2日(日本時間)、FIFAワールドカップブラジル大会の決勝トーナメント1回戦で、アルゼンチンが延長の末にスイスを1−0で下し、3大会連続のベスト8進出を決めた。前半、アルゼンチンはボールを支配したものの、スイスの固い守りを崩し切れない。無得点で迎えた後半も、猛攻を仕掛けたがゴールを奪えずに延長戦へ。すると、延長後半13分、MFアンヘル・ディ・マリアのゴールでついにアルゼンチンが均衡を破った。その後はスイスの攻勢に押し込まれたが、なんとか逃げ切った。アルゼンチンは準々決勝でベルギー対米国の勝者と対戦する。

 メッシ、勝利導く決勝アシスト(サンパウロ)
アルゼンチン 1−0 スイス
【得点】
[ア] アンヘル・ディ・マリア(118分)

 最後の最後で背番号10が母国を勝利に導いた。アルゼンチンは圧倒的にボールを支配しながら、スイスのゴールをなかなかこじ開けられなかった。しかし、延長後半終了間際にFWリオネル・メッシが得意のドリブルから決勝点をアシスト。熱戦に終止符を打った。

 アルゼンチンは突破力のあるメッシとディ・マリアにボールを集めて、攻撃のかたちをつくろうとした。しかし、この2人がボールを持つとすかさず複数人のスイス選手に囲まれ、簡単に局面を打開できない。サイドからのクロスやセットプレーでボールをゴール前に入れても、高さのあるスイスDF陣に跳ね返された。

 逆に、アルゼンチンはカウンターからピンチを迎えた。28分、MFジェルダン・シャキリにショートコーナーから右サイド深くを突破され、マイナスに折り返される。これをMFグラニト・ジャカに右足で合わせられたが、GKセルヒオ・ロメロが左足で防いだ。39分には、抜け出したFWヨシプ・ドルミッチにGKと1対1の場面をつくられたが、ドルミッチが狙ったループシュートは高さが足りず、ロメロがキャッチした。アルゼンチンは相手のシュート精度の低さにも救われた。

 後半はアルゼンチンがスイスにシュートの雨を降らせた。12分、メッシが左サイドにボールを展開し、受けたDFマルコス・ロホがクロス。クロスはGKディエゴ・ベナーリオに弾かれてこぼれたボールをディ・マリアが拾ってシュートを打ったがDFにブロックされた。22分には、メッシが相手のクリアボールを拾って、PA手前から左足を一閃。しかし、シュートはわずかにゴール上へ外れた。

 33分にもチャンスを迎えた。メッシがPA手前からドリブルでスルスルと持ち込み、PA内左から左足でシュート。GKに弾かれたところを途中出場のFWロドリゴ・パラシオが詰めたものの、スイスのDFにクリアされた。アルゼンチンは好機をつくりだしたものの、ゴールネットを揺らせず、延長戦で勝負を決することになった。それでも延長前半を終えてもゴールは生まれない。延長後半4分には、ディ・マリアがPA右角から左足でミドルシュートで狙ったものの、ベナーリオに左手1本で弾き出された。

 だが、PK戦にまでもつれ込むかと思われた13分、ついに試合が動いた。ゴールを演出したのはメッシだ。中盤でボールを奪ったパラシオからパスを受けると、中央をドリブル突破。メッシは奪いにきたDFファビアン・シェアをかわすと、PA手前から右前方へスルーパスを送る。ここに走り込んだディ・マリアが左足ダイレクトでゴール左下へ流し込んだ。待望のゴールにメッシは、奪ったディ・マリアに背中から抱きついて喜びを表した。

 アディショナルタイム突入後は、MFブレリム・ジェマイリにヘディングシュートを打たれたが、ゴール右ポストを直撃して事なきを得た。PA手前で与えたFKをブロックしたところでタイムアップ。最後はツキにも恵まれたかたちで、勝利を掴み取った。

 メッシは運動量は多くはなかったが、要所で鋭い突破や惜しいシュートを放ち、存在感を示した。試合中はメッシにボールが多く集まるなど、チームの彼への依存度が高いのは気がかりだが、逆に言えば確固たる信念を貫いているともいえる。主将として、エースとして、ベスト8以降もメッシがアルゼンチンの命運を握っている。

(鈴木友多)

【アルゼンチン】
GK
セルヒオ・ロメロ
DF
エセキエル・ガライ
パブロ・サバレタ
マルコス・ロホ
→ホセ・マリア・バサンタ(105分+1)
フェデリコ・フェルナンデス
MF
フェルナンド・ガゴ
→ルーカス・ビリア(120分)
アンヘル・ディ・マリア
ハビエル・マスチェラーノ
FW
ゴンサロ・イグアイン
リオネル・メッシ
エゼキエル・ラベッシ
→ロドリゴ・パラシオ(74分)

【スイス】
GK
ディエゴ・ベナリオ
DF
ステファン・リヒトシュタイナー
リカルド・ロドリゲス
ヨハン・ジュルー
ファビアン・シェア
MF
ギョクハン・インレル
グラニト・ジャカ
→ジェルソン・フェルナンデス(66分)
バロン・ベーラミ
シェルダン・シャキリ
FW
アドミル・メーメディ
→ブレリム・ジェマイリ(113分)
ヨシプ・ドルミッチ
→ハリス・セフェロビッチ(82分)