皆さん、"猛暑"御見舞申し上げます。じっとしているだけで汗だくとなるこの季節、プロ野球は終盤戦に向けて、いよいよ正念場です。私もメットライフドーム、東京ドームなどに精力的に足を運んでいます。現役選手やレジェンドとのツーショットはTwitter(@Yasutomo_76)に掲載してますので、そちらもご覧ください。さて、コラム第3回目、しばしお付き合いのほどを。

 

 オリックス、下剋上も

 前回のコラムで「巨人で決まり!」と書いたあと、原巨人が失速する場面もあり、少しだけ肝を冷やしました。巨人は7月31日から8月6日まで6連敗。あのとき炭谷銀仁朗がケガで登録抹消となり、原さんは2年目の岸田行倫を3日の横浜DeNA戦では試合途中から、そして翌4日はスタメンで起用しました。

 

 だが、3日の試合では勝ち越し点を献上するパスボール、その翌日に先発。チーム状況が悪い中で起爆剤として期待したんでしょうが、それを2年目のキャッチャーに求めるのは酷というものです。原辰徳監督は思い切った起用で知られていますが、岸田起用に関しては「どうしちゃったの」という感じでしたね。少し意地になった部分もあったんでしょうが、最初っから小林誠司を起用していれば、8月上旬のつまずきも防げたかと思います。

 

 DeNAはオールスター明けから7月末まで11勝3敗1分と好調でした。だが、ここに来て失速。これはいわゆる「勝ち疲れ」です。ペナントレースで勝ち続けると疲れるんですよ。1点差ゲームはもちろん、大差勝ちでも勝ち切るにはエネルギーが要ります。その反動が出たかたちですね。そして広島はサビエル・バティスタのドーピング騒動。大砲を欠くわけですから、痛いなんてもんじゃない。セ・リーグはやはり巨人を頭に、DeNA、広島の3球団でのポストシーズンがほぼ確定です。

 

 一方、パ・リーグはまだまだわかりません。福岡ソフトバンクが抜け出し、埼玉西武が2位ですが、3位争いはまだまだ。3位・東北楽天から最下位のオリックスまで2.5ゲーム差(21日時点)ですから、最後までどの球団が滑り込んでくるのかわからない接戦ですよ。しかも、今季のソフトバンクは投手陣も野手陣も軸を欠いた状態です。以前なら絶対的クローザーのデニス・サファテがいたこともあり、なかなかソフトバンク相手の下剋上は難しかった。でも、サファテ不在の今年は下位から勝ち上がったチームにチャンスがあります。2位・西武も投手力という面で疑問符がつくので、投手力に優れるオリックスはここから最終のまくりが炸裂するかもしれませんね。ちょっと期待しています。

 

 セ・リーグに話を戻すと、阪神の弱さが気になります。若手がなかなか育たないから仕方ありませんが、いつまでも福留孝介、糸井嘉男などのベテラン頼みでは……。ベテランでは鳥谷敬の扱いも気になります。未だに打点ゼロの状態でベンチにいる。もし矢野燿大監督がベテランということで気を使っているなら、ちょっとチームとして難しいですよね。

 

 原巨人がどうしてここまで突っ走っているかと言うと、原監督は一切、特別扱いをしていない。ベテランでも外国人選手でもほぼ特別扱いはなし。17日の阪神戦、1点リードの6回裏、ノーアウト一、二塁の場面がありました。ここで原さんは6番アレックス・ゲレーロに送りバントのサインでした。どうしてももう1点欲しい場面ですが、なかなか強打の外国人に「送れ」という指示は出せない。

 

 でも、ゲレーロは初球できっちりとバントを決めた。「なんでオレがバントなんだ」と思っていたら決められるものじゃないので、ゲレーロも原監督のことを信頼しているんでしょうね。本当、あのプレーに原巨人の強さを見た気がします。

 

 最後に旬の話題の高校野球に触れましょう。星稜高(石川)の奥川恭伸投手、彼は良いものを持ってますね。当然、投げるボールはすごいし、そして笑顔もいい。スター性を感じます。しかも準々決勝は奥川投手を温存して、17対1で大勝。星稜というチームのまとまりも感じました。「エースを休ませるために打てよ、点を取れよ」という監督の指示を、チーム一丸で実行した。エース奥川だけのチームじゃないというのを証明しました。

 

 今年は県大会におけるエース温存が話題になりました。あの騒動で気になるのはチーム全員が本当に納得しているのかどうかです。まあ外野がとやかく言うことではありませんが、甲子園を経験してプロに進んだ私はもちろん、甲子園に行けなかった選手も含めて多くのプロ野球人が「甲子園は特別」と言っています。先日、黒江透修さんとお会いした際、しみじみとこう言っていましたよ。

 

「あとひとつで甲子園に行かなかったことは年を重ねても忘れられるもんじゃないぞ。オレは鹿児島県大会の準決勝で負けて甲子園に行けなかったことが今でも悔しくてなぁ。ヤストモも還暦かぁ。還暦過ぎても甲子園のことは覚えてるだろ。ところでお前、甲子園は何回出たんだ?」
 もう80歳になる大先輩に聞かれ「4回です」とニヤリ。ちょっと嬉しかった瞬間でした。

 

 そういえば私とセンバツで戦った中村高(高知)出身の山沖之彦(元阪急など)と、今度9月14日にオリックス対楽天戦(Jスポーツ)の解説をします。試合が一方的な展開になったら、彼と対戦した甲子園のこぼれ話を披露しようと思っています。ぜひ、ご覧ください。もし接戦だったら? こぼれ話は次回のこのコラムで書くことにしましょう。では、また。

 

<鈴木康友(すずき・やすとも)プロフィール>
1959年7月6日、奈良県出身。天理高では大型ショートとして鳴らし甲子園に4度出場。早稲田大学への進学が内定していたが、77年秋のドラフトで巨人が5位指名。長嶋茂雄監督(当時)が直接、説得に乗り出し、その熱意に打たれてプロ入りを決意。5年目の82年から一軍に定着し、内野のユーティリティプレーヤーとして活躍。その後、西武、中日に移籍し、90年シーズン途中に再び西武へ。92年に現役引退。その後、西武、巨人、オリックスのコーチに就任。05年より茨城ゴールデンゴールズでコーチ、07年、BCリーグ・富山の初代監督を務めた。10年~11年は埼玉西武、12年~13年は東北楽天、14年~16年は福岡ソフトバンクでコーチ。17年、四国アイランドリーグplus徳島の野手コーチを務め、独立リーグ日本一に輝いた。同年夏、血液の難病・骨髄異形成症候群と診断され、徳島を退団後に治療に専念。臍帯血移植などを受け、経過も良好。18年秋に医師から仕事の再開を許可された。18年10月から立教新座高(埼玉)の野球部臨時コーチを務める。NPBでは選手、コーチとしてリーグ優勝14回、日本一に7度輝いている。この6月からTwitter(@Yasutomo_76)も開始した。


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