石川ミリオンスターズの神谷塁です。チームが前期優勝を争うという緊迫したゲームが続く中、自分自身も21盗塁とリーグトップの数字をマークしています。毎試合、ビリビリするような緊張感の中で野球をやる幸せを感じながら、塁に出たら思い切って行くだけだと常に意識しています。

 

 「ノルマは1試合1盗塁」

 昨シーズンは菊地悠人選手(新潟アルビレックスBC)と争い、35個タイで盗塁王のタイトルを獲得しました。今季は誰と競るとか、誰と戦うというのではなく、自分との戦いだと思っています。ノルマは1ゲームに1盗塁、リーグレコードの47盗塁を破るのはもちろん、60盗塁以上が目標です。普通の数字ではスカウトに見てもらえないので、誰にも抜けない記録を作って注目されて、NPB入りの夢を叶えたいですね。

 

 盗塁については迷うことなく、行くと決めたら行くことを心がけています。僕の場合は山出芳敬コーチ(野手総合)から盗塁するかどうかの判断を任されているので、カウント、投手のクセ、キャチャーの肩などを考えて行けるタイミングでは「ドンッ」とスタートしています。

 

 BCリーグ石川に入って3年目、課題だったバッティングも、ここ2年間の取り組みが身についてきました。ここまで3割5分という高打率を残せているのも、ずっと山出コーチのアドバイスを受けながら練習してきた成果だと思っています。体がそう大きくないのでバットが大回りしないように、内側から出して体で回転して打つ、その意識を徹底しています。

 

 投手出身の武田勝監督からは、ピッチャー目線ならではのアドバイスを多くもらってます。監督の場合はボソッとつぶやくように「ファウルを打ち続けられるとピッチャーいやだぞ」とか、「間にポトリと落ちる打球はダメージでかいんだなー」とか、あとは投手の嫌がるタイミングのとり方も教えていただきました。とにかく「フライを上げたらもったいない。転がせば何かが起きるんだから打ち上げるな。ただ、ランナーがいる場面では強く引っ張っていけ」とアドバイスされています。

 

「足にはスランプはない」という野球界の定説がありますが今の僕にはそれは無縁です。スランプのある無しではなく、BCリーグでスランプだとか疲れたとか言っていてはNPBという上のレベルでは到底、通用しませんよね。BCも前期後期を通して60試合以上を戦うので、当然、体は疲れます。でもそのためにきちんとケアをして、次の試合のための準備を怠らず、試合で全部を出し切れるようにしています。

 

 中学ではコーチ、そして高校では監督だった父(神谷義隆氏・北山高校元監督)から野球を通じてこう教えられてきました。「打っても打てなくても一喜一憂することなく、やるべきことをやる。常に周りに感謝し、道具にも愛情を持て。そして冷静に周りを見ろ」と。こうした父の言葉が、今の自分の基礎になっていると思います。父から教えられたのは野球の技術よりも「人の道」のようなことばかりでした。自分の子供ということで他のチームメイトよりも厳しくされましたが、「プロに行けるんだから」と常に励ましてくれていました。

 

 後期に向けては、チーム成績が上がるということは自分の成績もアップするということ。チームのために何ができるのかを考えれば、自分が今すべきことがわかってくる。そうやってこれからも成長していきたいですね。リードオフマンである自分の調子が落ちるとチームも苦しくなるし、夏場に向けて今まで通り全力で、そして気負うことなくプレーしていきたいです。

 

 中学、高校の同級生・平良(拳太郎・横浜DeNA)がこの前、一軍で投げていましたね。中学の同級生で野球を続けているのは僕と平良、キャプテンだった仲里正作の3人です。平良とNPBの舞台で再会するためにもこの秋のドラフトで名前を呼ばれたいですね。

 

 走塁と打撃は自信がありますが、守備に関しては決してうまくはないですが「ボール、飛んでこい!」という積極的な気持ちで守っています。石川MSのためにも、そして自分の夢のためにも、後期に向けてさらに活躍してNPB行きの切符をつかみたいと思っています。これからも応援をよろしくお願いします。

 

<神谷塁(かみや・るい)プロフィール>石川ミリオンスターズ
1995年8月7日、沖縄県出身。小学2年生で野球を始め、ポジションは主にショートとセカンドを務め、ときにはピッチャーもこなした。今帰仁(なきじん)中では軟式野球部に所属。中3時に出場した全国中学校大会で3位に入り、高校は中学時代のメンバー7人とともに地元・北山(ほくざん)高へ進学した。同級生の平良拳太郎(現横浜DeNA)をエースにしたチームで高3春の県大会で優勝、九州大会ベスト8。夏のシードを勝ち取り甲子園への期待がかかったが、夏は県大会初戦で敗退した。卒業後、那覇市に本拠を置く社会人クラブチーム、ビッグ開発ベースボールクラブに入団。NPB入りの夢を叶えるために17年、BCリーグ石川入り。18年に盗塁王のタイトルを獲得した。身長170センチ、体重62キロ。右投左打。今季も1番、2番を任されリードオフマンとして活躍。ここまで打率3割5分(リーグ8位)、21盗塁(リーグトップ)をマーク。
*データは6月9日終了時点。

 

(取材・文/SC編集部 西崎)

 


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