11日、プロ野球セ・リーグのクライマックスシリーズファーストステージが開幕し、阪神(レギュラーシーズン2位)と広島(同3位)が対戦した。阪神はランディ・メッセンジャー、広島は前田健太の投げ合いでゲームは進んだ。両チーム無得点で迎えた6回裏に阪神・福留孝介のホームランで均衡が破れる。阪神はメッセンジャーが8回まで4安打無失点に抑えると、最終回は守護神・呉昇桓が締め、ゲームセット。1対0で阪神が先勝し、6年ぶりにCSで白星を挙げた。

◇ファーストステージ
 メッセンジャー、8回4安打無失点の好投(阪神1勝0敗、甲子園)
広島   0 = 000000000
阪神   1 = 00000100×
勝利投手 メッセンジャー(1勝0敗)
敗戦投手 前田(0勝1敗)
セーブ   呉昇桓(1S)
本塁打  (阪)福留1号ソロ
 鬼門突破へ向け、好発進だ。阪神が元メジャーリーガーの活躍で虎の子の1点を守り切り、広島に完封勝ちを収めた。

 2年連続で同一カードとなったセ・リーグのCSファーストステージ。昨季は初出場の広島が阪神に連勝し、ファイナルへと進んだ。今シーズンの阪神と広島はわずか0.5ゲーム差と、最終戦までもつれる白熱の2位争いを演じた。リーグ覇者・巨人への挑戦権をかけた試合は、チームの勝ち頭が先発マウンドに上がった。

 阪神の先発は今季最多勝、最多奪三振と2冠のメッセンジャーだ。MLB3球団を経て、来日5年目。長身から繰り出す球速150キロ台のストレートに加え、大きく曲がるカーブなど変化球も多彩である。今季広島との対戦成績は2勝2敗、防御率3.12だが、球場を本拠地・甲子園に限定すると2勝、防御率0.00と好相性となる。4年連続2ケタ勝利を挙げた安定感のあるメッセンジャーが中10日と休養十分での登板となった。

 対する広島は2年連続の“下剋上”を狙う。先日、今季限りでの辞任を表明した野村謙二郎監督は、なかなか固定できなかった1番に菊池涼介を起用。丸佳浩とのキクマルコンビで1、2番を形成した。ともに3割を超える打率を残した好打者にチャンスメイクを期待したのだろうが、今季は主に2番・菊池、3番・丸で戦ってきた。そこを崩すことはギャンブルにも思えた。

 立ち上がりのメッセンジャーは菊池と丸を内野ゴロに打ち取り、2アウトを奪った。しかし、ライネル・ロサリオ、ブラッド・エルドレッドの助っ人コンビに連打を浴び一、二塁のピンチを迎えた。ここはメッセンジャーが、松山竜平をファーストゴロに仕留めて、難を逃れた。

 一方の広島の先発は中4日でエースの前田。5日前のマウンドは、リーグ2位のかかっていた最終戦だった。前田はその大事な試合で敗戦投手となり、チームは3位に転落した。そういった意味でも、この試合に期するものはあるだろう。阪神のムードメーカーである1番・西岡剛を空振り三振に切って取るなど、初回をゼロで抑えた。

 初回のピンチを凌いだメッセンジャーは勢いに乗る。2回表1死から堂林翔太、石原慶幸、前田、菊池と4者連続三振を奪うなど、広島打線にスキを与えず、スコアボートにゼロを並べていった。5回表にはヒットと送りバントで、1死二塁のピンチを迎えたが、後続を切って取った。

 メッセンジャーを援護したい阪神打線は、前田から毎回ランナーを出すものの、5回まで無得点と沈黙した。「押していたのに苦しい展開」と、阪神の和田豊監督が振り返る嫌なムードを一掃したのが、もうひとりの元メジャーリーガー福留だ。

 6回裏、先頭のマット・マートンが空振り三振に倒れた後、福留は打席に立った。今季は打率2割5分3厘と、決して満足できる数字ではないが、9月以降は3割5分を超える成績で秋にかけて調子を上げてきていた。和田監督のスタメン起用も「接戦で打っている」という勝負強さを買ってのもの。その期待に見事に応えた。

 ボールカウントは3−1。打者有利の状況で「思い切っていこう」と決めていた福留は、前田の投じた150キロのストレートを弾き返した。本人が「打った瞬間、届くと思った」という打球はバックスクリーンに一直線。ボールを追いかけたセンターの丸は途中で見送るしかなかった。値千金の一発が生まれ、阪神が待望の先制点を奪った。

 リードをもらったメッセンジャーは、7回表も三者凡退に抑え、完封ペースのピッチングを見せた。しかし、8回表に制球に乱れが生じる。先頭の代打・田中広輔にストレートのフォアボールを与えてしまう。続く打者にランナーを進められ、1死二塁と一打同点のピンチ。迎えるのは1、2番のキクマルコンビ。ここまでノーヒットに抑えている2人を封じ込めた。ともにフライアウトに打ち取り、なんとか窮地を脱した。この回でメッセンジャーはお役御免。結局、菊池と丸を4タコと出塁すら許さなかった。
 
 9回表のマウンドにはセ・リーグのセーブ王が登場。来日1年目で39セーブを挙げた呉昇桓は、対広島に抜群の安定感を誇る。12試合に登板し、8セーブ。14イニングを投げて自責点ゼロだ。“石直球”と呼ばれる重くて威力のあるストレートで押すピッチングで、広島のクリーンアップのバットに空を斬らせる。ロサリオ、エルドレッド、松山を3者連続三振で、試合の幕を引いた。

 阪神はCSに過去4度出場。いずれもファーストステージで敗退している。通算成績も1勝8敗で2008年の第2戦以来、白星はなく5連敗中だった。鬼門で手にした6年ぶりの白星。リーグ2位のため、明日は勝つか引き分けるかで、ファイナル進出が決まる。