明治大学体育会サッカー部に愛媛県喜多郡出身のMF曽根晃太(4年)というアタッカーが所属している。彼の長所はドリブル。曽根曰く「(他人からは)変則的なドリブルと言われます」。上半身を巧みに駆使したボディフェイントから相手DFの逆を取るのだ。

 

 

<2019年7月の原稿を再掲載しています>

 

 

 

 

 近年のサッカーでは右利きの選手を左サイドに、または左利きの選手を右サイドに配置する傾向が強い。利点はプレーヤーが中を向いてプレーできるため視野を広く確保でき、内側に切れ込んでシュートが打ちやすいからだ。テクニシャンタイプが多いため、飛び込んできた相手をひらりとかわすにも利き足と逆サイドに配置した方が逃げ場が多く、プレーしやすいのだろう。

 

 日本人選手の例を挙げると、昨年のロシアワールドカップで日本代表の左サイドのレギュラーだったMF乾貴士(レアル・ベティス)、ロシアワールドカップ以降、乾からレギュラーを奪取したMF中島翔哉(アル・ドゥハイル)である。

 

 曽根にベストポジションを訊くと「右サイドが一番やりやすい」と答えた。曽根は右利きである。利き足と同サイドならば縦に突破し、クロスを上げるのが十八番なのだろうか。曽根に「得意なプレーは?」と水を向けると「右サイドから中にカットインするのが得意です」と返ってきた。ボディフェイントを使った特異なドリブルに加え、十八番の“型”も現代サッカーの流れとは違い変則的なものだった。彼は小学校の頃からこのドリブルで自らのサッカー人生を切り拓いてきた。

 

 大学生活最後の年

 

 一方で短所もあげた。

「ラストパスの精度です。カットインは得意なので、そこから先のプレー(パス、もしくはシュート)の質にこだわっていきたいです」

 

 彼は悔しさを押し殺すように、こう付け加えた。

「この点を向上させないと明治大学のサッカー部では試合に出る機会をなかなかもらえない」

 

 明治大学体育会サッカー部はトップチームとセカンドチームに分かれて練習をする。曽根はトップチームに絡むこともあるが基本的にセカンドチームでプレーしている。4年生となった今年度はラストチャンスの年なのだ。「サッカー人生の中で大学が一番、考え込んだり、初めて挫折を味わっている」と曽根。セカンドチーム主体で臨むインディペンデンスリーグを主戦場にトップ昇格を虎視眈々と狙っている。

 

 曽根は今、サッカープレーヤーとして苦しい時期を過ごしている。そのことを聞くために彼に厳しい質問もぶつけざるを得なかった。口調こそ穏やかだったが、その目は「まだ諦めていない」と力強く鋭かった。

 

 愛媛が生んだ変則的なドリブラーにはまだレギュラー奪取のチャンスと時間は残されている。絶対的な武器をアピールしつつ、課題克服に励む。愛媛が生んだアタッカーはいかにして武器のドリブルに磨きをかけてきたのだろう――。

 

曽根晃太(そね・こうた)プロフィール>

1997年7月13日、愛媛県喜多郡出身。新谷SSS-愛媛FCジュニアユース-済美高校-明治大学。2つ上の兄の影響でサッカーをはじめる。ドリブルを武器に小学生時代から2列目のアタッカーとして頭角を現す。済美高校時代には国体愛媛県選抜に入った。2016年4月に明治大学体育会サッカー部に入部。インディペンデンスリーグと総理大臣杯を中心に戦う。大学最後の今季はレギュラー奪取を目指す。身長167センチ、体重61キロ。

 

(文・写真/大木雄貴)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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