17日(日本時間)、FIFAワールドカップブラジル大会のグループG第1節で、ガーナ代表(FIFAランキング37位)と米国代表(同13位)が対戦した。試合は開始直後にFWクリント・デンプシーのゴールで、米国が先制。その後、米国はガーナの反撃に遭うが、相手のシュート精度の低さに助けられた。このまま逃げ切りを図りたかったが、後半37分に追いつかれてしまう。それでも41分、セットプレーからDFジョン・ブルックスの得点で勝ち越しに成功すると、2−1でグループリーグ初戦をモノにした。

 途中出場のブルックス、値千金の決勝弾(ナタル)
ガーナ 1−2 米国
【得点】
[ガ] アンドレ・アイェウ(82分)
[米] クリント・デンプシー(1分)、ジョン・ブルックス(86分)

 アクシデントを乗り越え、米国がガーナに過去2大会のリベンジを果たした。

 3大会連続の対戦となった両国。2006年のドイツ大会、10年の南アフリカ大会と、いずれもガーナが米国を2−1で下していた。連敗中の米国は、通常より1日早くナタル入りし、周到な準備をしてきた。

 その甲斐あってか、開始1分足らずでゴールが生まれた。左サイドでスローインを得た米国。スローインからのリターンパスをもらった左サイドバックのダマーカス・ビーズリーが縦に繋ぐと、MFジャーメイン・ジョーンズがワンタッチで横へはたく。そこでボールを受けたのが、デンプシー。ドリブルでスルスルと抜け出し、ペナルティエリア内左に侵入すると、相手DFをかわし、シュートを放った。ゴール右へと飛んでいったボールは、ポストに当たり、そのままネットを揺らした。キックオフからわずか30秒で、米国が先手を取った。

 米国はさらに19分、オーバーラップした右サイドバックのファビアン・ジョンソンが、グラウンダーのパスを中へ送る。ペナルティエリア内でボールを受けたFWジョジー・アルティドールに絶好のチャンスが訪れた。しかし、ワントラップして放ったシュートはガーナ守備陣に身を挺してブロックされる。

 しかし、米国に痛いアクシデントが発生する。21分に左サイドの深い位置でボールを追いかけたアルティドールが左足を負傷。そのままピッチに倒れ込み、担架で運ばれた。プレー続行は不可能となり、アーロン・ヨハンソンと交代した。米国は残り70分近くの時間を残した中で、代表通算22ゴールを誇る24歳のストライカーの戦線離脱を余儀なくされた。

 米国にとって嫌な雰囲気が漂い始めると、ガーナが一気に反撃を開始。右サイドハーフのクリスティアン・アツ、2トップのジョルダン・アイェウ、アサモア・ギャンを中心した攻めでゴールを奪いにかかる。しかし、ガーナはフィニッシュの正確さを欠き、ゴールが遠い。アディショナルタイムには、右サイドを抜け出したアツからのパスを送る。ペナルティエリア内でJ・アイェウが好機を迎えたが、右足にうまくミートしなかった。結局、1−0と米国がリードして前半を終了した。

 前半を耐えたかたちでしのいだ米国は、前半で負傷したセンターバックのマット・ベスラーがアウト。攻撃に続き、守備の要がベンチに下がるピンチだった。代わりに入ったのは21歳のブルックス。代表通算4試合目の若手に残り時間を託した。

 しかし、後半に入るとガーナの攻勢はさらに増す。対する米国はラインを下げて、堤防を作り、守備を固めた。ガーナはミドルレンジからのシュートが目立っていたが、徐々にサイドから速いクロスを放るなど攻撃のバリエーションが増えていった。ベンチに控えていたケビン・プリンス・ボアテング、マイケル・エッシェンというヨーロッパのクラブで活躍するビッグネームを投入し、さらなる活性を図った。

 すると人数をかけて守りを固めていた米国の堤防をついに打ち崩した。37分、左サイドでボールを持ったDFクワドゥオ・アサモアがペナルティエリア内へ縦パス。ギャンがDFを引きつけながら、ヒールで落とすと、MFアンドレ・アイェウが中央やや左でボールを受ける。ワンタッチで足元に収め、左足でアウトにかける技ありのシュート。ゴール左に突き刺さり、ガーナが追いついた。

 圧倒的に攻めて同点弾をもぎとったガーナに流れが傾くかと思われたが、勝利の女神が微笑んだのは、米国にだった。41分、右CKを得た米国は、途中出場のグラハム・ズシが速いボールを蹴る。それを頭で合わせたのは、こちらも途中出場のブルックス。193センチの長身が強烈なヘディングシュートをゴールに叩き込んだ。

 そのままリードを守り切った米国が、2−1でガーナに勝利した。一方のガーナは、ボールポゼッションで優位に立ち圧倒的に攻め立てた。しかし、その精度が悪かった。シュートを21本も放ったが、ゴールを予感させるような際どいものは少なかった。

 ドイツ、ポルトガル、米国、ガーナと実力国揃いのグループG。現地、昼間のゲームではドイツがポルトガルを4−0で下し、抜け出していた。このゲームに勝利した米国はドイツに次ぐ2位につけ、2大会連続の決勝トーナメント進出に向けて、いいスタートを切った。次戦はポルトガルと対戦する。

【ガーナ】
GK
アダム・クワラシー
DF
ダニエル・オパレ
クワドゥオ・アサモア
ジョン・ボイエ
ジョナサン・メンサー
MF
モハメド・ラビウ
→マイケル・エッシェン(71分)
サリー・ムンタリ
クリスティアン・アツ
→アルベルト・アドマー(78分)
アンドレ・アイェウ
FW
ジョルダン・アイェウ
→ケビン・プリンス・ボアテング(59分)
アサモア・ギャン

【米国】
GK
ティム・ハワード
DF
ファビアン・ジョンソン
ダマーカス・ビーズリー
ジェフ・キャメロン
マット・ベスラー
→ジョン・ブルックス(46分)
MF
カイル・ベッカーマン
マイケル・ブラッドリー
アレハンドロ・ベドヤ
→グラハム・ズシ(77分)
ジャーメイン・ジョーンズ
FW
クリント・デンプシー
ジョジー・アルティドール
→アーロン・ヨハンソン(23分)

(文/杉浦泰介)