21日、パンパシフィック水泳選手権がオーストラリア・ゴールドコーストで開幕した。男子100メートル背泳ぎ決勝で入江陵介(イトマン東進)が53秒02で優勝。五輪、世界選手権に次ぐパンパシで自身初の金メダルを獲得した。200メートルバタフライ決勝は、瀬戸大也(毛呂山)が1分54秒92で制した。200メートル自由形決勝は、萩野公介(東洋大)が僅差の2位に入り、銀メダルを獲得。この種目で日本人初のメダリストとなった。女子200メートルバタフライ決勝では星奈津美(ミズノ)が銀メダルを獲得した。そのほかの種目ではケイティ・レデッキー(米国)が女子200メートルと800メートルで自由形2冠を達成した。
 トビウオジャパンが初日から好スタートを切ったと言っていいだろう。4年に1度のパンパシ。米国・カリフォルニアでの前回大会は13個のメダルを獲得した。金メダルは男子50メートルの古賀淳也、同100メートルと200メートル平泳ぎの北島康介の3個。今大会は初日で金2、銀2の4個のメダルを手にした。

 まずメダル第1号は、日本が誇るマルチスイマーの萩野だ。今大会は個人5種目にエントリーしている。予選を全体トップで通過すると、決勝では入りの50メートルで3番手につけた。折り返し地点では順位を落としたが、ラスト50メートルで3番手から追い上げを図った。後半型の萩野はグングン差をつめていく。しかし、最後のタッチが届かず0秒10差の2着。「身長差で負けてしまった」と194センチのホームズをとらえることができなかった。

 本人にとっては悔しい銀メダルとなったが、この種目では日本人初のメダル獲得。トビウオジャパンの勢いづけるには十分のレースだった。「大きな流れを作ってくれた」と、後を引き継いだのは、男子100メートル背泳ぎに登場した背泳ぎのエースだ。

 昨年の世界選手権バルセロナでは個人種目でメダルなしに終わり、「自分は(表彰台の)真ん中に立てない人間なのかな」と肩を落とした入江だったが、見事にセンターポールに日の丸を掲げることに成功した。

 予選ではスタートを失敗して、全体3位だった。だが決勝でしっかり修正してきた。「横の選手に離されなかったので、余裕を持っていけた」と、0秒52のリアクションタイムで好スタートを切ると、折り返しでトップに立つ。残りの50メートルで昨年世界選手権で同種目金メダリストのマット・グレバース(米国)の追い上げにあったが、0秒07差で逃げ切った。最終タイムは53秒02。「このタイムでは世界と戦えない」と記録には満足しなかったが、留学経験のあるオーストラリアの地で表彰台の真ん中に立った。1年前はどん底にあった背泳ぎのエースは、完全復活を遂げたと言っていいだろう。

 3個目のメダルは、女子200メートルバタフライの星が、24歳の誕生日を自ら祝う銀メダル獲得した。締めくくり4個目のメダルは、昨年の世界選手権で日本勢唯一金メダルを獲得した瀬戸だ。

 この日、出場した種目は金メダルを獲得した400メートル個人メドレーではなく、200メートルバタフライ。本職のメドレーではないが「狙っていた金メダル」と前半から積極的にレースを展開した。50メートルで体半分、100メートル、150メートルと、どんどん差を広げていく。最後まで危なげなく1分54秒92で優勝。「公介のレースも(金メダルを)獲ったと思ったんですが、タッチ差で負けてしまった。入江さんがしっかり獲ってきたので、自分も引き続けて、いいスタートできた。この流れに乗って、あと3日間、しっかり泳いでいきたい」。本職の個人メドレーでは、同学年の萩野とダブル表彰台を目指す。

 主な決勝の結果は次の通り。

<男子100メートル背泳ぎ・決勝>
1位 入江陵介(イトマン東進) 53秒02
2位 マット・グレバース(米国) 53秒09
3位 ライアン・マーフィー(米国) 53秒27
6位 古賀淳也(第一三共) 54秒02
松原颯(ANA)は予選落ち

<男子200メートル自由形・決勝>
1位 フレーザー・ホームズ(オーストラリア) 1分45秒98
2位 萩野公介(東洋大) 1分46秒08
3位 キャメロン・マクヴォイ(オーストラリア) 1分46秒36
8位 坂田怜央(イトマンSS) 1分47秒76
小堀勇氣(日大)、松田丈志(セガサミー)は予選落ち

<男子200メートルバタフライ・決勝>
1位 瀬戸大也(JSS毛呂山) 1分54秒92 
2位 レオナール・デデウス(ブラジル) 1分55秒28
3位 タイラー・クラーリー(米国) 1分55秒42
4位 坂井聖人(早稲田大) 1分56秒64
平井健太(セントラルスポーツ)、 松田丈志(セガサミー)は予選落ち

<男子1500メートル自由形・決勝>
1位 コナー・イェーガー(米国) 14分51秒79
2位 ライアン・コクラン(カナダ) 14分51秒97
3位 マック・ホートン(オーストラリア) 14分52秒78
6位 山本耕平(コナミ) 14分54秒80
10位 平井彬嗣(明治大) 15分22秒70

<女子メートル100メートル背泳ぎ・決勝>
1位 エミリー・シーボム(オーストラリア) 58秒84
2位 ベリンド・ホッキング(オーストラリア) 59秒78
3位 ミッシー・フランクリン(米国) 1分0秒30
4位 赤瀬紗也香(日本体育大) 1分0秒65
8位 竹村幸(イトマンSS) 1分1秒88
酒井志穂(ミキハウス)、神村万里恵(セントラル成瀬)は予選落ち

<女子200メートル自由形・決勝>
1位 ケイティ・レデッキー(米国) 1分55秒74
2位 ブロンテ・バラット(オーストラリア) 1分57秒22
3位 ショーン・ヴリーランド(米国) 1分57秒38
6位 五十嵐千尋(日本体育大) 1分59秒08
8位 宮本靖子(東洋大) 1分59秒94
高野綾(イトマンSS)、山口美咲(イトマンSS)、松本弥生(ミキハウス)、渡部香生子(JSS立石)、大本里佳(イトマンSS)、内田美希(東洋大)は予選落ち

<女子200メートルバタフライ・決勝>
1位 カミーレ・アダムス(米国) 2分6秒61
2位 星奈津美(ミズノ) 2分6秒68
3位 ケイト・マクラーリン(米国) 2分7秒08
4位 中野未夢(アクシーひがし) 2分8秒54
清水咲子(日本体育大)は予選落ち

(文/杉浦泰介)