30日(日本時間)、FIFAワールドカップブラジル大会の決勝トーナメント1回戦で、オランダがメキシコを2−1で下し、ベスト8進出を果たした。オランダは後半3分に先制され、リードされたまま時間が経過した。しかし、敗色が濃厚となった43分、MFウェズレイ・スナイデルが同点弾。そして、アディショナルタイムにFWクラース・ヤン・フンテラールが逆転のPK弾を決めた。

 ドス・サントス、先制弾実らず(フォルタレーザ)
オランダ 2−1 メキシコ
【得点】
[オ] ウェズレイ・スナイデル(88分)、クラース・ヤン・フンテラール(90分+4)
[メ] ジオバニ・ドス・サントス(48分)

 残り2分で追いつき、逆転した。オランダは劇的勝利で8強進出。悲願のW杯制覇へまた一歩前進した。

 オランダは前半9分、アクシデントに見舞われた。MFナイジェル・デ・ヨングが負傷とみられるトラブルで交代。デ・ヨングに代わってDFブルーノ・マルティンス・インディがピッチへと送り出された。

 開始早々のハプニングが影響したのか、オランダはうまく攻撃を組み立てられず、逆にメキシコに押し込まれる時間帯が続いた。17分、PA内でパスをつながれ、最後はMFエクトル・エレーラに右足で打たれた。これはわずかにゴール左へ逸れて事なきを得たが、シュートで終わるメキシコの攻撃に、オランダは得意の速攻をなかなか仕掛けられなかった。

 前半30分には、今大会初の3分間の給水タイムが設けられた。湿球黒球温度が摂氏32度以上になった場合、主審の判断で給水タイム(3分間はアディショナルタイムに加えられる)が設けられることになっていた。

 給水タイムを機に主導権を掴みたいオランダだったが、なおもメキシコの勢いを止められない。42分、FWジオバニ・ドス・サントスにPA内右へ抜け出され、角度のない位置からシュートを打たれた。GKヤスパー・シレッセンが弾いてしのいだものの、オランダはリズムに乗れないまま試合を折り返した。

 迎えた後半3分、ついにゴールをこじ開けられた。DFロン・フラールが相手のロングフィードを頭でクリアしたボールをPA手前でドス・サントスに拾われる。そこからドス・サントスに左足でゴール右下へ決められた。DFダレイ・ブリントがドス・サントスに体を寄せたものの、阻止できなかった。

 攻めるしかなくなったオランダは11分、DFパウル・フェルハーフに代えてFWメンフィス・デパイを投入し、前線を3トップに変更。攻撃に人数をかけてメキシコゴールに迫った。
 すると12分、この試合初めての決定的を迎えた。右CKからDFステファン・デ・フライがゴール前で右足で合わせた。しかし、シュートはGKギジェルモ・オチョアに弾かれると、さらにゴール右ポストに跳ね返ったボールをDFにクリアされた。今大会当たりに当たっているメキシコの守護神が、オランダの前に立ちふさがった。

 31分、ルイス・ファン・ハール監督は精彩を欠いていたFWロビン・ファンペルシーをベンチに下げ、フンテラールを投入。高さのあるフンテラールを起点にし、攻撃の活性化を図った。攻勢を強めていくオランダだが、メキシコの粘り強い守りを崩し切れない。

 時間だけが過ぎていき、優勝候補の敗退が現実味を帯びてきた……。だが43分、オランダに待望の同点ゴールが生まれた。フンテラールが右CKを頭でファーサイドで後方に落とす。ここに走り込んできたスナイデルが右足を一閃。強烈なシュートがゴール左に突き刺さった。結果的に、ファン・ハール監督がフンテラールを起用したことが同点弾につながった。

 そしてアディショナルタイム、FWアリエン・ロッベンがPA内右サイドを仕掛けてDFラファエル・マルケスに倒された。主審が笛を吹き、PKの判定。オランダにこれ以上ないチャンスが巡ってきた。重圧がかかる中、キッカーのフンテラールはGKの逆を突いてゴール左へ流し込んだ。

 逆転勝利で、オランダの勢いは増していくことが予想される。また過酷な環境下で、90分で決着をつけられたことは今後のコンディショニングに良い影響をもたらすだろう。前回大会は悔しい準優勝。“オレンジ軍団”が狙うのは頂点のみだ。

(鈴木友多)

【オランダ】
GK
ヤスパー・シレッセン
DF
ロン・フラール
ステファン・デ・フライ
ダレイ・ブリント
パウル・フェルハーフ
→メンフィス・デパイ(56分)
MF
ナイジェル・デ・ヨング
→ブルーノ・マルティンス・インディ(9分)
ウェズレイ・スナイデル
ジョルジニオ・ワイナルドゥム
FW
ロビン・ファンペルシー
→クラース・ヤン・フンテラール(76分)
アリエン・ロッベン
ディルク・カイト

【メキシコ】
GK
ギジェルモ・オチョア
DF
フランシスコ・ハビエル・ロドリゲス
カルロス・サルシド
ラファエル・マルケス
ミゲル・ラユン
エクトル・モレノ
→ディエゴ・レジェス(46分)
アンドレス・グアルダード
パウル・アギラル
MF
エクトル・エレーラ
FW
ジオバニ・ドス・サントス
→ハビエル・アキーノ(61分)
オリベ・ペラルタ
→ハビエル・エルナンデス(75分)