26日(日本時間)、FIFAワールドカップブラジル大会のグループE最終節で、スイス代表がホンジュラス代表に3−0で勝利した。スイスは6分にFWジェルダン・シャキリのミドルシュートが決まり、先制する。31分にもシャキリにゴールが生まれ、リードを広げて前半を終えた。シャキリは後半にも1点を加え、ハットトリックを達成。守っては、ホンジュラスに最後までゴールを割らせなかった。スイスは2勝1敗で勝ち点6とし、グループ2位で決勝トーナメント進出を決めた。敗れたホンジュラスは、3度目の出場にして初勝利はまたしてもお預けとなった。

 シャキリ、左足1本でハットトリック達成(マナウス)
ホンジュラス 0−3 スイス
【得点】
[ス] ジェルダン・シャキリ(6分、31分、71分)

 169センチの小さなアタッカーが、絶大な存在感を放った。スイスのシャキリがハットトリックの大活躍。エースの爆発により、2006年ドイツ大会以来のグループリーグ(GL)突破を決めた。

 開始早々にチャンスを作ったのはスイスだ。3分、高い位置でボールを奪うと、ドルミッチがペナルティエリア内左へドリブルで侵入。グラウンダーで中へ速いボールを送ると、シャキリがダイレクトで合わせた。しかし、シュートはGKの正面をつき、ゴールは割れない。最初の決定機を生かせなかった。

 それでも名誉挽回の機会はすぐにやって来た。6分、右サイドでボールを持ったシャキリは、中へと切り込むとペナルエリアのやや外から左足を振り抜いた。ゴールへ吸い込まれるように飛んで行ったボールは、左上のバーをかすめて、ネットを揺らした。豪快なミドルシュートが決まり、スイスが先制に成功した。

 31分には、自陣からのロングパスでFWヨシプ・ドルミッチが抜け出す。ボールを持ったドルミッチに対し、相手DFは1人。さらに裏のスペースをシャキリが狙っていた。ドルミッチはシャキリへスルーパスを送る。GKと1対1となったシャキリは、冷静にゴール右隅にシュートを流し込んだ。スイスが速攻から追加点をあげた。

 逆転での決勝トーナメント進出のためには負けられないホンジュラスに、アクシデントが襲う。負傷によりFWカルロ・コストリーが40分にベンチに下がった。北中米カリブ海地区予選で7得点を奪うなど、前線で基点にもなる長身190センチのストライカーを前半で欠くこととなった。

 スイスは畳み掛けるように攻めた。アディショナルタイムにはシャキリのスルーパスからドルミッチが抜け出し、GKと1対1に。ここは飛び出したGKにセーブされたが、ドルミッチとシャキリのコンビネーションで幾度もチャンスを作って、前半を終了した。

 後半開始とともにリズムを掴んだのはホンジュラス。4分にMFウィルソン・パラシオスの低いクロスに、FWジェリー・ベングトソンが頭で合わせようとしたが、わずかに合わなかった。7分にはDFファン・カルロス・ガルシアがペナルエリアのやや外からスルーパス。抜け出したベングトソンが飛び出してきたGKディエゴ・ベナーリオをかわし、角度のないところからシュートを放った。ここはカバーに入ったDFリカルド・ロドリゲスに阻まれた。

 ホンジュラスがチャンスを生かせないでいると、スイスの速攻が再び威力を発揮し始める。26分には最終ラインからのロングボールに左サイドを抜け出したドルミッチ。ペナルティエリア内に入り、対峙するDFをドリブルでかわすと、右足アウトサイドでパスを送る。シャキリへの絶好のお膳立て。ゴール左へと放ったシャキリのシュートはGKの逆を突き、勝敗をほぼ決定づける3点目がスイスに入った。

 ホンジュラスも終盤に意地を見せた。33分に途中出場のアンディ・ナハルがこぼれ球を拾って右足でシュート、35分にはベングトソンが左からのセンタリングを頭で合わせた。いずれもゴール前での決定的なシーンだったが、スイスの守護神ベナーリオが鋭い反応で好セーブを見せた。試合はそのままのスコアでタイムアップ。同時刻に行われたフランス対エクアドルは、スコアレスドローだったため、スイスはグループ2位でGLを突破。優勝候補のアルゼンチンと対戦する。

 堅守を誇るスイスだが、前節のフランス戦で大量失点を喫していただけに、この日の完封劇は大きい。エースのシャキリがハットトリック。ドルミッチとのコンビネーションの良さは、決して守備の堅くないアルゼンチンにとって脅威に違いない。過去9回のW杯は、1934年イタリア大会、38年フランス大会、54年スウェーデン大会と3度記録しているベスト8が最高だ。スイスのシャキリとアルゼンチンのリオネル・メッシ。小柄な左利きのエース対決が、勝敗のカギを握る。

(杉浦泰介)

【ホンジュラス】
GK
ノエル・バジャダレス
DF
マイノル・フィゲロア
ビクトル・ベルナルデス
ブライアン・ベッケルス
ファン・カルロス・ガルシア
MF
ホルヘ・クラロス
ウィルソン・パラシオス
ボニエク・ガルシア
→アンディ・ナハル(77分)
ロジェール・エスピノサ
→マルビン・チャベス(46分)
FW
ジェリー・ベングトソン
カルロ・コストリー
→ジェリー・パラシオス(40分)

【スイス】
GK
ディエゴ・ベナーリオ
DF
ファビアン・シェア
ヨハン・ジュルー
ステファン・リヒトシュタイナー
リカルド・ロドリゲス
MF
ギョクハン・インレル
バロン・ベーラミ
グラニト・ジャカ
→ミヒャエル・ラング(77分)
アドミル・メーメディ
ジェルダン・シャキリ
→ブレリム・ジェマイリ(87分)
FW
ヨシプ・ドルミッチ
→ハリス・セフェロビッチ(73分)