6月に開催されるキリンチャレンジカップ(トリニダード・トバゴ代表戦5日、エルサルバドル代表戦9日)とブラジルで15日(日本時間)から開幕するコパアメリカのメンバーがそれぞれ発表されました。キリンチャレンジカップはMF久保建英(FC東京)、GK大迫敬介(サンフレッチェ広島)、MF中山雄太(スヴォレ)の東京五輪代表候補の選手が選ばれました。コパアメリカにはこの3名を含む13名の東京五輪代表候補の選手が初招集されました。

 

 JFAは国内外クラブとの一層の関係構築を

 

 今回のメンバー選考において選手の拘束権の有無が森保一日本代表監督の頭を悩ませたのではないでしょうか。キリンチャレンジカップは国際サッカー連盟(FIFA)が指定するインターナショナルマッチウィークに行われます。そのため選手の拘束権は日本サッカー協会(JFA)にあります。一方で、コパアメリカはFIFA管轄の大会ではないためJFAに拘束権はない。加えてJリーグはコパアメリカ開催中もリーグ戦が行われます。今後もこのようなケースはあると思いますし、海外でプレーする日本人選手も増えています。JFAはさらなるJクラブや海外クラブとの関係構築とJリーグ側と日程調整などの話し合いを重ねるべきでしょうね。

 

 話の焦点をコパアメリカに当てましょう。日本はチリ、ウルグアイ、エクアドルと同じグループCです。本気の南米相手に若手中心の日本。正直、苦戦することも考えられますが、若手には期待したい。世間の注目は久保に集まっていますが、僕はMF安部裕葵(鹿島アントラーズ)がどこまで通用するか注目しています。中盤で久保やMF柴崎岳(ヘタフェ)とうまく連係しつつ、FW岡崎慎司(レスター)ら前線の選手からボールを受けチャンスを作って欲しい。彼の武器であるドリブル突破も見せて欲しいところです。何より世界のレベルを体感する絶好の機会。思い切りプレーして欲しいですね。

 

 DF立田悠悟(清水エスパルス)にも期待しています。南米のアタッカー陣を相手にどこまで間合いを詰めて、相手に仕事をさせないのか。ここが見物ですね。清水では昨年はサイドバックでの出場が多かったですが、今季は本職のセンターバックでコンスタントにリーグ戦に出場しています。191センチと上背もある貴重な戦力。彼の才能がこの大会で開花すればA代表のセンターバックの選手層は厚くなるはずです。

 

 大迫と安部はU-20代表の主力でした。現在、ポーランドでこの世代のW杯が行なわれています。アンダーカテゴリーの大会を優先すべきか、A代表を優先すべきか、という報道も一部でありましたね。僕はA代表を優先すべきだと思います。もう彼らはA代表の域に来ているから招集されたわけです。アンダーカテゴリーの代表活動も確かに大事ですが、プロである以上、2人の年齢(大迫=19歳、安部=20歳)で上のレベルに行くチャンスがあるのなら勝負しなくちゃねぇ(笑)。日本のサッカー人口はそれこそ何万何千といます。その中で日本代表になれるのはほんの一握り。プロサッカー選手で最終的にA代表を目指していて、早いうちにそれが経験できるのなら迷わずそちらを選ぶべきだというのが僕の持論です。

 

 いずれにしても、今回のコパアメリカは東京五輪に向けてのプレゼン大会みたいですね。森保監督としては「日本にはこんな若手がいまっせ!」といったところでしょう。楽しみなメンバーをどう組み合わせるのか、考えるだけでわくわくしますね。

 

 同カード3連戦……よぎる前節の場面!?

 

 Jリーグの話題も少しばかり。先日、浦和レッズが監督のオズワルト・オリベイラ氏を解任し、昨季途中に暫定的に監督を務め、今季も途中までヘッドコーチだった大槻毅氏が監督に就任しました。浦和はアジアチャンピオンズリーグ(ACL)では決勝トーナメントに駒を進めたもののリーグ戦では10年ぶりに4連敗するなどここまで5勝2分け6敗でした。JリーグとACLの2冠を目標にしていたこともあり、監督交代に踏み切ったのでしょう。大槻監督としては「まず1勝!」という感じでしょうね。本来、鹿島と浦和は上位にいてバチバチやりあって欲しい(笑)。大槻監督の采配に注目です。

 

 その浦和に勝利し、連敗を5で止めたのはサンフレッチェ広島です。リーグ序盤は好調でしたがズルズルと順位を下げ、5月30日現在で7位です。6位の鹿島は6月18日から30日の2週間で広島と3回も対戦します(18日ACL決勝トーナメン1回戦、25日同2回戦、30日リーグ戦17節)。僕も周囲の鹿島サポーターとも「今年はサンフレッチェとよく当たるねぇ」なんて話題になります(笑)。3試合中2試合はACLではありますが、ここでの対戦成績が今後のリーグ戦で勢いに乗れるかが決まるでしょうね。

 

 短期間で同じ相手と当たるのは非常にやりにくいものです。前の試合のよかった場面、やられてしまった場面がよぎるんです(笑)。プロの世界の勝ち負けはちょっとした差で決まる。それが心に残っていて試合中によぎるんです。重要なのが戦い方、ゲームコンセプトがしっかり決まっていてそれをやり続けることです。これが負けていたりすると、戦術やメンバーを変えてしまうこともある。そうすると立ち返るべきところがなくなり、少しずつズレが生じてします。広島にとっても、鹿島にとってもこの6月の3試合は年間を通じてのターニングポイントになると思います。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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