20日(日本時間)、FIFAワールドカップブラジル大会のグループC第2節で、日本代表がギリシャ代表に0−0で引き分けた。前半は初戦と打って変わって、ボールを支配した日本が主導権を握る。得点こそ奪えなかったものの、38分にはギリシャの中盤の要であるコンスタンティノス・カツラニスを2枚目のイエローカードで退場に追い込んだ。数的有利で迎えた後半、日本は幾度となくチャンスを作るもゴールを割れない。試合はそのままのスコアでタイムアップ。日本は勝ち点1を獲得するにとどまり、2大会連続の決勝トーナメント進出は厳しい状況になった。グループリーグ突破には、次節コロンビア代表戦の勝利が必須となる。

 日本、数的有利生かせず無得点(ナタル)
日本 0−0 ギリシャ


 試合終了直後に起こったブーイングがすべてを表していた。日本の総シュート数は16本で、枠内シュートは11本。それにも関わらず、ギリシャゴールをこじ開けられなかった。

 この試合、アルベルト・ザッケローニ監督は初戦で不振にあえいだMF香川真司をスタメンから外し、MF大久保嘉人を先発に入れるという荒療治に出た。すると、開始早々にその大久保が右サイドを仕掛け、初戦では見られなかった積極性を示した。早い時間帯にゴールを奪うという意思がチーム全体から感じ取れた。

 日本は引いて守るギリシャに対し、ミドルシュートで相手ゴールを脅かした。19分、DF内田篤人がPA手前にくさびのパスを入れ、受けた大久保がワンタッチで後方へ落とす。これをFW大迫勇也が左足ダイレクトで狙い、シュートはゴール左下を捉えたが、GKにキャッチされた。21分には、再び大迫が左サイドから中央へ切れ込んで右足でミドルシュートを放ったものの、わずかにゴール右へ外れた。立て続けのチャンス到来に、スタジアムにはニッポンコールが巻き起こった。 

 すると35分、ギリシャのエースFWコスタス・ミトログルが腰を痛めて、FWテオファニス・ゲカスと交代。ギリシャは早くも交代カードを切ることを余儀なくされた。また38分には、MFコンスタンティノス・カツラニスがこの試合2枚目の警告を受けて退場。緊急事態に陥ったギリシャは40分、MFヨアンニス・フェトファツィディスを下げてMFゲオルギオス・カラグニスを投入し、早くも2枚目の交代カードを切った。

 日本は数的優位という願ってもない状況に立ち、確実にゴールへと迫りたいところだった。しかし、1人少なくなってより中央を固めたギリシャ守備陣を崩せず、無得点で試合を折り返した。

 ザッケローニ監督は後半開始からMF長谷部誠に代えてMF遠藤保仁をピッチへ送り出す。遠藤の視野の広さからギリシャの守備組織のギャップを突いていくことが狙いだったのだろう。それでも、日本はゴール前に進入することができない。12分、日本ベンチは大迫に代えて、大久保同様にドリブルで仕掛けられる香川を投入。なんとかして、ギリシャの堅守を打ち破ろうと試みた。

 だが、ゴールが遠い。23分、香川がPA内右のスペースへ浮き球のパス。走り込んだ内田がダイレクトで折り返したボールに、大久保が左足で合わせたが大きくゴール上に外れた。さらに27分、DF長友佑都が左サイドで仕掛けてからクロスを上げ、ゴール前で混戦となってこぼれたところを、内田が詰めた。瞬間、多くの観客が立ち上がり、日本が先制したかに思われた。しかし、シュートはゴール右へ外れ、打った内田は倒れ込んで天を仰いだ。

 時間が経つにつれて守勢を強めるギリシャに対し、日本は左右から攻め込んだ。長友、内田が幾度もセンタリングを上げたものの、高く浮いたボールはギリシャの長身DF陣にことごとくクリアされた。日本の攻撃が跳ね返されるたびに、外国人の観客は怒りの声を上げた。おそらく、一つ覚えにハイボールを上げてはクリアされる日本の攻撃に苛立っていたのだろう。日本はゴール前でのダイレクトプレーやグラウンダーの速いクロスなどが少なく、バイタルエリアでの単調さが目立った。

 終盤にはDF吉田麻也を前線に上げるパワープレーに出たが、状況は好転しない。終了間際に得たPA手前でのFKも、遠藤がゴール右下を狙ったものの、GKに弾き出された。結局、両者無得点のままタイムアップ。外国人客が席を立つ一方で、座席からなかなか立ち上がらない日本人サポーターの姿があった。

