(写真:JXでの13シーズンを終え引退を決めた女子バスケ界の第一人者。ひまわりの花が会場を彩った)

 25日、女子バスケットボールリーグのWリーグで11連覇を達成したJX-ENEOSサンフラワーズの吉田亜沙美が都内で引退会見を行った。JXで13年間で手にしたタイトルはWリーグ12回、全日本総合選手権大会(皇后杯)10回。個人賞はルーキーオブザイヤーから始まり、ベスト5は5度、アシスト王を4度受賞するなど、常勝軍団の主力として活躍した。また抜群の勝負強さを発揮し、プレーオフMVPは5度も輝いた。日本代表では2010年のワールドカップでアシスト王を獲得。15年にはアジア選手権を制し、16年リオデジャネイロオリンピック出場に導いた。

 

 ひまわりの象徴、JXの象徴がコートを去る決断をした。3日前の金曜日にその報が流れ、週明けの月曜日に記者会見が開かれた。ひまわりの花を前に晴れやかな表情で、吉田は会見に臨んだ。「泣きたくないので、泣かせるようなご質問はしないでください」。集まった報道陣を“牽制”すると、主役は笑った。

 

 引退の2文字は昨季途中から過っていたという。だから今季は背番号を「0」から「12」に変えた。「最後のシーズンは12番で終わりたい」。慣れ親しんだスターターのポイントガード(PG)も後輩の藤岡麻菜美に譲った。シックスマンとしてチームを後方支援した。「リュウ」。勝利の流れを呼び込めるようにと名付けられたコートネーム通りの活躍でWリーグ史上初の11連覇、皇后杯も6連覇でラストシーズンを締めくくった。

 

 ベストシックスマン賞を獲得するなど、シックスマンとして新たな可能性を示したシーズンでもあった。東京オリンピックまで、あと1年。だが最後のブザーが鳴った瞬間から現役引退の決断を下した。最大の理由はモチベーションだ。
「目標だったオリンピック出場をリオで達成して以降、自分の気持ちやモチベーションに違和感を覚えながら代表活動をしていました。やはり日本代表は日の丸を背負う覚悟を持ってやらないといけない場所。中途半端な気持ちでは関わってはいけないだったので、気持ちも限界に近い状態でした」

 

(写真:佐藤HCは「バスケの能力がすごく高い。身体能力は他のスポーツをやっていても一流だったと思う」と絶賛)

 それだけオリンピック出場は、日本にとって、そして吉田にとっても悲願だった。日本代表で印象に残った試合は、リオ行きの切符を勝つ取ったアジア選手権とリオオリンピックでの2試合を選んだ。アジア選手権は最大のライバル中国との予選ラウンド4戦目だ。吉田が残り3秒で逆転のレイアップシュートを決めて勝利した。「逆転したレイアップは現役生活の中でも最も印象に残るプレー。勝手な思いですが、あそこからチームが勢いに乗ったのではないかと思っています」と吉田。その勢いに駆ってアジアを制し、リオオリンピック出場を果たしたのだ。

 

 リオオリンピック本大会はグループリーグ・オーストラリア戦を挙げた。2勝1敗で迎えた試合。決勝トーナメント初戦(準々決勝)で強豪との対戦を避けるには1位通過が理想だったが、86-92で敗れてしまった。「私のゲームコントロールができていれば、勝ち切れたゲーム。1位通過ができれば、もしかしたらメダルに届いたかもしれない。結果論ですけど、そういった可能性の中でのオーストラリアの負けというのは世界との壁を一番感じた試合だったかなと思います。届きそうで届かない。小さな差ですけど、大きな差に感じた試合でもありました」。準々決勝進出こそ果たしたものの、強豪アメリカに64-110の大敗を喫した。

 

(写真:チームに多くのタイトルを勝ち取ってきたキャプテンと指揮官。会見終了後に佐藤HCから花束が贈呈された)

 吉田は華のあるプレーヤーだった。トリッキーなパス、ここぞでの決定力で場内を沸かせた。彼女が咲かせたの華だけではない。チームに蒔いた種は着実に芽吹いている。会見に同席した佐藤清美HCは「試合だけではなく練習の時から120%の力を発揮してやってくれている。それを後輩たちが見て、今のサンフラワーズの強さに繋がっているのかなと思います」と口にする。後輩のガード宮崎早織もこう語っていた。
「やはり一番すごいと感じるのは、全くサボらないことです。ウエイトにしても練習にしても、いつも全力でやっている。だから試合でもすごいプレーができるんだろうなと思いますね」

 

 小学2年で始めたバスケットボール。「私にとっては人生においてなくてはならないもの。出会えて良かった」。現役選手としては別れの時が来た。
「1回バスケットから離れることで感じる部分、考える部分があると思う。バスケットしかやってこなかった。何か関わることができればと思います」
 最後まで涙を見せることはなかった。プレーでは強気の姿勢でチームを引っ張った女子バスケットの第一人者が会見場から去る時、報道陣から大きな拍手で見送られた。

 

(文・写真/杉浦泰介)