サッカー日本代表(FIFAランキング50位)は24日、アジアカップ決勝トーナメントの準々決勝でベトナム代表(同100位)とUAEのドバイで対戦し、1対0で辛くも勝利した。後半12分にMF堂安律(フローニンゲン)が自ら得たPKを決めた。日本は28日に中国代表(同76位)対イラン代表(同29位)戦の勝者と準決勝で対戦する。

 

 流れの中から得点なし(ドバイ)

日本代表 1-0 ベトナム代表

【得点】

[日] 堂安律(57分)

 

 VAR(ビデオアシスタントレフェリー)制度に泣かされ、VARに救われた。ベトナムも運動量は豊富だった。それでも流れの中からの“無失点”という結果が気になった。ボール支配率が30%を下回った前節のサウジアラビア代表戦とは違い、今節は日本が60%以上もボールを保持した。それにもかかわらず崩しの場面で日本は迫力に欠けた。シュートに至る中で、ドリブルで仕掛けスルーパスを出せたMF中島翔哉(ポルティモネンセ)の不在がより顕著になった。

 

 前半14分、日本は相手の元Jリーガーにヒヤリとさせられた。2016年に水戸ホーリーホックでプレーした経験のあるFWグエンクオンフォンに独力で突破され、右足でミドルシュートを放たれた。シュートは枠外だったがこの試合と通し、ベトナムは“ボールを奪われるくらいなら無理にでもシュートで終わる”姿勢を一貫していた。

 

 この10分後、日本は相手のゴールネットを揺らすが幻に消えた。左CKからMF柴崎岳(ヘタフェ)が好クロスを入れる。これをゴール前でDF吉田麻也(サウサンプトン)が頭で合わせてゴールネットを揺らした。だが、数分後に準々決勝から採用されたVARが適用された。判定の結果、吉田がヘディングした直後、自身の腕にボールが当たっていたためハンドを取られ得点は取り消された。

 

 27分には再び、グエンクオンフォンがドリブルから右足ミドル。これはゴール右に逸れた。その2分後、日本は右CKをショートでスタート。堂安が右サイドからクロスを中に入れて、ゴール前でDF冨安健洋(シントトロイデン)がどんぴしゃりのタイミングでヘディング。しかし、惜しくも相手GKのファインセーブに阻まれた。

 

 38分、日本にとって最大のピンチだった。バックパスを受けたGK権田修一(サガン鳥栖)が味方へつなごうとしたが、相手にカットされ、FWグエンクアイハンにシュートを浴びる。これは権田が弾く。さらにこぼれ球からクロスを入れられMFファンバンドゥックが頭で合わせる。これも何とか権田がセーブしたが、一歩間違えれば失点する場面だった。

 

 スコアレスで試合を折り返した日本は後半、VARに救われた。8分、FW北川航也(清水エスパルス)、MF遠藤航(シントトロイデン)、MF原口元気(ハノーファー)とつなぐ。原口がペナルティーエリア右に走る堂安にスルーパスを通す。反応した堂安は相手DFに足を取られ倒れたが、この時はノーファール。だが数分後、VARの指摘により映像を確認した主審はPKを宣告した。これで得た好機を堂安が自ら右隅に蹴り込んで日本が先制した。

 

 とりあえず先制した日本。前がかりになるしかないベトナムの裏をついて追加点といきたかったが、結局はPKで奪った1点のみでタイムアップとなった。

 

 今大会、森保ジャパン発足後、10番を背負ってきたMF中島翔哉(ポルティモネンセ)が怪我で招集を辞退。彼の不在が大きいのだろう。相手DFをひとりドリブルでかわせばシュートを打てる場面では堂安もMF南野拓実(ザルツブルク)もFW武藤嘉紀(ニューカッスル)もドリブルで仕掛ける。

 

 だが今大会は崩しの場面、フィニッシュに至る過程で仕掛ける場面が少なすぎるように映る。中島は得意の左サイドで十分に敵を引き付けて、独力でマーカーを引きはがし、前線の選手に決定的なスルーパスを通していた。“遊び心”を失った日本の攻撃は破壊力を欠いている。

 

 日本は28日にイラン対中国の勝者と対戦する。森保一監督は、どうテコ入れをするのか。采配が気になるところだ。

 

(文/大木雄貴)