新潟アルビレックスBCの長谷川凌太です。今季は前期開幕直後、腰の故障で出遅れ、チームに迷惑をかけました。その分、投げられるようになってからは点をとられないこと、チームに負けをつけないことを第一に考えマウンドに上がりました。入団2年目、前年の6勝を上回る11勝をマークし、内容的にもまずまずと思っています。7月には月間MVPもいただきましたが、チームを優勝に導けなかった悔しさもあり、まだまだ上を目指して頑張りたいと思っています。

 

 甲子園の残像

 昨年10月、オリックスとの交流戦で球速153キロをマークしたことは、とても自信になりました。でもNPBのドラフトでは指名されず、まだ変化球の精度やキレが足りないと実感し、オフの間に磨きをかけました。今季は試合でスライダーやフォークを軸にしてピッチングを組み立て、100%ではありませんが、思い通りにイメージした投球に近くなっています。

 

 NPBドラフトで指名漏れの後、やはり悔しい思いがありました。でも、気持ちを切り替え今の自分にできていること、そしてできていなことをすべてリストアップしました。NPBに行くためには「できていないこと」をつぶしていく必要がありますからね。その中のひとつが肩の可動域の狭さを含めて、体の硬さだったんです。そのためにオフには初動負荷トレーニングを取り入れました。

 

 その効果で可動域は昨年に比べるとアップし、体、腕をうまくつかえるようになりました。力を入れなくてもストレートで空振りをとれるようになっています。ボールの質がアップしていることも感じていますが、まだまだスピード、精度を上げていく必要があるでしょうね。NPB球団のスカウトの目にとまるように、もっともっと突き詰めていきたいと考えています。

 

 目標としてNPB行きは絶対で、しかも上位指名、複数球団競合まで考えています。それくらい思っていて初めて届く世界なのかなとイメージしています。高校時代(福井商)、甲子園に出場し、3試合に投げて2勝をあげました。でも高校卒業時には監督から「まだプロは早い」と言われ、大学(龍谷大)へ進みました。そこで、スランプというか、投げ方がまったくわからなくなってしまったんですよ。

 

 というのも甲子園でのピッチングがずっと頭に残っていたんです。高3のときに投げたフォームやボールばかりをイメージして、それで成長した体とのバランスがとれなくなっていました。そりゃそうですよね。高3のときより大学に入って筋肉量も増えていたんですから。でも、高3時を引きずりすぎ、その状態が大学3年まで続きました。ずっとNPBを目指していたんですが、4年生の春に、監督と話をして「今の状態では無理だろう」と、それで就職活動にシフト。野球は大学でやめるつもりでした。

 

 それで、最後のシーズンになるなら楽しくやって終わろう、と。その中でコーチから「もっと足を高く上げてみたらどうだ」とアドバイスをもらい、試してみたところ、これがハマったんです。イメージしていたきれいなフォームで、そして4年間で一番のボールが投げられました。球速は140キロくらいで、それが142キロ、145キロとアップしていき、4年の秋には148キロまで伸びました。

 

 148キロが出たら就職している場合じゃないですよね(笑)。それで再びNPB入りを目標にしてBCリーグの門を叩きました。入ってみて驚いたのは、BCのレベルの高さでした。いいバッターとの対戦で自分も学ぶことも数多くあり、特に昨年は村田修一さん(当時、栃木ゴールデンブレーブス所属)との対戦もあり、とても勉強になりました。

 

 BCの選手の中でも当然、レベルが他のバッターとは違い、打席の雰囲気も「さすが」という感じでした。ピッチャーとバッターの対戦はお互いに読み合うことなのですが、村田さんはなかなか読ませてくれない。たとえばフォークボールを投げても簡単には振らないし、変化球もファウルにしてくる。こちらもどうすればいいかを考えて投げなきゃいけないので、本当にいい教材でした。

 

 アマチュア時代にはそんなに考えて投げていなかったので、BCに入ってからマウンドで頭を使うようになりましたね。ボールの質も、そして投球術も成長している実感はあります。さらにまだまだ伸びしろがあると思っています。前期、後期を通じてチームが苦しいところこそピッチャーの踏ん張りどころだと思いマウンドに上がっていました。新潟・清水章夫監督からは「NPBに行きたいなら、フォームどうこうではなく持ってる力を全部出せ」と言われています。新潟の皆さんの声援にはいつも奮い立たせていただきました。秋のドラフトに向け、まだまだ自分のやるべきことをやり、そのときを待ちたいと思います。これからも応援、よろしくお願いします。

 

<長谷川凌太(はせがわ・りょうた)プロフィール>新潟アルビレックスBC
1995年11月8日、福井県出身。野球を始めたのは小学校2年生。中学時代までポジションは外野手で、名門・福井商野球部にも野手として入部した。入部後、高身長と肩の強さから投手に転向し、1年秋からベンチ入り。3年夏、甲子園出場を果たし、1回戦・帯広大谷戦で救援登板し1勝。2回戦・聖光学院戦は先発投手として9回、被安打6、自責点1で完投勝利。3回戦常総学院戦で敗退したものの3試合に投げ、11奪三振。卒業後、龍谷大に進学。ここで投球フォームに迷いが生じ、4年春までスランプに苦しむ。4年秋、フォームを改造し、球速148キロまで復活。NPBを目指し、18年、新潟アルビレックスBCに入団。1年目は32試合に登板し、6勝。10月、オリックスとの交流戦で153キロをマークし注目を集めた。2年目の今季、先発の軸としてフル回転。チームの優勝とNPBドラフトでの上位指名を目指す。右投左打。身長188センチ・体重92キロ。

 

 

(取材・文/SC編集部・西崎)


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