(写真:この日は2番手で登板。3イニング1安打無失点の上野)

 13日、第52回日本女子ソフトボールリーグ1部が愛知・パロマ瑞穂野球場で開幕した。昨季決勝と同一カードとなった第1試合はビックカメラ高崎BEE QUEENがトヨタ自動車レッドテリアーズを延長8回タイブレーカーの末、2-1で下した。その他の試合はSGホールディングスギャラクシースターズが戸田中央総合病院メディックスを2-0で、Honda Revertaが日立サンディーバを3―2で破った。

 

 上野、3イニング無失点の好リリーフ(パロマ瑞穂野球場)

ビックカメラ高崎BEE QUEEN 2 = 00001001

トヨタ自動車レッドテリアーズ 1 = 00010000(延長8回タイブレーカー)

勝利投手 上野(1勝0敗)

敗戦投手 アボット(0勝1敗)

本塁打 (ト)坂元1号ソロ

 

(写真:敗れはしたが8回12奪三振自責点ゼロ。試合をつくったアボット)

 一三塁側のスタンドを両軍のチームカラーである赤で染めた。優勝候補同士の対戦とあって5863人が詰め掛けた。開幕戦第1試合は、その期待に違わぬ白熱した展開となった。
 
 トヨタ自動車の先発マウンドにはモニカ・アボットが上がる。昨季は12勝無敗、防御率0.24と圧倒的な成績を残してMVPを獲得した。アメリカ代表のエースは初回1死満塁のピンチを迎えるが、5番の内藤実穂、6番の大工谷真波を抑えて初回をゼロでスタートしてみせた。
 

(写真:濱村は5回1失点の好投。上野も「成長が感じられた」と称える)

 対するビックカメラ高崎の開幕投手はエースの上野由岐子ではなく、濱村ゆかりが任された。岩渕有美監督は「誰がきてもいいような準備をしてきました。その中で一番調子が上がってきていて、“勝負できる”と思った」と起用理由を明かした。
 
 濱村も「去年、(決勝で)負けてから、開幕投手を任されたら『行けます』と答えられる準備をしてきたので不安はなかったです」と準備は万端だった。2つの四球は出したものの、初回をゼロで抑えた。まずまずの立ち上がりをみせた。
 
 2回裏にはバックが濱村を支える。2死から濱村が8番の古澤春菜、9番の田中麻美に2連打を浴び、一二塁となった場面だ。1番のアリソン・アギュラーがライト前ヒットを放つと、右翼手の糟谷舞乃がバックホーム。悠々タッチアウトで古澤の生還を許さなかった。
 

(写真:昨季は0本塁打。2年ぶりのホームランを放った坂元)

 両軍ゼロ行進が続く中、4回裏にゲームが動く。トヨタ自動車の6番・坂元令奈の一発だった。32歳のベテランはインコースのライズボールをレフトへ運んだ。試合後、「打った瞬間、レフトは越えると思いました。そのまま風にも乗ってくれた」と振り返った。
 
 先制を許したビックカメラ高崎。直後の5回表に思いもよらぬかたちでチャンスが舞い込んできた。この回先頭の藤本麗の打球はピッチャー・アボットの正面へ。ところがこのゴロを捕ったアボットが送球しようとしてボールを握り損ねる。
 
 ファーストへの送球が遅れた分、藤本が一足早く一塁を駆け抜けた。続く北口美海が着実に送り、スコアリングポジションに。市口侑果を空振り三振に倒れたが、糟谷がチャンスをモノにした。
 

(写真:糟谷は2年前の打点王。持ち前の勝負強さを発揮した)

 昨季の決勝トーナメントでアボットからホームランを打っている糟谷。「自分が打ち返せるボールを狙っていた」。インコースのドロップボールに詰まりながらもセンターへ運び、藤本をホームに招き入れた。
 
 藤本は守備でも濱村を救う。田中、アギュラーの一二塁間を破りそうな当たりをいずれも飛び付いて好捕。この回すべてのゴロをさばき、トヨタ自動車のクリーンアップの前に出塁させなかった。
 

(写真:鉄壁の守備を誇る藤本<右>と市口の二遊間コンビ)

「常に自分のところに打球が飛んでくるという思いで、どこにきてもいいような準備をしていました」と藤本。岩渕監督も殊勲のヒロインを称えた。
「ウチはどんな打球にも食らいついて止めるチーム。藤本の執念を出したプレーでいいリズムになった」
 
 ビックカメラ高崎は6回から上野が登板した。「あらかじめわかっていたので、そこに向けて調整していました」。とはいえ今季は開幕まで実戦的な調整を積めなかったという。荒れ気味のボールは我妻悠香のミットを弾く場面も見られた。「自分らしくない感じが相手には打ちづらかったのかもしれない」。上野は6、7回とゼロに抑える。
 
 7回裏が終了しても決着付かず勝負の行方は延長戦へともつれ込む。無死二塁からスタートするタイブレーカーへと突入した。
 

(写真:バッテリーを組む我妻<白いユニホーム右>と勝利を喜ぶ上野)

 まずはビックカメラ高崎の攻撃。内藤がきっちり送り、1死三塁とすると大工谷がレフト前ヒットで勝ち越した。過去3打席はいずれもランナーがいる場面で凡退していた。「マイナスな考えはなかった」。感触は悪いわけではなかったという。
 
 ついに1点のリードを奪ったビックカメラ高崎は、上野が1死一三塁の場面で山崎有紀をセカンドフライに打ち取る。最後は峰幸代を空振り三振に切って取り、ゲームセット。ビックカメラ高崎が昨季女王を破り、開幕戦白星スタートを切った。
 
 宿敵トヨタ自動車を下しての開幕戦勝利。岩渕監督は「最後まで粘り強くいけたのは良かった。ここからがスタート。あとリーグ戦は21試合、ひとつひとつをしっかり戦っていきたい」と、王座奪還へ気を引き締めた。
 
(文・写真/杉浦泰介)