信濃グランセローズの田島光です。今季は開幕からの連続試合出塁記録更新ということで注目されています。開幕から数字が伸びるたびに結構、周囲の人もザワザワしていたし、話題にもなっていたので、意識しないというのは無理でした。でも、一番バッターとして起用されているので、記録云々ではなくて出塁することは大事な役割です。そういう意味では数字が伸びていっても、やることはいつもと同じでしたね。

 

 タイ記録のプレッシャー

 とは言うものの、やはりプレッシャーがかかるときもありました。特にリーグタイに並んだ試合(4日・対滋賀)は、いつもと違う感じでした。

 

 ビジター2連戦の2試合目、特に「今日で(リーグ記録に)並ぶんだな」という意識はなかったのですが、試合が始まったらレフトライナー、サードライナー、ピッチャーゴロと3打席目まで出塁なし。それで迎えた8回の最終打席、あのときは「ちょっと、ヤバいかな」と、いつもと少し違う精神状態だった気がします。空振り、空振りでツーナッシングになって、ひとつボールを選んで、その後がファウル。関係者の人たちも「どうなるんだろう」とハラハラしたと思いますが、1ボール2ストライクから3球続けてボールを見極めて、なんとかフォアボールで出塁しました。あそこだけは正直、緊張しましたね。

 

 ただ、これで43試合連続出塁でタイに並んだことでホッとしたというか、その後、6日の試合では3安打1四球で44試合出場、新記録を達成。今は記録は意識することなく、いつものように「一番バッターの仕事」をすることに集中できています。

 

 連続試合出塁記録が続いているのは、開幕当初、打率が1割台となかなかヒットが出ない中でもフォアボールを選べていたのが大きいですね。もともと選球眼には自信があったので、打つだけでなく塁に出られたのがチームにも自分にも良かったんだと思います。

 

 今季、打撃に関して意識しているのは、練習からフルスイングする、ということです。2年目の昨季まではそれは意識していなかったので、その部分が試合でもプラスになっているんだと思います。信濃に入団した17年当時、監督は本西厚博さんでした。本西さんからは「左手が下がらないように。そのまま構えたところからバットを出せ」とアドバイスされました。本西さんからは打撃面でアドバイスされることの方が多く、守備ではそんなに細かく言われた記憶はありません。ただひとつだけ「フライを追うとき、グラブを出すのが早い」とは言われました。名手で鳴らした本西さんの助言ですから、もちろん今もそれを意識して守っています。

 

 小学校1年で野球を始めて、中学時代は金沢シニアに所属。ここは僕らの前の代まで7年連続で全国大会出場の強豪なんですが、僕らが中3の代でそれが途切れてしまいました。高校時代も県大会ベスト8が最高で、センバツ21世紀枠候補に選ばれたのが一番、甲子園に近づいた瞬間でした。大学では神奈川大学野球連盟の1部でプレーして、そして進路をと考えたときに、社会人志望でしたが思うように就職先が見つからず、それでBCリーグを紹介されて進むことになりました。

 

 よくBCリーグに入った選手が試合に出ると「やはり独立リーグでもプロの球は違う」と驚くと聞きますが、僕はそうでもなかったです。もちろん「すごい!」というピッチャーは何人もいますが、でも「なんとかなる」と感じました。それよりもきつかったのが日程、スケジュールですよ。移動して試合、移動して試合という繰り返しに入団当初は地味に体力を削られました。信濃に入って3年目、今季、活躍できているのもそういう環境に慣れてきたこともあるのかな、と思っています。

 

 一番バッターとして連続出塁はとても誇れる数字なので、どこまでも伸ばしていきたいですね。ただ、目標であるNPBに行くためにはそれだけではダメだと思っています。もっとヒットを打ち、そして盗塁も稼がないと、まだまだアピールできないと思っています。

 

 後期は前期に続いて優勝が目標です。チームのためにもこれまでとかわらず、とにかく塁に出るというしぶとさを見せて頑張ります。チーム、そして田島への応援をよろしくお願いします。

 

<田島光(たじま・ひかる)プロフィール>信濃グランセローズ
1995年3月3日、神奈川県出身。小学1年生で野球を始め、逗子リトルで内野手として活躍。中学時代は横浜金沢リトルシニアに所属。高校は湘南学院(神奈川)に進学し、高2秋県ベスト8。高3春県ベスト8。高3夏県ベスト16。卒業後、神奈川工科大に進み、2年春、ベンチ入りメンバーに抜擢されるとレギュラーの座をつかみ、神奈川大学野球連盟リーグのベストナインにも選ばれた。3年春、外野手に転向。4年春、首位打者(打率.381)とベストナインに輝いた。16年秋、トライアウトを受験後、BCリーグ・信濃へ特別合格で入団。俊足とミート力の高さが評価され1年目の17年から39試合に出場(打率2割4分6厘)、翌18年はレギュラーとして起用され打率2割9分8厘。19年、開幕からトップバッターとして連続試合出塁を続け、チームの前期優勝に貢献した。7月6日、開幕から44試合連続出塁のリーグ新記録を達成。7月9日時点で記録は45まで伸びている。右投左打。身長176センチ、体重68キロ。

 

(取材・文/SC編集部・西崎)


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