(写真:存在感たっぷりのジャッジは現在のヤンキースの顔と言える選手になった Photo By Gemini Keez)

 アメリカにも球春到来――。ニューヨーク・ヤンキースの選手たちもフロリダ州タンパの球団施設に集まり、2月14日より春季キャンプが始まっている。

 昨季はシーズン100勝を挙げ、ワイルドカードでプレーオフ進出。しかし、地区シリーズではのちに世界一に辿り着くボストン・レッドソックスに1勝3敗で敗れた。攻守両面で多くの補強を施して迎える今季、宿敵を倒す準備は整ったのか。今回は3つのポイントを挙げ、ヤンキースの今季を占っていきたい。

 

 スタントン、サンチェスは爆発するか

 

 移籍1年目の昨季にジャンカルロ・スタントンが残した38本塁打、100打点という数字は、一見すると上々に思える。しかし、不振の時期も少なからずあり、特にプレーオフでも5試合で1打点、7三振とブレーキ。メジャー史上最高額の給料を受け取る選手としては、やはり期待に応えたとは言い難い。

 

 一方、一昨年にセンセーショナルな存在になったゲイリー・サンチェスも、昨季は323打数で打率.186、18本塁打、94三振と散々。捕手としてもメジャー最多の18捕逸(&45ワイルドピッチ)と乱れ、“生え抜きのスター候補”という期待感もとりあえず沈静化した感がある。

 

 主砲アーロン・ジャッジを軸に、今季もヤンキースが強力打線を誇っていることに変わりはない。オフにオールスター5度のトロイ・トゥロウィツキー、2016年の首位打者DJ・ラメイヒューらを加え、さらに層が厚くなった印象もある。

 

 ただ、2019年版の“ブロンクス・ボンバーズ”がより粘り強く、勝負強い打線を目指すなら、中軸を打つスタントン、サンチェスの充実は必要。彼らが昨季同様に好機に三振を量産するようであれば厳しい。その際にはシーズン全体での打撃成績こそ良くとも、強豪チームの好投手相手の苦戦は免れないだろう。

 

  先発投手陣は健康を保てるか

 

(写真:毎年安定した好成績を残す田中は今季も貴重な存在 Photo By Gemini Keez)

 今オフにノーヒッター経験者の左腕ジェームズ・パクストンを獲得し、先発陣にまた新たに大きな一本の線が通った。昨季19勝のルイス・セベリーノ、5年連続二桁勝利の田中将大、過去3年で合計47勝のJ.A.ハップ、通算246勝のCC・サバシア、そしてパクストンと続く先発ローテーションは能力だけを考えればリーグ最高級に違いない。

 

 ただ、不安は耐久力だ。才能は抜群のパクストンもケガの多さが珠に傷で、田中もこれまで1年に1度は離脱を経験してきた。38歳のサバシアは今季限りの引退が報道され、シーズンを無傷で乗り切れる保証はない。

 

「どのチームにとっても同じだが、先発陣の健康が重要。穴埋めができる投手たちもいるが、まずはローテーションの投手たちが体調を保つことが鍵になる」

 アーロン・ブーン監督のそんな言葉通り、先発投手たちのコンディションがチーム最大のポイントかもしれない。逆に言えば、体調さえ良ければ不安はない陣容。特に今季はアロルディス・チャップマン、デリン・ベタンセス、ザック・ブリットン、アダム・オッタビーノと続くブルペンの力量が素晴らしいだけに、メジャーでの自己ベストは14勝の田中、同じ12勝のパクストンもこれまでで最高の勝ち星を稼ぐ可能性は十分ありそうだ。

 

  グレゴリアスの穴埋めは

 

(写真:ダイナミックな攻守のグレゴリアスの不在は痛い Photo By Gemini Keez)

 投手、野手ともにほぼ役割が定まったチーム内で、最大の不確定要素はショートストップの行方だ。昨季27本塁打を放ったディディ・グレゴリアスが、昨年10月に右肘にトミー・ジョン手術を受けて夏場頃までは離脱が濃厚。その穴埋めとしてトゥロウィツキーを獲得したが、昨季は両かかとのケガで全休(2017年も66戦出場のみ)した元スーパースターが代役を無事に果たせるかどうかは未知数だ。34歳のトゥロウィツキーが誤算に終わった場合、ラメイヒュー、グレイバー・トーレスらを登用して急場をしのぐことになるのだろう。

 

 デレック・ジーターからグレゴリアスへの橋渡しがスムーズにいったおかげで、近年のヤンキースは遊撃手の人材に悩まされることはなかった。その流れが今年も続くのかどうかは定かではない。守備面でも負担と比重の大きいポジションだけに、状況次第では内野陣の中でも大きな懸念材料になりかねない。

 

 

【2019年ヤンキースの予想布陣】

・打線

(写真:粗さの目立つスタントンは今季もチャンスで凡打を続ければ風当たりは強くなりそう Photo By Gemini Keez)

8 アーロン・ヒックス 

9 アーロン・ジャッジ

DH  ジャンカルロ・スタントン

2 ゲイリー・サンチェス

5 ミゲル・アンドゥハー

3 ルーク・ボイド

6 トロイ・トゥロウィツキー

4 グレイバー・トーレス

7 ブレット・ガードナー

 

・先発

ルイス・セベリーノ

J.A.ハップ

田中将大

ジェームズ・パクストン

CC・サバシア

 

・ブルペン

アロルディス・チャップマン

デリン・ベタンセス

ザック・ブリットン

アダム・オッタビーノ

チャド・グリーン

ジョナサン・ホールダー

 

杉浦大介(すぎうら だいすけ)プロフィール
東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、NFL、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボールマガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞』など多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。著書に『MLBに挑んだ7人のサムライ』(サンクチュアリ出版)『日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価』(KKベストセラーズ)。最新刊に『イチローがいた幸せ』(悟空出版)。
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