 攻撃の単調さ、決定力不足が勝ち切れなかった大きな要因だろう。しかし、交代カードを使い切らなかった指揮官の采配にも疑問が残った。香川投入後、ワントップにはMF岡崎慎司が入った。だが、体格で劣る岡崎が前線の起点になることは難しいように映った。ザッケローニ監督は彼の裏への抜け出しに期待したのかもしれないが、浮き球はことごとく相手の網に引っ掛かった。ドリブラーのMF齋藤学をサイドハーフに入れ、香川をトップ下、そしてキープ力のある本田をワントップに据えるなど、もう一歩踏み込んだテコ入れが必要だったのではないか。

 日本は最終戦で勝利するしか、グループリーグ突破の道はない。さらにコートジボワール対ギリシャの結果に左右されるという状況。ザックジャパンはコロンビア戦でまさに“ミッション・インポッシブル”に臨む。

(鈴木友多)

アルベルト・ザッケローニ監督
 勝つための勢いをもって戦ったが、最後に押し込むことができなかった。さまざまなチャンスをつくったが、ゴールに結びつけることができなかった。もっとチャンスをつくりたかった。自分たちのサッカーをある部分はできたが、続けることができなかった。勝とうとしたし、攻撃しようとした。スピードを上げて、自分たちの特徴をいかしたいと思ったが、最後にゴールを入れることができなかった。(次の試合は)いつもやってきたようなプレーをすること、そして勝つことだ。

大久保嘉人
 ギリシャがひとり少ない状況でブロックをくまれたが、チャンスはあったし、それをちゃんと決めておけば勝てたと思うので、そこを反省して、もう1試合あるので練習でやっていきたい。(スタメンについては)初戦負けたので、絶対に自分の力をチームにいかして勝利することを考えながら入った。今日は中盤でどんどんつながっていたが、もっと(ボールが)入ってくればもっとチャンスはあったので、今度は入れてもらえるように練習からやっていきたい。(ドローという結果は)すごくもったいないし、情けない。日本の皆さんに申し訳ないと思っている。もう1試合あるので、そこで挽回できるように、みんなで力を合わせて頑張りたいと思う。(修正点は)まだまだバイタルエリアにボールを入れてくることだったり、ゴール前でのもったいないファウルが多すぎるので、少なくしていきたい。

本田圭佑
 当然、自分たちは2勝しか(決勝トーナメントに)行けるすべがないと思って挑んだ試合だったので、相手のゴールを割ることができずに残念。結果がすべてなので、勝ち点3をとれなかったことが何より悔しい。最後まであきらめずにやりたい。

内田篤人
 チーム全員で勝ちにいったが、なかなかゴールが割れず、悔しい戦いとなった。ギリシャも(守備が)かたいチームで失点を防ぐのが得意なチーム。11人対10人だったが、向こうも頑張っていた。自分たちもゴールを割ろうと頑張ったが、難しかった。(大久保)嘉人さんは1対1で突破できる選手なので、うまくサポートしながら、なるべく守備の負担を減らして縦の関係でうまく崩せればいいなと思っていたが……。個人としてもチームとしても惜しいシーンはあったが、ゴールを割れないというのは、サッカーは得点をとって守るスポーツなので、最後が大事かなと思う。日本で応援してくれている人もいるし、代表でピッチに立つ以上絶対に諦めてはいけない。今まで努力してやってきたことが報われなくても、ピッチで出さなければいけない。

【日本】
GK
川島永嗣
DF
森重真人
吉田麻也
内田篤人
長友佑都
MF
山口蛍
長谷部誠
→遠藤保仁(46分)
大久保嘉人
岡崎慎司
本田圭佑
FW
大迫勇也
→香川真司(57分)

【ギリシャ】
GK
オレスティス・カルネジス
DF
コンスタンティノス・マノラス
ソクラティス・パパスタソプーロス
バシリオス・トロシディス
ホセ・ホレバス
MF
コンスタンティノス・カツラニス
ヨアニス・マニアティス
パナギオティス・コネ
→ディミトリオス・サルピンギディス(81分)
FW
ヨアニス・フェトファツィディス
→ゲオルギオス・カラグーニス(41分)
ゲオルギオス・サマラス
コンスタンティノス・ミトログル
→テオファニス・ゲカス(35分)