2日(日本時間)、FIFAワールドカップブラジル大会の決勝トーナメント1回戦で、ベルギーが延長の末に米国を2−1で下し、28年ぶりのベスト8進出を決めた。ベルギーは終始、米国を押し込んだ。だが、相手の粘り強い守りを崩し切れない。試合が動いたのは延長前半3分、ベルギーがMFケビン・デ・ブライネのゴールで先制した。さらに15分には途中出場のFWロメル・ルカクが追加点。延長後半2分にMFジュリアン・グリーンに1点を返されたものの、その後の反撃をしのいだ。ベルギーは準々決勝でアルゼンチンとの対戦が決まった。

 途中出場のルカク、先制演出&追加点(サルバドール)
ベルギー 2−1 米国
【得点】
[ベ] ケビン・デ・ブライネ(93分)、ロメル・ルカク(105分)
[米] ジュリアン・グリーン(107分)

 指揮官の采配がまたも的中した。ベルギーのマルク・ビルモッツ監督はスコアレスで迎えた延長前半開始からルカクを投入。そのルカクが先制点を演出し、追加点をマークした。グループリーグで発揮した交代策の効果は決勝トーナメントでも抜群だった。

 ビルモッツ監督はこれまで先発で起用してきたルカクに代わり、FWディボック・オリギをスタメンで送り出した。すると開始早々、オリギがショートカウンターからボールを受けると、PA内右に進入してから右足でシュート。これはGKティム・ハワードに防がれたものの、いきなりチャンスをつくりだしたベルギーが、主導権を握っていった。

 試合はベルギーが押し込み、米国がカウンターからチャンスをうかがう展開となった。ファールやボールが外に出てプレーが止まることが少なく、ベルギーは波状攻撃を続けた時間帯もあったが、ゴールが生まれることはなく、スコアレスのまま試合を折り返した。

 後半2分、右サイドからのクロスをFWドリース・メルテンスがヘディングシュート。弧を描いたシュートがゴール枠内をとらえたが、ハワードに間一髪でかき出された。12分にも、オリギが右サイドからのアーリークロスを頭で合わせたが、クロスバーに当たってゴールにはならなかった。

 一方的に攻め続けるベルギーだが、プレミアリーグで活躍するハワードの好守もあり、90分間でゴールを奪えず、勝負は延長戦にもつれ込んだ。

 ここでベルギーベンチが動いた。ビルモッツ監督はオリギを下げ、先発から外したルカクを投入。スピードとパワーを兼ね備えるストライカーを入れて、米国ゴールをこじ開けにかかった。そして、この交代策が結実する。

 延長前半3分、ルカクが右サイドへ展開されたボールに走り込むと、競り合ったDFマット・ベスラーを弾き飛ばして、そのままPA内右へ進入。マイナスに折り返したボールは一度DFに触られたが、デ・ブルイネが奪い返して右足でゴール左へ流し込んだ。ゴールを演出したルカクは両手でガッツポーズをつくり、ビルモッツ監督はベンチを飛び出して飛び跳ねながら先制を喜んだ。

 さらに延長前半終了間際、ルカクが追加点を決めた。カウンターからデ・ブルイネがPA手前までボールを運び、PA内左へスルーパス。受けたルカクが左足で、ニアサイドを撃ち抜いた。ルカクはゴール後、逆サイドへと向かい、テレビカメラに歓喜のキス。指揮官の期待に応えるゴールは、ベルギーに勝利を大きく手繰り寄せる貴重な追加点となった。

 しかし、試合はこれで終わらなかった。延長後半2分、ベルギーはMFマイケル・ブラッドリーにピッチ中央付近からPA内へ浮き球のパスを通された。これを、グリーンに右足ボレーで合わされ、シュートはGKティボ・クルトワの手を弾いてゴール右へ吸い込まれた。

 その後、ベルギーは息を吹き返した米国の猛攻に遭った。9分、ゴール正面で与えたFKでトリックプレーを仕掛けられ、FWクリント・デンプシーにGKと1対1の場面をつくられた。だが、クルトワがデンプシーのシュートを体を張ってブロック。1分のアディショナルタイムもしのぎ切り、最後の1枚となったベスト8への切符を手にした。

 ベルギーのMVPは先制点を演出し、追加点を決めたルカクだろう。90分を戦い疲労がたまった米国守備陣は、ルカクのスピードについていけなかった。そして、ルカクを的確なタイミングで起用したビルモッツ監督も、勝利の立役者といえる。果たして、“ビルモッツ・マジック”の効果はどこまで続くのか。次はFWリオネル・メッシ擁するアルゼンチン撃破に挑む。

(鈴木友多)

【ベルギー】
GK
ティボ・クルトワ
DF
トビー・アルデルワイレルト
バンサン・コンパニ
ヤン・ベルトンゲン
ダニエル・ファン・ブイテン
MF
アクセル・ビツェル
ケビン・デ・ブルイネ
マルアン・フェライニ
FW
エデン・アザール
→ナセル・シャドリ(111分)
ドリース・メルテンス
→ケビン・ミララス(60分)
ディボック・オリギ
→ロメル・ルカク(91分)

【米国】
GK
ティム・ハワード
DF
オマール・ゴンサレス
マット・ベスラー
ダマルカス・ビーズリー
ジェフ・キャメロン
ファビアン・ジョンソン
→デアンドレ・イェドリン(32分)
MF
マイケル・ブラッドリー
アレハンドロ・ベドヤ
→ジュリアン・グリーン(105分+2)
ジャーメイン・ジョーンズ
グレアム・ズシ
→クリス・ウォンドロウスキ(72分)
FW
クリント・デンプシー