キャンプもいよいよ打ち上げ間近である。明日23日からはオープン戦もスタートする。野球ファンが待ちに待った球春到来だ。

 

imgfb509847ce743d532af86[1]

 

 

 

 初日から紅白戦

 

 今キャンプでは千葉ロッテが初日に紅白戦を行って注目を集めた。その意図について井口資仁監督は「競争、刺激、チームの底上げ」と説明した。紅白戦の結果を受けて翌2日に1軍、2軍キャンプの振り分けを実施。注目のドラ1ルーキー藤原恭大は1軍スタートとなった。

 

 キャンプイン即実戦には既視感がある。2003年オフ、中日の指揮官に就いた落合博満が就任記者会見でこうぶち上げたのだ。

「来年2月1日、キャンプ初日に紅白戦をやります。レギュラー格も若手もみんな横一線です」

 

 寒い時期から無理をさせてどうする? 選手を壊すつもりか? 多方面から疑問の声が上がったが、最も戸惑ったのは現場の選手たちだった。当時、正捕手を務めていた谷繁元信は、のちにこう振り返っている。

「落合さんの発言は新聞で知ったんだと思います。『エースキャッチャーは谷繁だけど、そこも競争。ケツに火がボウボウ付いている』と。ようは"余裕ぶっこいてていいのかよ"というような言葉でした。しかもキャンプ初日から紅白戦をやると言うんですから。正直、『なんなんだ、この人』って思いましたよ。でもその発言を聞いて、"よし、じゃあ、やってやろうじゃねえか!"って気になりましたね」

 

 落合の狙いはどこにあったのか? 自著『采配』(ダイヤモンド社)でこう明かしている。

<私としてみれば、「新監督の謎めいたメッセージ」によって、選手たちが12月から1月の2か月間、常に野球のことを考え、自分なりに準備に取り組んでくれればよかった。

 何を隠そう、それが誰からも押しつけられたのでなく、自分自身で自分の野球(仕事)を考える第一歩だからだ。

 監督になって宣言したことは、「目立った戦力補強はせず、選手一人ひとりの実力を10~15%アップさせて日本一になる」ということだった。

 まずは考えの部分から、実力アップを目論んだのである>

 プロ野球は結果が全ての世界である。中日はこのシーズン、5年ぶりのリーグ優勝を果たし、"オレ流"にスポットライトが集まった。

 

 再び谷繁。「落合さんの発言で"じゃあやってやる"と2月1日を目標に、例年より早く体を仕上げた。そうしたらキャンプ中、最後まで辛くなかった。いつもならキャンプ中盤を過ぎるとバテてくる。でもあの年は最後までバテることなく順調に練習ができた。それがシーズンにもつながった」

 

 声出しの効果

 

 23日に始まるオープン戦は3月24日まで計101試合が予定されている。

 

 昨季、リーグ優勝を果たした埼玉西武のオープン戦順位は7位、広島は同11位だった。このようにオープン戦の順位とシーズンの成績に相関性は全くない。それでも「チームの勢いを占うポイントはある」と、今季から巨人の1軍コーチに就任した元木大介は、解説者時代に語っていた。

「開幕前、オープン戦の取材に行くと、明らかに強いチームとそうでないチームで差が出るところがあるんですよ。それは選手の声です。強いチームはグラウンド上もベンチからも声が出ている。"元気がある"という以上に、野球で声を出すにはプレーに集中、ボールを追っていないと声が出せない。強いチームは全員がゲームに集中しているから、結果、声が出ているというわけです」

 

 原辰徳新監督の下、巻き返しを図る巨人は元木コーチの指示で声が出るようになったか否か。オープン戦では、そこにも注目したい。

 

 もうひとつ、次のような見方をする球界OBもいる。「ノックを見れば、そのチームの現在の実力がわかる」。選手、コーチとして14回のリーグ優勝と7回の日本一に輝いた鈴木康友だ。

「強いチームのシートノックには緊張感がある。たとえば中継プレーでミスが出たら、そのたびに『なにやってんだ!』と選手同士で戒めてすぐに修正する。黄金期の西武は辻発彦さん、石毛宏典さんが目を光らせて先輩でも容赦なく注意していた。そういう緊張感のあるノックをしているチームは強いですよ」

 

 また、"いぶし銀のコーチ"ならではのツウの視点も。

「試合前のシートノック、最後はキャッチャーフライを打ち上げてフィニッシュです。これがきれいな弧を描いて上がると、『今日の試合は勝ったな』と思いましたよ。たまに何本もキャッチャーフライ失敗しているコーチがいますけど、あれは論外ですね(笑)」

 

 スカパー!で楽しむプレシーズンマッチ、試合はプレーボールの前から始まっているのである。

 

imgfb509847ce743d532af86[1]

 

 

 

スカパー!はセ・パ12球団公式戦 徹底中継!

オープン戦も徹底中継!

※録画放送及び、トップ&リレーでの放送を含みます。

※オールスターゲーム、クライマックスシリーズ、及び日本シリーズの放送は未定です。

 

※このコーナーではスカパー!の数多くのスポーツコンテンツの中から、二宮清純が定期的にオススメをナビゲート。ならではの“見方”で、スポーツをより楽しみたい皆さんの“味方”になります。


◎バックナンバーはこちらから