WBC世界ライトフライ級王者の井上尚弥(大橋)は6日、現在保持しているベルトを返上し、12月30日に東京体育館でオマール・ナルバエス(アルゼンチン)が持つWBO世界スーパーフライ級王座に挑戦することを表明した。勝てばプロ8戦目での2階級制覇を成し遂げ、井岡一翔の11戦を抜き、日本人最速記録となる。ナルバエスは同級王座を11度も防衛している絶対王者。井上は階級を一気に2つ上げ、いきなり強敵に挑む。大橋ジム内で会見を開いた井上は「チャンピオンをKOするつもりで臨みたい」と決意を語った。
(写真:弟の拓真(右)とともにナルバエス兄弟と激突する)
 飛び級での世界戦、しかも拳を交える相手はスーパーチャンピオンだ。
 ナルバエスは39歳のサウスポー。井上がまだ9歳だった2002年にWBO世界フライ級王座を獲得し、以降、16度に渡って防衛を果たした。さらに10年には階級を上げてスーパーフライ級王者に。こちらは4年もの間、11回ベルトを守り続けている。戦績は46戦43勝(23KO)1敗2分。唯一、黒星を喫した相手は現在5階級制覇を達成しているノニト・ドネア(フィリピン)で、判定まで持ち込んでいる。

 当初、ジムの大橋秀行会長は1階級上のフライ級での世界挑戦を模索していたが、その過程でスーパーフライ級のナルバエスの名前が浮上。本人に打診をしたところ、「ナルバエスとやりたい」とメールで返信があり、ビッグマッチが実現した。

「スーパーフライ級で一番強いチャンピオン。どうせやるなら強いチャンピオンとやりたかった」
 井上自身、決断に迷いはなかった。ライトフライ級では9キロ以上の減量が求められ、本人も「試合どころじゃなかった」と明かす。2階級上げると減量は6キロほどと苦しみは軽減される。「スーパーフライ級で試合をしたことはないが適性階級だと思っている」と井上が語れば、父の真吾トレーナーも「スーパーフライ級であればMAXのパワーが出せる。僕も楽しみ」と2階級上での戦いを前向きにとらえている。

 ナルバエスは井上が評したように「鉄壁のディフェンス」が強みだ。「ガードが堅いので、スピードでコントロールしてスキを突いていきたい」と既に勝利へのイメージは頭の中でできている。

 来週からは早速、元WBC世界フライ級王者でサウスポーのマルコム・ツニャカオ(真正)と1週間のスパーリングを実施。さらにフィリピンから2人のサウスポーを招いてトレーニングを行う予定で、十分な対策を練って年末の決戦を迎える。

 また、同日は弟の拓真が、ナルバエスの弟であるネストールとノンタイトルマッチを行うことも決まり、兄弟対決が実現する。さらには9月にローマン・ゴンサレスと激闘の末、敗れた前WBC世界フライ級王者・八重樫東(大橋)の試合も組まれる見込みだ。翌12月31日にはWBA世界スーパーフェザー級王者・内山高志の9度目の防衛戦、WBA世界スーパーフライ級王者・河野公平の初防衛戦、WBA世界ライトフライ級で田口良一の世界初挑戦と、ワタナベジム所属の3選手がタイトルマッチのリングに上がる。例年以上に、ボクシングが熱い年末となりそうだ。