群馬ダイヤモンドペガサスの青柳正輝です。ルーキーとして臨んだ今シーズン、いきなり前期MVPをいただけて大変嬉しく思っています。大学を卒業して地元球団の群馬に入り、最初はどこまでやれるのか不安もありました。結果を残せるかどうかも半信半疑だったので、MVPに選ばれたことはとても自信になっています。このまま勝ち続けて後期もMVPに選んでいただけるように努力していこうと思っています。

 

 西岡剛のオーラ

 BCリーグに入った当初は、自分がどこまで通用するんだろうとずっと考えていました。4月6日の埼玉武蔵ヒートベアーズ戦で3番手として9回の1イニングを投げて無失点。その翌週、16日の栃木ゴールデンブレーブス戦がBC初先発でした。

 

 この試合、いきなり先頭バッターとして対戦したのが栃木・西岡剛選手。小学生のときからプロ野球を見ていたので、当然、「あの西岡選手」なわけです。グラウンドにいるのを見ただけで「おお、なんか違うな」と思わせる雰囲気のある人でした。この西岡選手を三振にとり、僕は三振を多くとるタイプではないのですが、この日は結局、11奪三振。攻撃陣の援護にも助けられて初先発を初完封で飾ることができました。この試合に勝ったことでBCリーグでもやっていけるという自信がつき、その意味でも一番印象に残っている試合です。

 

 初めて先発してわかったのはBCリーグにはレベルの高いバッターとそうでないバッターが混在していることです。下位打線を仕留め損なうと思わぬ失点につながるので油断はできません。レベルの高いバッターとして名前をあげるならやはり西岡選手、ボールの見逃し方が他の選手とは違いました。他の選手が空振りするボール球も平然と見送るなど、これがNPBのレベルなのか、と痛感しました。ただ、グラウンドで見た西岡選手には「おおっ」と思いましたが、マウンド上で対峙したときには「きっちりと投げられれば打たれることはないな」とも感じました。実際、初対戦では三振とセンターフライでしたから、こういうレベルの高いバッターとの対戦も自分の成長の糧になっていると思います。

 

 大学4年で進路を考えていたとき、最初は社会人を目指していました。それがうまくいかずにNPB、独立リーグを視野に入れてプロ志望届を出しました。NPBのドラフトには選ばれず、大学時代から対戦したこともあり、地元ということで早くから誘われていた群馬に入ることにしました。目標はNPBからドラフト指名を受けることで、入団してから平野謙監督に「どうすればNPBにいけますか」と相談もしました。

 

 そのときに言われたのは「とにかく球速を上げろ」ということでした。僕自身のマックスは143キロですが、BCでは138キロまでしか出せていません。球速をアップするためにトレーニングや走り込みなどにも取り組んでいます。自分のピッチングスタイルはスピードはなくてもキレのあるストレートを主体にして、それで変化球をいかすのが身上です。ピッチングスタイルや変化球は今すぐでもNPBで通用すると自信がありますが、でもそれだけではアピールポイントとして弱いですよね。もし自分がスカウトだったらどうか? やっぱり球速138キロのピッチャーは指名しません。「青柳正輝」というピッチャーに注目してもらうための名刺代わりとして球速アップはマストだと思っています。

 

 群馬は攻撃陣も強力でいつも援護してもらっているし、投手陣ではトーレスという心強いサウスポーのエースがいます。間近で見て勉強にもなるし、彼からは肩周りのトレーニング方法を教えてもらいました。また前期はチームが逆転優勝に向けて盛り上がる中、先発を任されたことも多々ありました。そういう試合では「負けられない」と意気込みながらも、平常心でマウンドに上がる。そういうことも学びました。

 

 後期は、ここまで無敗できているので、どうせなら負けがつかないままシーズンを全うしたいですね。援護の期待できるバックに支えられていますから、自分で試合を壊すことのないようにしっかりと投げるのが目標です。群馬の後期優勝、そしてその先の独立リーグ日本一。自分自身のNPB入り、すべてを叶えるために後期の残り試合も頑張りますので、応援をよろしくお願いします。

 

<青柳正輝(あおやぎ・まさき)プロフィール>群馬ダイヤモンドペガサス
1996年12月11日、群馬県出身。小学校時代から野球をはじめ、ピッチャーは小5から。前橋五中時代は軟式野球部に所属し、県大会優勝、文部科学大臣杯出場などの実績を残す。伊勢崎清明高に進学し、1年夏からベンチ入り。2年時は野手兼3番手投手。3年夏はエースとして県大会決勝に進出も健大高崎に0対1で敗れて甲子園出場はならず。大東文化大学に進み、19年、BCリーグ群馬に入団。初先発初完封でその名を轟かせる。前期、無敗の9勝をあげ、MVPに輝いた。左投左打。身長173センチ・体重75キロ。

 

(取材・文/SC編集部・西崎)


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