(写真:優勝旗を持つ主将・太田は4年間で全日本優勝大会をすべて制した)

 全日本学生柔道優勝大会最終日が23日、東京・日本武道館で行われた。男子は東海大学が筑波大学を3-1で破り、4年連続24度目の優勝を果たした。前日の女子5人制に続き男女で学生日本一の称号を手にした。優秀選手には東海大の太田彪雅(4年)、松村颯祐(2年)、筑波大の田嶋剛希(4年)、石川竜太(4年)のほか、日本体育大学の大吉賢(3年)、国士舘大学の山下魁輝(3年)、山梨学院大学の岩田歩夢(2年)、天理大学の中野寛太(1年)、明治大学の神鳥剛(4年)、早稲田大学の空辰乃輔(3年)が選ばれた。

 

(写真:試合前に円陣を組み、心をひとつにした)

 常勝軍団は今年も優勝回数を積み上げた。2009年からの10年間はすべて決勝進出し、優勝は9回。上水研一朗監督就任以降は抜群の安定感を誇る。

 

「負けない柔道」は初戦(2回戦)から発揮された。勝ち点を与えず、決勝まで順調に勝ち進んできた。対戦相手は2年連続で筑波大。昨年は代表戦にまでもつれる接戦で、5年前には決勝で優勝をさらわれている。

 

(写真:上水監督<掲示板の左隣>。冷静沈着な指導で知られる)

 上水監督は先鋒に立川新、次鋒には清水拓実と4年生を並べた。五将は村尾三四郎(1年)を据え、中堅と三将は星野太駆(3年)と松村という重量級の選手を置いた。主将の太田は副将を任せた。これは代表戦にもつれた時のためだ。大将は準決勝で先鋒を任された後藤龍真(3年)だ。

 

 立川は73kg級の選手、相手の佐々木卓摩(3年)は100kg級だ。体格差を感じさせる内容だったが、立川は相手に勝ち点を許さなかった。引き分けで次鋒にバトンを渡した。100kg超級の清水は合わせ技一本で90kg級の田嶋に敗れたが、90kg級の村尾は1階級上の石川と引き分けた。中堅の星野は引き分け。0-1のビハインドで後半戦を迎えた。

 

(写真:勝敗をタイに戻し、スタンドの応援団にガッツポーズを見せる松村)

 前半の流れを上水監督は「最悪ではないけど厳しい流れでした。しかし後ろで取り返せるオーダーを組んだ。前は焦らないで無駄な失点をしない」という。松村が150kgを超える巨体を生かし、上野翔平(4年)に圧力をかける。上野は同じ100kg超級の選手だが、重量では松村に劣る。残り10秒で上野に3度目の指導が与えられた。松村の反則勝ちで1-1のタイとなった。指揮官は「あそこで取れたのは大きい。分岐点でしたね」と振り返る。後には大黒柱の太田が控えているからだ。

 

「自分は絶対取らなくてはいけないという気持ちでいきました」

 太田は強い思いで臨んたが、「上水先生から『冷静にいけ」と言われていたので、緊張せず冷静に戦えました」と畳の上で気負いは見られなかった。監督、部員の期待に応えた。1分16秒で大内刈りが決まり、一本勝ち。トータルスコアで2-1と逆転に成功した。

 

(写真:「準備力がある」と上水監督が評価する後藤。準決勝、決勝と大役を務めた)

 2-1で迎えた大将戦。東海大の後藤は大会前から決勝の大将戦を想定していた。「いろいろな準備をしてきた。先輩たちから『大将は厳しい場面で回ってくる』と口を酸っぱく言われてきました。稽古の時から意識してきた」と心の準備はできていたつもりだった。しかし「みんなは『リラックスしろ』と言いますが、できなかった。大きな舞台で大将という大きな仕事を任せられた。冷静にいったつもりだったのですが、そうはいられなかった」と胸の内を明かした。

 

 決勝に備えた稽古が実を結んだのは序盤だった。「身体が自然に反応した」と開始早々に隅落としで技ありを奪い、ポイントをリードした。だが「相手には失うものがなくなった」と関根聖隆(2年)の反撃を許した。指導2を与えられ、反則負けまであと指導1つとなった。後藤は優勢勝ちで東海大のV4が決まった。

 

(写真:主将の太田はポイントゲッターの役割を果たした)

 主将の太田をはじめ現4年生は全日本学生優勝大会を無敗で終えたこととなる。「(今年の大会は)自信はありましたが、プレッシャーも大きかった」。太田はいずれも決勝戦に出場し、4連覇に貢献した。上水監督は「この4年生の年代は国士舘高校がインターハイを圧勝しました。東海大の全日本学生優勝大会の連覇が途切れたのもその年(2015年)でしたので運命的なものを感じていました」と4連覇に感慨深げだった。

 

 前日は女子が5人制で久々の優勝を成し遂げた。「いけると思っていました。勝ってくれて勇気をもらった。我々も勢いに乗れました」と上水監督。太田は「男子にプレッシャーにもなりましたが、“頑張ろう”という気持ちになりました」と語り、「アベック優勝はすごいこと。東海大として自信がついた思う」と胸を張った。

 

 9月には全日本学生柔道体重別選手権大会が控える。昨年は準決勝で筑波大に敗れた。「今年は2冠を達成したい」と太田。常勝軍団は2年ぶりの団体2冠を狙う。

 

(文・写真/杉浦泰介)