15日、プロ野球セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージが開幕し、レギュラーシーズン1位の巨人と、同2位の阪神が対戦した。試合は阪神が初回に鳥谷敬のタイムリー、マウロ・ゴメスの一発で3点を先制する。3回に1点を加えた打線の援護を受けた先発の藤浪晋太郎は、尻上がりに調子を上げ、スコアボードにゼロを並べる。阪神は7回裏に阿部慎之助のソロで1点を返されたが、8回から3投手をつないだ継投で逃げ切った。これで通算成績を1勝1敗(巨人はレギュラーシーズン1位のアドバンテージ1勝)とした。

◇ファイナルステージ第1戦
 主砲・ゴメス、3打点の活躍(阪神1勝1敗、東京ドーム)
阪神   4 = 301000000
巨人   1 = 000000100
勝利投手 藤浪(1勝0敗)
敗戦投手 内海(0勝1敗)
セーブ   呉昇桓(1S)
本塁打  (阪)ゴメス1号2ラン
      (巨)阿部1号ソロ
 阪神が宿敵を破り、まずは勝敗をタイにした。

 リーグ3連覇中の巨人は先発マウンドに内海哲也を送った。今季は7勝9敗とふるわなかったが、昨季はファイナルステージ、日本シリーズと大事な初戦を任されている。原辰徳監督がエースとして信頼を寄せている証でもある。対する阪神は20歳の藤浪。内海とはひと回り年が違うが、高卒2年目にして先発ローテーションを任され2年連続で2ケタ勝利を挙げるなど、次代のエース候補だ。

 1回表、阪神の攻撃でいきなり試合は動く。西岡剛がレフト前ヒットで出塁。続く2番の上本博紀の打席で、阪神ベンチはバスターエンドランを仕掛ける。打者はアウトになったものの、西岡を得点圏に進めると、3番・鳥谷が内海の初球を叩いた。打球はセンターの頭を越え、走者の西岡は悠々ホームへ還ってきた。広島との2試合で一発のみの1得点と湿っていた打線から、タイムリーヒットが生まれた。

 さらに4番のゴメスが阪神ファンの待つレフトスタンドへ歓喜のアーチを描く。ゴメスは対巨人戦で打率3割7厘、6本塁打、19打点と相性が良い。巨人の本拠地・東京ドームも得意としており、データ通りの結果となった。ボールカウント1−1からの3球目、内海のチェンジアップを一閃。主砲の2ランで、阪神が初回から3点を奪った。

 いきなり3点の援護をもらった藤浪は、その裏をゼロに抑えた。しかし、1番・長野久義から6球、橋本到が6球、坂本勇人が12球、阿部に6球と計31球を投じる立ち上がり。2回も先頭のレスリー・アンダーソンにヒットを許すなど、不安定な印象を与えた。

 3回表、打線が援護射撃。先頭の上本が四球を選ぶと、鳥谷が二遊間を破るヒットで一、二塁のチャンスを作る。ここで1打席目にホームランを放っているゴメスが、今度は高めの変化球を軽打。ライト前に弾き返し、上本がホームへ還ってきた。阪神は3連打で1点を加点した。

 4点のリードが藤浪に安心感を与えたのか、徐々に調子を上げていく。コントロールは適度にバラつきながら、150キロを超えるストレートなど球威で押した。5回裏1死から3者連続で三振を奪うなど、4〜6回まで1人の出塁も許さぬ完璧な投球で無失点に抑えた。

 阪神は7回表に西岡がセンター前ヒットで出塁し、上本がバントで送った。1死二塁のチャンスを作ったが、鳥谷は見逃し三振に倒れる。ここで原監督は内海を諦め、江柄子裕樹とスイッチする。江柄子はゴメスを歩かせたものの、マット・マートンをキャッチャーへのファウルフライに打ち取った。

 チャンスを逸した阪神に、その裏、巨人打線が襲いかかる。阿部が藤浪の甘く入った変化球をライトスタンドへ叩き込む。主砲の一発で反撃の狼煙を上げ、阪神がファーストステージから続いていたポストシーズン連続イニング無失点を27でストップさせた。続くアンダーソンはセンター前ヒットで塁に出ると、村田修一と亀井善行もライト前ヒットで続いた。ノーアウト満塁で一発出れば、逆転というチャンスを作った。

 ここで原監督は、ここまでノーヒットの片岡治大に代えて、フレデリク・セペダを代打で起用。五輪やWBCなどで主砲として活躍したキューバの至宝に託した。一方、阪神ベンチは動かない。和田豊監督は藤浪に全てを託した。藤浪は「苦しい場面で信頼してもらった」と意気に感じた。「思い切って行くしかない」と、開き直った藤浪はストレートをインコースに投じた。球威に負けたセペダの打球はファーストへ。3−2−3のダブルプレーを完成させた。藤浪は2死二、三塁と続くピンチも、代打・井端弘和をファーストフライに仕留めた。打ち取った瞬間、藤浪は雄叫びを上げた。クールな藤浪にしては珍しいリアクション。本人は「普段はなかなか出ないが、今回は気合が入っていた」と振り返った。

 ここまでで藤浪はお役御免。8回は福原忍と高宮和也で3つのアウトを奪った。最終回は抑えの呉昇桓。ファーストステージで完璧な仕事を果たしているセーブ王は、この日も盤石だった。1死から村田にデッドボールを与えたものの、亀井はインハイのストレートで空振り三振の切って取る。ホセ・ロペスはショートゴロに抑えて、ゲームセット。4−1で阪神が第1戦を制した。

 阪神はファーストステージではなかなか生かせなかった先頭打者の出塁。初回からバスターエンドランを仕掛けるなど積極的に動いて、先制点を奪った。守備では7回のピンチで藤浪の続投を決断。いずれも和田監督の采配は見事だった。「東京ドームでひと暴れしていきたい」。甲子園で、そう宣言した指揮官の思惑通りの初戦となった。