12日、プロ野球パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第2戦が行われ、オリックスが6−4で逆転勝ちを収めた。現役最後のシリーズに臨む稲葉篤紀が勝ち越し打を放つなど、7回までは日本ハムに試合の流れはあったが、1点ビハインドの8回にT−岡田が自らも「完璧」と言うほどの特大アーチで逆転。最後はセーブ王の平野佳寿が締めて逃げ切った。これで通算成績を1勝1敗となり、勝負の行方は第3戦にもちこまれた。

◇ファーストステージ第2戦
 上沢、5回までパーフェクトピッチングも実らず(オリックス1勝1敗、京セラドーム)
北海道日本ハム   4 = 200000110
オリックス     6 = 00000123×
勝利投手 馬原(1勝0敗)
敗戦投手 谷元(0勝1敗)
セーブ   平野佳(1S)
本塁打  (日)ミランダ1号ソロ
     (オ)T−岡田1号3ラン
 もう後がないオリックスが、ようやく目を覚まし、タイに戻した。7回までは初戦を取って王手をかけた日本ハムが投打ともに主導権を握る。初回に2点を奪い、投げては先発の上沢が5回まで無安打無四球のパーフェクトピッチング。さらにはオリックスが試合を振り出しに戻した後には、今季限りで引退を表明している稲葉篤紀が勝ち越し打を放ち、再び流れを引き寄せた。だが、チームを救ったのは主砲の一振りだった――。

 先制したのは日本ハムだった。初回、前日は無安打に終わった1番・西川遥輝がヒットで出塁すると、2番・中島卓也が送りバントを決め、1死二塁と先制のチャンスをつかむ。2死後、4番・中田翔が四球で歩くと、続く5番・小谷野栄一が低めの変化球をうまくすくいあげてライトへ。この打球をライトの川端崇義がグラブをかすめたものの捕ることができず、後逸する。この間に西川に続いて中田までもホームに返り、両者にとって大きな2点が入った。

 打線から大きな援護をもらった日本ハム先発の上沢は、3回を31球で無安打無四球と最高の立ち上がりを見せ、オリックス打線を完璧に封じた。

 一方、不安な立ちあがりとなったオリックスの先発ディクソンだったが、2回以降は立ち直り、2、3回を連続で3者凡退に切ってとった。4回表、2死から6番・近藤健介に二塁打を打たれ、久々にランナーを背負うも、7番・ミランダを敬遠して勝負を挑んだ8番・大引啓次を三ゴロに打ち取り、追加点を許さなかった。

 日本ハムは5回表にも先頭の9番・市川友也が二塁打を放ち、得点のチャンスをつかむ。しかし、続く西川への1球目、二塁ランナー市川が捕手からの牽制でタッチアウト。日本ハムは結局この回3人で終わり、なかなか追加点を奪えない。一方のオリックスは、ピンチを切り抜けて攻撃につなげたいところだったが、5回まではいい当たりが出るものの、日本ハムの好守備にも阻まれ、上沢から1本もヒットが打てずに攻略の糸口さえも見つからない。2回以降は両者のスコアにゼロが並び、試合は膠着状態となった。

 次の1点は絶対に与えられないオリックスは、6回表、2死から小谷野にヒットを打たれると、ディクソンから佐藤達也にスイッチした。前日の初戦、4番手としてマウンドに上がった佐藤は、2安打3四球、犠牲フライと2つの押し出しで3失点とベンチの期待に応えることができなかった。その佐藤が、近藤をショートフライに打ち取り、このピンチを切り抜ける。

 ピンチのあとにチャンスあり。その裏、5回までパーフェクトピッチングを続けてきた上沢から駿太がストレートの四球でこの試合初めて出塁する。佐藤の登板とともにマスクをかぶった9番・伊藤光が送りバントを決めて、1死二塁とした。ここでアクシデントのあった平野恵一に代わって2回から出場した原拓也が二遊間を抜けるセンター前ヒット。俊足の駿太が一気にホームへ返り、チーム初ヒットが貴重なタイムリーとなった。オリックスは一気にたたみかけたいところだったが、2番・安達了一は二ゴロに倒れて、追いつくことはできなかった。

 すると7回表、続投となった佐藤が先頭のミランダに手痛い一発を打たれ、再び2点差となった。さらに続く大引の打球を捕球した佐藤が送球の際に足を滑らせ、一塁はセーフに。結果的には内野安打となって、ランナーを許した。ここで一気に流れを引き寄せたい日本ハムは、市川が送りバントで大引を二塁に進めた。さらに西川がヒットで出塁し、1死一、三塁とチャンスを広げた。打席には前日、決勝点となるセーフティスクイズを決めた中島。オリックスのバッテリー、内野陣も警戒を強める。結局、ストレートの四球で中島を歩かせ、すべての塁が埋まった。ここで佐藤から比嘉幹貴にスイッチする。この継投が的中した。比嘉は陽岱鋼、中田と2者連続三振でピンチを切り抜けた。

 その裏、オリックスは先頭の糸井嘉男に今シリーズ初安打が出る。2死後には6番・川端が二塁打を放ち、二、三塁とチャンスを広げた。ここで日本ハムは上沢に代えてクロッタをマウンドに上げた。そのクロッタの初球、内角高めの変化球を7番・ヘルマンがレフトへ。走者一掃のタイムリー二塁打となり、オリックスが一気に同点に追いついた。

 ところが8回表、1死から近藤のボテボテのゴロをショートの安達が一塁へ悪送球。さらにボールがカメラマン席に入ったため、近藤は二塁に進んだ。このミスが日本ハムに再び流れを引き寄せることになる。続くミランダが敬遠となったところで、日本ハムは今季限りで引退を表明している稲葉篤紀を代打に送った。稲葉はこの回からマウンドに上がった馬原孝浩の外角に落ちるフォークボールにうまく合わせて、センター前へ。二塁ランナー近藤が待ち構える伊藤の左をくぐり抜けて、ホームイン。ベテランの一振りで日本ハムに貴重な勝ち越し点が入った。

 しかし、試合はまだ終わらない。その裏、1死後、原が四球を選ぶと、安達の内野ゴロの間に二塁へ。そして糸井が歩かされて2死一、二塁とした。ここで打席にはここまで無安打のT−岡田。スタンドからはこの試合一番の声援が飛んだ。T−岡田はこの回からマウンドに上がった谷元圭介の外角低めへのストレートをフルスイング。打った瞬間にそれとわかるホームランでオリックスが逆転に成功した。

 9回表、マウンドにはセーブ王の平野佳寿が上がった。平野は先頭の陽にヒットを打たれるも、中田、小谷野を2者連続で空振り三振に仕留める。そして最後は近藤を二ゴロに打ち取り、オリックスが逃げ切った。

 試合途中までは日本ハムがファイナルステージに手が届く寸前までいっていたところを、オリックスは主砲が力づくで勝利を奪い取った。明日の第3戦で勝つか、引き分けてもファイナルステージ進出が決まるオリックス。一方、日本ハムは勝つしか道がない。果たして、福岡ソフトバンクが待つヤフオクドーム行きの切符を手にするのは――。