現役を3月に引退したイチローが、マリナーズのインストラクターに就任した。

 

 

 スポニチ紙(5月2日付け)の報道によると、打撃、外野守備、走塁を担当する他、3Aタコマでも指導にあたるという。

 

 東京での引退記者会見で、イチローは「監督は絶対に無理ですよ。これは絶対がつきますよ。人望がない。本当に人望がないですよ、僕……」と言い切ったが、指導することの面白さに目覚めれば、将来的には監督就任の布石となるかもしれない。

 

 これも引退記者会見で口にしていたことだが、イチローは「(米国の選手は)個人としてのポテンシャルは高いが、そこ(チームの連係への理解)は苦しんで諦めた」と、こと指導のレベルに対しては米国野球に不満を感じている様子だった。

 

「基本的な基礎の動きはメジャーリーグより、(日本の)中学生レベルの方がうまい可能性がある」

 

 そう言えば、マイナーリーグでコーチが手取り足取り教えている場面には、一度も遭遇したことがない。

 

 はしの上げ下げまで口出しする日本流もどうかとは思うが、もう少し基本を丁寧に教えることで一皮むける選手はたくさんいるのではないだろうか。

 

「こっち(米国)には不細工な選手が多い」

 イチローが日本人記者相手に、そう語っているのを聞いたことがある。裏を返せば、「もう少し工夫すれば上手になれるのに」ということなのだろう。

 

 それは引退記者会見での次の発言にも表れていた。

「2001年に米国に来た時と比べて野球は変わった。頭を使わなくても、できる野球になりつつあると思う」

 

「日本の野球が米国に追従する必要はない。日本の野球は頭を使う面白い野球であってほしい」

 

 アスレチックス戦での最後の打席、センター返しを狙った打球はショートの前に転がり、懸命に走ったが、間一髪アウトだった。

 

 何気ないプレーに見えたが、巨人や西武など5球団で守備走塁コーチを務めた鈴木康友は「さすが、イチロー!」とうなったという。

 

「ヒットが欲しければヘッドスライディングをしたり、歩幅が合わずに右足でベースを踏みにいったりするものですが、イチローは基本通り左足でベースを踏んでいた。だからこそ、大きなケガもなく45歳まで現役を続けられたんだと思います」

 

 曲がり角のメジャーリーグ。今こそイチロー先生の出番である。

 

<この原稿は2019年5月31日号『漫画ゴラク』に掲載されたものです>

 


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