14日(日本時間)、FIFAワールドカップブラジル大会の決勝がリオデジャネイロのマラカナンスタジアムで行われ、ドイツがアルゼンチンを延長の末に1−0で下して1990年イタリアW杯以来、4度目の優勝を果たした。試合はドイツがボールを支配して攻撃のかたちを多くつくり、アルゼンチンが速攻からチャンスをうかがう展開。しかし、互いに決定的を生かすことができず、試合は延長戦へ突入した。すると延長後半8分、途中出場のMFマリオ・ゲッツェが決勝点。ドイツはその後のアルゼンチンの猛攻を防ぎ、24年ぶりに世界一の座に就いた。大会MVPにはリオネル・メッシ(アルゼンチン)、得点王にハメス・ロドリゲス(コロンビア、6点)、最優秀GKにはマヌエル・ノイアーが選ばれた。

 ゲッツェ、途中出場から値千金弾!(リオデジャネイロ)
ドイツ 1−0 アルゼンチン
【得点】
[ド] マリオ・ゲッツェ(113分)

 キャプテンのDFフィリップ・ラームが高々とW杯トロフィーを掲げた。02年日韓W杯の準優勝以降、4大会連続でベスト4に進出したドイツ。24年の時を経て、ついに4度目の栄光を手にした。

 ドイツは試合前のウォーミングアップで先発が予想されたMFサミ・ケディラが負傷し、急遽、MFクリストフ・クラマーが出場するというアクシデントの中で試合をスタートした。そんなドイツが序盤からボールを支配したものの、アルゼンチンの粘り強いを前に、なかなかシュートまで持ち込めなかった。

 逆に21分、自分たちのミスからピンチを迎えた。21分、ピッチ中央付近でMFトニ・クロースがルーズボールをヘディングでバックパス。しかし、これはDFとタイミングが合わず、前線に残っていたFWゴンサロ・イグアインに渡ってしまう。GKマヌエル・ノイアーと1対1の場面からシュートを打たれたが、これはゴール左へと外れ、事なきを得た。

 リズムを掴めないドイツに、さらにアクシデントが起きたのは32分だ。17分に相手選手との接触で頭部を強打しながらプレーを続けていたクラマーが、スタッフに両肩を支えられてピッチを後にしたのだ。ケディラの代役が見舞われたトラブルに、ヨアヒム・レーブ監督は同じMFではなく、FWのアンドレ・シュールレを投入。シュールレを左ウィングに入れ、MFメスト・エジルをクラマーのいた右セントラルハーフに移した。

 すると、この交代を機にドイツがチャンスをつくりだしていった。37分、左サイドを突破したMFトーマス・ミュラーが中央に折り返したボールを、シュールレが右足で振り抜く。強烈なシュートがゴール左へ飛んだが、GKセルヒオ・ロメロに横っ飛びでセーブされた。アディショナルタイムには、右CKにDFベネディクト・ヘーベテスが頭でピタリと合わせたがゴール右ポストを直撃。決定機を迎えたものの、得点を奪えず、試合を折り返した。

 後半の早い時間帯に先制したいドイツだったが、またもアルゼンチンに決定的な場面をつくられてしまう。後半2分、FWリオネル・メッシにPA内へ抜け出され、左足で狙われた。ノイアーも前に出られなかったが、シュートはわずかにゴール右へ外れた。

 アルゼンチンが後半41分までに交代枠を使い切ったのに対し、ドイツベンチも43分に2枚目の交代カードを切った。FWミロスラフ・クローゼに代えて、MFマリオ・ゲッツェをピッチへ送り出した。90分で決着はつかなかったが、このゲッツェ投入が、後に奏功する。延長前半1分には、シュールレが左サイドで仕掛けてこぼれたボールをゲッツェがPA内で拾い、体勢を立て直してPA内へ入ってきたシュールレへ返す。シュールレは右足で狙ったが、これはGK正面を突いた。

 約1カ月で7試合目、延長戦という過酷な状況に、ヒザに手をつく選手など、両チームの選手には限界が近づいていた。互いにチャンスを決めきれず、無得点のまま時間だけが経過。延長後半も半分を過ぎ、PK戦で決着か、という空気がスタジアムに漂い始めた。
 ところが、である。延長後半8分、ついに試合が動いた。決めたのはゲッツェだ。左サイドでボールを受けたシュールレが、マークがいる中で強引に縦へ突破してからクロス。ゲッツェはニアサイドに走り込み、胸トラップしてからGKの位置を見て冷静に左足でゴール右サイドネットへ流し込んだ。聖地・マラカナンに詰めかけたドイツサポーターが歓声を上げ、観戦していた同国のアンゲラ・メルケル首相も手を叩いて喜んだ。シュールレの強引さ、そしてゲッツェの技術力。2人の特長が合わさって生まれた、まさに値千金のゴールだった。

 その後、ロングボールを放り込んでくるアルゼンチンに押し込まれたが、MFバスティアン・シュバインシュタイガーを中心に守備陣が体を張って攻撃を跳ね返す。アディショナルタイムにゴール前でFKを与えてしまったが、メッシのキックは大きくゴール上へ外れた。

 迎えた待望のホイッスル。ドイツは南米大陸開催のW杯で初めて、南米国以外の優勝国となった。ドイツ4度目の優勝は、同国の選手育成が結実した結果と言っても過言ではない。00年欧州選手権以降、ドイツサッカー連盟は若手選手の育成に着手した。30歳の主将・ラームは今回が3大会目。ノイアーやエジルをはじめ09年U−21欧州選手権を制したメンバーは10年南アフリカW杯、ブラジルW杯で中心選手となった。若い時から大舞台で経験を積んできたからこそ、ドイツは平均年齢26.4歳の若さながら、貫禄ともいえる風格を漂わせていた。それでいて、クローゼなどのベテランもしっかりと実力を踏まえて召集。全世代にきめ細やかな目配りをしてきたドイツの優勝は、もはや必然だったといえるだろう。決勝点を決めたゲッツェはまだ22歳。次回大会以降はゲッツェらの世代が中心となり、またチームを牽引していく。ドイツは黄金期へのサイクルへと突入したのかもしれない。

(鈴木友多)

【ドイツ】
GK
マヌエル・ノイアー
DF
ベネディクト・ヘーベデス
マッツ・フンメルス
フィリップ・ラーム
ジェローム・ボアテング
MF
バスティアン・シュバインシュタイガー
メスト・エジル
→ペア・メルテザッカー(120分)
トーマス・ミュラー
トニ・クロース
クリストフ・クラマー
→アンドレ・シュールレ(31分)
FW
ミロスラフ・クローゼ
→マリオ・ゲッツェ(88分)

【アルゼンチン】
GK
セルヒオ・ロメロ
DF
エセキエル・ガライ
パブロ・サバレタ
マルティン・デミチェリス
マルコス・ロホ
MF
ルーカス・ビリア
エンソ・ペレス
→フェルナンド・ガゴ(86分)
ハビエル・マスチェラーノ
FW
ゴンサロ・イグアイン
→ロドリゴ・パラシオ(78分)
リオネル・メッシ
エゼキエル・ラベッシ
→セルヒオ・アグエロ(46分)