6月にフランスで開幕するFIFA女子W杯。日本女子代表(なでしこジャパン)の目標は、2大会ぶり2度目の優勝だ。

 

 

 なでしこはアルゼンチン代表(FIFAランキング37位)、スコットランド代表(同20位)、イングランド代表(同3位)らとともにグループDに入った。2位までなら文句なし。3位でも6つのグループのうち上位4つに入れば決勝トーナメントに進出することができる。

 

 目下、なでしこのFIFAランキングは7位。優勝経験もあり、グループリーグで敗退することは、まずあるまい。

 

 W杯メンバー発表記者会見の場で、監督の高倉麻子はライバルたちの印象を、こう述べた。

「アルゼンチンはランキングこそ低いが、トリッキーなプレーが多く、南米のチームらしく強引にゴールを狙ってくる。簡単に勝てる相手ではない。

 

 W杯初出場のスコットランドは未知の力がある。(レベルの高い)欧州予選を勝ち上がってきたチームだけに侮れない。

 

 イングランドは経験豊富な監督(フィリップ・ネビル)に交代したことで、優勝を狙ってくるだろう。予選の3つは慎重かつ大胆に戦っていきたい」

 

 選出された23人の代表メンバーの平均年齢は23・9歳。澤穂希や宮間あやが主力だったカナダ大会が27・7歳だから、3・8歳も若返った。

 

 前回大会の経験者はDF鮫島彩、DF宇津木瑠美、DF熊谷紗希、MF阪口夢穂、FW菅澤優衣香、FW岩渕真奈の6人。最年長は31歳の鮫島と坂口だ。

 

 また23人の中には、キャップ数が2ケタにみたない選手が8人もいる。翌年に控えた東京五輪を見据えた人選だろう。

 

 高倉はセオリーにとらわれない指揮官として知られる。「普通はメンバーを固定して戦う」との批判に対し、「普通って誰が決めたんだろう」と言ってのける鼻っ柱の強さと信念を併せ持つ。

 

 注目したいのが、この5月24日に19歳の誕生日を迎えたメンバー最年少のFW遠藤純だ。優勝を果たした昨夏のU-20W杯では、唯一高校生として代表メンバーに名を連ね、2得点5アシストと活躍した。

 

 所属するなでしこリーグの日テレ・ベレーザでは今季、8試合に出場し、4得点をあげている(16日現在)。ほとんどが途中出場ながら結果を出し続けている点に彼女の非凡さが窺える。スピードとテクニックを売り物とする決定力のあるレフティーだ。

 

 8年前のW杯制覇後、なでしこの選手たちは国民栄誉賞を受賞した。

「東日本大震災などの困難に、立ち向かう勇気を与えた」(枝野幸男官房長官・当時)。これが授賞理由だった。

 

 遠藤は被災した福島県の出身で、JFAアカデミー福島の8期生でもある。

 

 その遠藤を抜擢した高倉も福島県の出身だ。

「(遠藤の)ドリブル突破からシュートにもっていくかたちは素晴らしい。また体も大きく当たり負けしない強さもある」

 

 日本期待のインパクトプレーヤーはフランスでシンデレラになれるのか。

 

<この原稿は『サンデー毎日』2019年6月2日号を一部再構成した掲載したものです>

 


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