(写真:8月31日からの3日間、国際大会を開催した)

 群馬県高崎市は“ソフトボールシティ”として知られている。日本女子ソフトボールリーグの強豪チームであるビックカメラ高崎BEE QUEEN、太陽誘電ソルフィーユが拠点にしているからだ。今年6月には市内の浜川運動公園内に専用球場である高崎市ソフトボール場(愛称:宇津木スタジアム)をオープンした。ここではJAPAN CUP、女子日本代表合宿などが行われている。

 

 魅力的なまちづくり

 

 高崎市ソフトボール場メイン球場の愛称は宇津木スタジアム。これは高崎市と縁のある世界ソフトボール連盟の宇津木妙子理事と女子日本代表の宇津木麗華ヘッドコーチ(HC)にちなんで名付けられた。宇津木理事はビックカメラ高崎のシニアアドバイザー、宇津木監督はビックカメラ高崎前監督である。

 

 高崎市はスポーツによる「魅力的なまちづくり」を目指しており、この新スタジアムに寄せる期待は大きい。市のスポーツ課施設整備係の西岡一也係長はこう語る。

「市内にはスポーツ施設が少ない。高崎市がより魅力的なまちになるためにはスポーツ施設の充実が不可欠ということで整備しました。今後はテニスコートも整備する予定です。高崎市には日本代表する2つのソフトボールチームがあります。その選手たちを観て、“ソフトボールをやりたい”という子どもたちも多い。宇津木スタジアムは市民利用ができ、国際大会や全国大会の開催も可能な球場になっています」

 

(写真:フィールドとスタンドが近く臨場感がある)

 ソフトボールシティ高崎へ――。こうした市の動き、気運は競技関係者も感じ取っている。ビックカメラ高崎の岩渕有美監督はこう感謝の思いを口にする。

「市長をはじめ、ソフトボールを盛り上げ、“ソフトボールシティ”と言っていただき力を貸してもらっています。高崎市の皆さんとの接点もさらに増え、サポートしていただていると感じます。市の温かさを感じていますし、すごくありがたいです」

 

 選手の受け止め方はどうか。ビックカメラ高崎、日本代表の主砲・山本優は「いろいろなところでソフトボールのポスターを見かけます。市も市民の皆さんも昔から応援してくれていますが、ここ数年はさらに力を入れていただいていると感じます」と実感を述べた。

 

 リーグではビックカメラ高崎と覇権を争う太陽誘電だが、球場を離れれば味方同士だ。山路典子監督は「まちがすごく盛り上げてくれているので、私たちもできる限りのことは協力したいです」と、ライバルチームと共同歩調をとる。

 

(写真:電光掲示板には選手紹介なども映し出された)

 ソフトボールシティの象徴が、高崎市が約14億円かけて建設した高崎市ソフトボール場。本塁から外野フェンスの距離は男女の国際大会規格の76.2m。グラウンドは全面人工芝が敷かれ、LEDのナイター照明、スコアボード、雨天練習場を備えている。スタンドは約800席。仮設スタンドを設置すれば、観客席は計2000席になる。また外野芝生席を開放した際には、それ以上の集客が見込める。

 

 東京五輪“予行練習”の場

 

 高崎市ソフトボール場で8月30日からの3日間行われたJAPAN CUPには多くの観客が詰め掛けた。最終日の決勝戦は、日本とアメリカの対戦となり、約2500人の観客で埋まった。惜しくも2-3で敗れたものの、観客たちは世界トップレベルのプレーに酔いしれた。

 

(写真:一、三塁側に約600席ずつの仮設スタンド)

 球場に対する評価はどうか。ビックカメラ高崎、日本代表で正捕手を務める我妻悠香は「本番(東京五輪)のことを考え、ここで練習できるのはすごくいい環境です。スタンドからも近く、応援が力になります」と語った。

 

 JAPAN CUPに出場した日本代表外野のレギュラー格・山崎早紀(トヨタ自動車レッドテリアーズ)も「本番と同じような環境でプレーできたのは良かったです」と笑顔で話し、こう続けた。「いつもと違う雰囲気でできたことも“オリンピックもこういう感じなのかな”と少し想像できました」

 

 言うまでもなくスタンドからの声援は選手たちを後押しする。JAPAN CUPで好守を披露した一、二塁間も好影響があったことを認めた。「プレーしていてすごく楽しかった」と語るのはセカンドの川畑瞳(デンソーブライトペガサス)。ファーストの内藤実穂(ビックカメラ高崎)は「応援団の声が力になりました」と語気を強めた。

 

(写真:東京五輪会場と同じ全面人工芝のグラウンド)

 好守をアシストしたのはスタンドからのサポートだけではない。全面人工芝は天然芝や土と比べ、イレギュラーが少ないと言われる。内藤も「イレギュラーはあまりなく速い打球が多い。そこに対応していけば守りやすい」と証言する。1年後に行われる東京五輪の会場は、福島あづま球場と横浜スタジアムだ。いずれも人工芝の球場である。JAPAN CUPは選手たちにとっても“いい予行練習”になったはずだ。

 

 国際大会の熱狂が去り、日本女子ソフトボールリーグは後半戦がスタートした。第7節の高崎大会は高崎市ソフトボール場が会場となる。1日目はビックカメラ高崎vs.日立サンディーバ、太陽誘電vs.NECプラットフォームズRed Falcons。2日目はNECvs.日立、太陽誘電vs.ビックカメラ高崎というカードだ。

 

(写真:JAPAN CUPでケガからの実戦復帰を果たした上野)

 第6節で自身6度目のノーヒットノーランを達成したビックカメラ高崎の上野由岐子は、来年の東京五輪に向けてピッチを上げてきている。太陽誘電は投打の二刀流・藤田倭と尾﨑望良がチームを牽引する。日立は“女イチロー”と呼ばれるヒットメーカー山田恵理を擁する。ソフトボールシティは“実りの秋”を迎える。

 

 BS11では今シーズンも日本女子ソフトボールリーグを中継します。第7節(ビックカメラ高崎BEE QUEENvs.日立サンディーバ)は9月22日(日)19時にオンエア。日本代表選手を揃える両チームの好ゲームをお楽しみください!


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