日本代表の第2戦がいよいよ迫ってきた。初戦を落とした日本にとって、グループリーグを突破するにはギリシャ戦での勝利が必須となる。そんな重要な試合を翌日に控えた18日(現地時間)、筆者が宿泊しているホテルに予想外の“来客”が訪れた。なんと、日本代表が同じホテルに宿泊することになっていたのだ。
(写真:日本のチームバス。正面上には日の丸が施されている)

 昼食を済ませ、ロビーの前を通ろうとすると、ホテルの従業員が忙しく動き回っている。すると、ほどなくして、ホテルの前に「JAPAN」と記された大型バスが止まった。そう、日本のチームバスである。バスの前後には「POLITICA FEDERAL」(連邦警察)と書かれたベストを着た警察官の乗るバイクがずらり。ナタルの空港から厳戒態勢でホテルまで来たことは容易にわかった。

 他の宿泊客も事態に気づき、入り口にはあっという間に人だかりができた。ホテルの外からは、現地の子どもたちがホーンを鳴らし、「カガーワ!」などと選手名を叫んでいた。しかし、残念ながら選手やスタッフは一般の入り口ではなく、別の導線からホテル内へ。宿泊客からは落胆の声が漏れた。ロビーは警察官、ホテルの裏にあるビーチにも銃を携えた軍隊と思われる人間が巡回し、ホテル一帯が物々しい空気に包まれた。

 そんな中、今度はエレベーター前に人だかりができていた。このホテルにはエレベーターが1カ所にしかないため、選手が部屋に移動するにはそこを通るしかない。宿泊客は徹底マークでその一瞬を狙っていたのだ。
(写真:エレベーター前は従業員と警察官が立ち並ぶ異様な光景となった)

 遠目から見ていた筆者が確認できた選手は、長谷部誠、香川真司、本田圭佑、長友佑都、川島永嗣。長谷部や長友は周囲から激励の言葉をかけられると手を挙げて応えていた。他の選手は一様に硬い表情のように映った。やはり、第2戦への重圧を感じているようだった。

 選手が全員、エレベーターを使って移動すると、ロビーに張りつめていた緊張の糸が少し緩んだ。宿泊客は一心不乱に撮影していた写真を確認し、警察官はソファーに座ってテレビで放送されているオランダ対チリの試合を観戦し始めた(これはこれでどうかと思われるが……)。

 さて、ギリシャ戦で日本が勝利するためには何が必要なのか。それは縦と横のバランスである。コートジボワール戦では、攻撃を組み立てる時は縦パスを多用してことごとくパスカットされた。縦へのパスはゴールに向かうため、通ればチャンスにつながりやすい。だが、そのコースは相手の警戒ゾーンでもある。やはり、横へのパスを交えて守備組織を揺さぶらなければ、縦パスを通すのは難しい。チームの平均身長が高いギリシャには、地上戦でいかに優位に立てるかが重要だ。その上で、ゴール前での仕掛けやミドルシュートなどの積極性も勝負の行方を左右するポイントになるだろう。

 レシフェで払った高い授業料を、ナタルで取り戻せるか。夜通し降り続いていた雨も、現在は止んでいる。止まない雨はない。

(文/写真・鈴木友多)