ボクシングのWBC世界バンタム級タイトルマッチが22日、東京・代々木第二体育館で行われ、王者の山中慎介(帝拳)が3−0の判定で挑戦者の同級1位スリヤン・ソールンビサイ(タイ)を下し、7度目の防衛に成功した。山中は序盤、積極的に攻めてきたスリヤンに手こずる。だが、徐々にペースをつかみ、7Rから3ラウンド連続でダウンを奪い、主導権を握った。結果的には元WBA世界ライトフライ級の具志堅用高と並ぶ日本人タイ記録の世界戦6連続KO勝利こそならなかったものの、元WBC世界スーパーフライ級王者のスリヤンに4〜8ポイント差をつけて快勝した。
(写真:8R、左ストレートで豪快に倒す)
 倒し切れなかったとはいえ、“神の左”が3度も炸裂した。
 スリヤンは2階級制覇を狙う指名挑戦者。山中対策は十分に練っていた。上体を低くして距離を詰め、ノーモーション気味の右を積極的に繰り出す。

 挑戦者のパンチを「威力は感じなかった」と王者は振り返ったが、のけぞる場面も目立ち、先手をとることができない。とはいえ、山中に焦りは全くなかった。

「まずはパンチを外すことを考えて、ジャブを多めに打とうと思った」
 徐々にスリヤンの動きを見極め、右ジャブから左を打つタイミングを図る。4Rあたりからは左がヒットする場面が増えてきた。

 はっきりと山中ペースになったのは7Rだ。カウンターの左フックがついに相手のこめかみをとらえ、腰砕けとなる。場内はヒートアップし、試合は一気に決着の様相を呈してきた。
(写真:7Rのダウンシーン)

 ただ、山中は「本能がそうさせた」と、ニュートラルコーナーから今にも飛びかからん勢いでリング中央に出てしまい、レフェリーから注意される一幕も。その間、カウントもストップし、ラウンドが終了する。スリヤンはゴングに救われたかたちとなった。

 それでも8R、今度は連打で挑戦者の足を止め、右アッパーから左ストレートにつなげて仰向けに倒す。9Rには左ボディでストマックをえぐり、ヒザをつかせた。

 しかし、スリヤンは過去KO負けが1度もないタフなファイターだ。簡単にトドメを刺させてくれない。
「おでこしか当てる隙間がなかった。打ち終わりのテンプルには当たったが、アゴには当てさせてくれなかった」
 そう王者が語ったように、ダウンのダメージや試合終盤の疲れをものともせず、頭を下げ、最後まで前に出て一発逆転を狙い続けた。

 結果は判定にもつれこみ、「相性的には悪い相手だった」と山中はやりにくかったことを認めた。一方で、「3度ダウンをとれたことは自信になった」と手応えも口にする。試合後のリングでは「バンタム級最強を示す統一戦をしたい」と宣言した。

 所属ジムの浜田剛史代表は「山中は相手が強ければ強いほど燃える」と評する。王者同士の激突で、どれほどの強さをリング上で表現するのか。難敵を退け、その資格は得た。