29日、Jリーグは都内で会見を開き、来季の「Jリーグクラブライセンス」(Jライセンス)交付の判定結果を発表した。第三者機関であるクラブライセンス交付第一審機関(FIB)が判定した今回の結果では、J1全18クラブとJ2の19クラブの計37クラブにJ1クラブライセンス、J2の2クラブおよびJ3所属の3クラブにJ2クラブライセンスが交付されることになった。すでにJ2で2位以内を確定させてJ1自動昇格の条件を満たしている湘南ベルマーレはJ1ライセンスを取得し、事実上の昇格が決定(正式決定には理事会の承認が必要)。一方、J2で現在4位のギラヴァンツ北九州は、J1ライセンスを取得していないため、条件を満たしても昇格はできない。J3のガイナーレ鳥取は資金繰りが懸念されていることを受け、停止条件付J2クラブライセンスが交付された。停止条件を解除するには10月30日までに数千万円規模(詳細金額は非公開)の資金を調達しなければならない。
(写真:会見でライセンス交付結果について説明する大河Jリーグ常務理事)
「昨年末の時点で11クラブが債務超過であり、連続赤字の名古屋も含めた12クラブが(制度違反に)抵触しそうだった。また抵触はしていなが、純資産が小さいクラブがある。どちらかというと水面下から出発しているクラブが多かった。それが今年、収支のバランスをとったり、増資、一過性の募金など、(様々な経営改善を行って)水面下を脱出できるようになったことは、それなりに評価していいと思う」
 Jリーグの大河正明常務理事は、ライセンス交付の結果を受けての感想をこう述べた。その上で、「ほとんどのクラブが普通の姿に近づいた、もしくは戻った。ここからは各クラブがどういう作戦でもって成長していくか」と今後の各クラブの取り組みに期待した。

 だが、ライセンスが交付されたといっても、まだまだ改善が必要なクラブは多い。制度では内容の重要性に応じて基準をA・B・Cの3等級に区分している。B等級基準はそれを充足していなくてもJライセンスが交付されるが、同時に制裁が科され得る。その中で、各ライセンス取得クラブのホームスタジアムにおけるトイレの数および屋根のカバー率に関するB等級基準の充足状況が下記のように発表された。

・B等級基準充足 J1ライセンス=8クラブ、J2ライセンス=2クラブ
・B等級基準未充足(制裁免除) J1ライセンス=9クラブ、J2ライセンス=1クラブ
・B等級基準未充足(制裁対象) J1ライセンス=20クラブ、J2ライセンス=3クラブ、停止条件付J2ライセンス=1

 充足条件はトイレの数が「スタジアムは1000名の観客に対し、少なくとも洋式トイレ5台、男性小便器8台を備える」、屋根は「スタジアムの屋根は、観客席の3分の1以上が覆われていなければならない」とある。ただ、トイレの数は14、15シーズンについては「60パーセントルール」(計算根拠となる観客席数を「満席」から「60パーセント入場」を母数として判定)が適用され、7クラブが制裁免除。また新スタジアム建設を着工、もしくは自治体の首長が計画している3クラブも制裁免除となった。

 制裁対象となった24クラブには以下の制裁が科される。
・トイレの数の不足のみが制裁対象=対象スタジアム名を公表、クラブはトイレの洋式化の計画または構想を14年12月31日までに提出
・屋根のカバー率不足のみが制裁対象=対象スタジアム名を公表、AFC主催大会のホームゲームが開催できない可能性があることを通知、クラブは屋根のカバー率不足への対応策または構想を14年12月31日までに提出
・トイレの数、屋根のカバー率の不足がともに制裁対象=対象スタジアム名を公表、AFC主催大会のホームゲームが開催できない可能性があることを通知、クラブは抜本的な施設改善計画を14年12月31日までに提出、15年の審査時に計画の進捗が見られない場合には戒告

 経営面では、鳥取、東京ヴェルディ、アビスパ福岡、?・ファーレン長崎に是正通達(経営上是正すべき点があるとFIBが判断したクラブに対して通達。制裁やライセンス不交付という強制力を行使するまえにクラブ自ら経営改善し、債務超過および3期連続赤字にならないよう強く指導する)が出された。

 また、ライセンスの判定結果に直接の関係はないものの、クラブに注意喚起を行っておくべき「特記事項」(J2昇格条件、財務、2015シーズンのスタジアム、B等級未充足、2015シーズンの練習場)も対象クラブに通知された。J1昇格を目指している松本山雅FCなどの9クラブには、「練習場」に関する特記事項が通知された。来年のライセンス申請時までにJ1ライセンス基準を充足する練習場(天然芝ピッチおよび併設したクラブハウス)を確保できない場合は、16シーズンのJ1ライセンスは交付されない。「財務」に関して通知された13クラブにはJリーグが随時、今期予算の進捗・来期予算の編成等についてヒアリングを行う。

「来季からは身の丈を大きくする努力をしつつ、身の丈に合った経営をしてもらいたい」
 大河常務理事は、各クラブへこのような要望を語った。今回、制度によってリーグを“追放”されるクラブは出なかった。しかし、毎年、交付されるかどうかわからないという綱渡りの状況が続けば、そのクラブの未来は明るいとは言えない。しっかり現状と向き合い、着実に成長していく。“ローマは一日にして成らず”である。

【クラブライセンス交付結果】

J1クラブライセンス=札幌、仙台、山形、鹿島、栃木、群馬、浦和、大宮、千葉、柏、F東京、東京V、川崎F、横浜FM、横浜FC、湘南、甲府、松本、新潟、富山、清水、磐田、名古屋、京都、G大阪、C大阪、神戸、岡山、広島、讃岐、徳島、愛媛、福岡、鳥栖、長崎、熊本、大分

J2クラブライセンス=水戸、町田、長野、金沢、岐阜、北九州

停止条件付J2クラブライセンス=鳥取

(文/写真・鈴木友多)