日本人で179cm(取材時)というサイズは一般的には高身長だ。だがバスケットボール界に身を置けば、それほどでもない。ましてや彼女が主戦場としているセンターならば尚更だ。彼女とは東京医療保健大学4年の藤本愛妃(あき)のことである。全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)2連覇中の同大の中心選手だ。

 

愛媛新聞社

 

 

 

 

 走れるセンター。それが彼女のプレーを観た時に抱いた印象である。源流は高校時代、桜花学園で培ったものだという。さらにはミドルレンジからのシュートも巧い。

「ブレイク(速攻)などで先頭を切って走り点を取るのが桜花の時に身に付けた武器です。大学からはペイントの外からの決定率の高さが強みだと思います」

 

 連覇を達成した愛知学泉大学とのインカレ決勝でも彼女の活躍が光った。開始直後のフリースローを連続で外すなど、シュートに硬さは見られたがリバウンドやスクリーンでチームにインサイドで大きく貢献した。

 

 第1ピリオド終了間際には自陣で味方がボールを奪うと、誰よりも速く前線へ駆け出した。同学年のパワーフォワード永田萌絵からのパスをゴール下で受け取ると、シュートこそ決まらなかったが相手のファウルを誘った。2本のフリースローを着実に入れて、愛知学泉大を22-12と突き放した。

 

 このプレーで相手のインサイドプレーヤーは第1ピリオドで既に3つ目のパーソナルファウルとなった。試合の4分の3を残し、退場まではあと2つ。その意味でも大きなワンプレーだった。藤本は第2ピリオド以降、スコアをのばし合計14得点を挙げた。リバウンドは両軍最多の9つも稼いだ。チームは85-76で愛知学泉大を破り、インカレ連覇を果たしたのだった。

 

 目標は「毎試合ダブルダブル」

 

 チームの勝利が最優先だが、数字にもこだわりを見せる。

「点を取らなくてはいけないポジションなので、得点にはこだわっています。得点とリバウンドは2桁。大学2年の時から毎試合でダブルダブルを狙っています」

 

 ダブルダブルとは1試合における個人スタッツ2項目で2桁以上を記録することだ。得点とリバウンドは優れたインサイドプレーヤーを測る物差しとも言える。インサイドは留学生ら長身選手が多いポジション。常に相手のビッグマンたちと対峙しながら、藤本は高いレベルを目標とする。

 

 彼女は小中高大と全国大会を経験し、高校と大学では日本一になっている。アンダー世代の日本代表にも選ばれ、昨年のユニバーシアード競技大会では銀メダル獲得に貢献した。藤本はトップ代表の選出こそないものの、その経歴だけを見れば順風満帆な競技人生を送っているように映る。しかし、その中身は大きく違う。

 

 彼女がバスケットボールを始めたのは小学3年時である。父・俊彦は元プロ野球選手、母・美加は元全日本女子バレーボール選手。なぜ野球やソフトボール、バレーボールでもなくバスケットボールを始めたのか――。

 

(第2回につづく)

 

藤本愛妃(ふじもと・あき)プロフィール>

1998年2月11日、徳島県徳島市生まれ。小学3年でバスケットボールを始め、6年時には全国大会で3位に入る。小松島中学3年時には全国中学校体育大会に出場した。名門・桜花学園高校進学後、数々の全国大会優勝を経験。東京医療保健大学進学後は1年時から主力としてプレーする。2年時に関東大学リーグ戦と全日本大学選手権大会(インカレ)の2冠達成に貢献した。同年夏にはユニバーシアード競技大会の日本代表に選ばれ、50年ぶりの銀メダルを獲得した。3年時はケガに苦しみながらもインカレ2連覇に導く活躍を見せた。身長179cm。

 

(文・写真/杉浦泰介)

 

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