慶應義塾大学体育会ソッカー部は北京五輪サッカー日本代表の指揮を執った反町康治(松本山雅FC監督)や元日本代表FW武藤嘉紀(ニューカッスル)、溝渕雄志(松本山雅FC)らを輩出した名門だが、2017年には関東大学サッカーリーグの2部に降格してしまった。昨年は1年での1部復帰は果たせなかったものの、今季は首位(9月2日現在)を走っている。その慶應大学の攻撃を牽引しているのが今季からレギュラーに定着したFW福本拓海だ。

 

 

 

 

 

 

 

 福本は9試合で4ゴールと上々の数字を残している。彼の武器は動き出しとスピードだ。初速が速く、2、3歩で相手DFを置き去りにできる。スルーパスに反応する俊敏性も高く、相手守備網に穴をあけるのだ。

 

 サッカーではトップスピードそのものの速さより、少ない歩数でトップスピードに持っていける方が重宝される。実際、サッカーの試合中に50メートル以上を全力でダッシュする場面は、そう多くない。ことFWになると短い距離でのダッシュを繰り返し要求される。初速が速い方が実戦的なのはそのためである。

 

 福本は自分のストロングポイントをこう説明する。

「“一瞬の動きでトップスピードに乗るまでが速く、ついていけいない”とよく言われます。ボールを受ける前に相手のマークをはがすことと、パスの出し手がボールを出せる瞬間を狙って動き出すことを意識しています」

 

 今年度の初め、チームのセンターフォワードが戦線離脱したこともあり、3-4-2-1のワントップを務めていた。センターフォワードが怪我から復帰すると2列目、2シャドーと言われるポジションを与えられた。

 

 本人は「どちらのポジションも楽しいです。点を取るならゴールに近いワントップが一番ですが、シャドーも面白いですよ」と語る。だが、福本の言葉を聞いていると性格的にはストライカー向きなことが窺える。

 

「相手をだますのは楽しい。いたずらが好きなのでDFが“こんなことはやってこないだろう”ということを仕掛けたい。自分の傾向として、ボールを持っている時間が長いと、得点が取れていない気がします。中盤で受けたら、早く誰かに預けて、動き直す。シンプルなプレーを意識した方が得点は取れる気がします」

 

 点取り屋の十八番

 

 ポストプレーに入り早く味方に預け、自分はゴール近くにポジションを取る。理想はワンタッチゴールだ。「もちろん、パスの出し手にタイミングを合わせますが、“良いところに動き出すから、そこを見逃さずにパスを出してほしい”と思っています」と福本。中盤ではシンプルにボールを預け、息をひそめるようにペナルティーエリア内へとフリーランニングで侵入する。相手DFの死角に入り、味方とタイミングを合わせ、効率よくゴールを奪うのが福本の理想のかたちだ。

 

 J1で8年連続2ケタ得点を記録したFW興梠慎三(浦和レッズ)や年間2ケタ得点達成回数最多の10度を誇るFW佐藤寿人(ジェフユナイテッド市原・千葉)らゴールゲッターたちは相手DFの裏に抜け出し、ちょこんと合わせるシンプルなゴールが多い。福本の十八番と同じである。点の取り方をよくわかっているのだろう。

 

 福本は今の課題もあげた。

「守備の意識です。点が取れている時は守備も頑張れている。そこから走り切って前に出ていけている。そして良いところにボールが来る。慶應大学は守備から入る戦い方なので、もっと守備もこなせれば、と思います」

 

 前からプレスをかけ、相手のパスコースを限定し、ボールを奪う。そうすれば、素早い攻守の切り換えから、迫力を持って相手陣地に飛び込める。前線の選手は守備のスイッチを入れる役割も求められているのだ。

 

 福本は、4歳の時にサッカーを始めた。父親と2つ上の兄がサッカーを経験したことが影響している。幼稚園からサッカーチームに所属していたのだがその当時から、今のプレーの片鱗を見せていたという。彼は松山市でどのように育ってきたのだろうか。

 

(第2回につづく)

 

福本拓海(ふくもと・たくみ)プロフィール>

1997年8月3日、愛媛県松山市出身。エルピスSA-宮前SC-帝人SS-済美高校-慶應大学。2つ上の兄の影響でサッカーを始める。済美高校では1年時からトップチームの試合に出場した。2016年4月に慶應大学ソッカー部に入部。今季からレギュラーに定着。1トップ、もしくは2シャドーの位置でのプレーを得意としている。身長175センチ、体重67キロ。

 

(文・写真/大木雄貴)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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