴールを奪うことはできなかった。

 勝つしかない次戦のギリシャ戦は中4日で迎える。その間に守備陣はサイド攻撃への対策を確認し、攻撃面ではバイタルエリアでのアイデアと積極性向上が求められる。試合後、スタジアムを後にする日本人サポーターのひとりが、周囲に「元気だしていきましょう!」と声をかけていた。まだ、敗退が決まったわけではない。今こそ、ザックジャパンの真価を証明する時だ。

アルベルト・ザッケローニ監督
 コートジボワールがスピーディーでいい試合をした。スタートは良かったが、コートジボワールは非常に速かった。我々はプレッシャーをかけることができず、距離を保てなかった。今までプレーしてきたような内容ができなかった。残り2戦は今日よりもいい試合をして、今日できなかった部分を修正して勝利したい。

長谷部誠キャプテン
 非常に厳しい敗戦。相手が良かったというよりも自分たちのサッカーをこのピッチで表現できなかった。こういう大舞台で自分たちのサッカーを表現するために準備をしてきたつもりだったが、自分たちが未熟だった。僕個人のプレーも全然納得できない。まだ2試合ある。とにかく切り替えてやるしかない。次までは中4日の時間があるので、チームみんなで最高の準備をして一丸となってやっていく。

【コートジボワール】
GK
ブバカル・バリー
DF
アルトゥール・ボカ
→コンスタン・ジャクパ(75分)
ディディエ・ゾコラ
セルジュ・オーリエ
ソル・バンバ
MF
シェイク・ティオテ
ヤヤ・トゥーレ
セレイ・ディエ
→ディディエ・ドログバ(62分)
FW
サロモン・カルー
ジェルビーニョ
ウィルフリード・ボニー
→ヤ・コナン(78分)

【日本】
GK
川島永嗣
DF
内田篤人
長友佑都
森重真人
吉田麻也
MF
山口蛍
長谷部誠
→遠藤保仁(54分)
FW
本田圭佑
岡崎慎司
香川真司
→柿谷曜一朗(86分)
大迫勇也
→大久保嘉人(67分)