29日、日本シリーズ第4戦が行なわれ、ソフトバンクが延長戦の末に、中村晃の3ランでサヨナラ勝ちを収めた。4回以降、両者ともにランナーを出しながらも得点を奪うことができず、試合は今シリーズ初の延長戦へともちこまれた。10回表、1死一、三塁のピンチにダブルプレーで凌いだソフトバンクはその裏、相手のミスから生まれたチャンスに中村の一振りで決めた。通算3勝1敗としたソフトバンクは、明日の第5戦に勝てば、3年ぶりの日本一を達成する。一方の阪神は1敗もできない崖っぷちに立たされた。

◇第4戦
 中村、劇的サヨナラ3ラン(ソフトバンク3勝1敗、ヤフオクドーム)
阪神          2 = 0020000000
福岡ソフトバンク   5 = 2000000003× (延長10回)
勝利投手 サファテ(1勝0敗1S)
敗戦投手 安藤(0勝1敗)
本塁打  (ソ)中村1号3ラン
 勝てば3年ぶりの日本一に王手がかかるソフトバンクと、2勝2敗のタイとして、甲子園に戻りたい阪神。両者にとって大事な一戦となった第4戦は、両先発投手が不安な立ち上がりとなった。

ソフトバンクの先発、中田賢一は2死からいきなり制球が乱れ、3番・鳥谷敬を四球で出すと、4番・ゴメス、5番・マートンに対しては連続でのストレートの四球で満塁としてしまう。しかし、このチャンスに日本シリーズ9打数1安打と不調が続く福留孝介は、ヒザ元に落ちるフォークをハーフスイング。空振り三振に倒れた。

 その裏、今度はソフトバンク打線が阪神の先発、岩田稔の立ち上がりを攻めた。1番・柳田悠岐が二塁打を放つと、2番・明石健志は送りバント。これを岩田が二塁へ送球するもセーフに。フィルダースチョイスとなって一、三塁。さらに3番・内川聖一は四球を選び、無死満塁と絶好のチャンスをつかむ。4番・李大浩は空振り三振に倒れるも、前日までスランプに陥っていた5番・松田宣浩のバットから久々に快音が聞かれ、レフト前ヒット。2走者が返るタイムリーとなり、ソフトバンクは3戦連続で初回に先取点を挙げる。

 味方から大きな援護をもらった中田は、2回表は3人できっちりと抑える。しかし、修正し切れてはいなかった。3回表、中田は1死から3者連続で四球を出したのだ。再びチャンス到来の阪神はこれをモノにした。まずはマートンの犠牲フライで1点を返すと、さらに福留にもタイムリーが出て、同点に追いついた。

 4回表、ソフトバンクが動く。1本もヒットを打たれていないながらも、制球が定まらず、不安定なピッチングが続いた中田を早々と諦め、2番手に東浜巨をマウンドに上げた。さらにレギュラーシーズンから全試合で4番に座り、打線の柱となっていた李が右手首を痛めてベンチに下がる。この2つの交代がどう影響するのか。

 大事なところでマウンドを任された東浜だったが、先頭の7番・関本賢太郎を四球で出してしまう。続く8番・藤井彰人には送りバントを決められ、1死二塁とした。しかし、ここは東浜が踏ん張る。大和をショートゴロに打ち取ると、1番・西岡剛のファウルフライをレフト内川がフェンス際でキャッチする好守を見せ、なんとかピンチを凌いだ。

 試合は2−2のままこう着状態となる。東浜、岩田の両投手がランナーを出しても得点を許さない粘りのピッチングを見せ、スコアにはゼロが並んだ。

 7回裏、ソフトバンクは先頭の8番・細川亨が二塁打を放ち、初回以来となる無死からのランナーを出した。柳田はセカンドゴロに倒れるも、この間に細川が三進する。明石はピッチャーゴロに倒れ、打席には絶好調の内川。ここでバッテリーは内川を敬遠し、李に代わって途中出場の本多雄一との勝負を選択した。8月に指を骨折して以降、一軍での試合は初打席となる本多を、岩田が空振り三振に切ってとり、ここも追加点を許さなかった。

 結局、両者ともに得点を奪うことができず、試合は延長戦へともちこまれた。10回表、この回から5番手としてマウンドに上がったサファテから、阪神が1死一、三塁と勝ち越しのチャンスをつくった。しかし、ゴメスがサードゴロ。5−4−3のダブルプレーに、ソフトバンクファンで埋まるスタンドからは大歓声が沸き起こった。

 ピンチのあとにチャンスあり――その裏、ソフトバンクは先頭の明石が四球で出塁すると、1死後、本多の打球をキャッチャー藤井が二塁へ送球するも、これがセーフとなる。フィルダースチョイスとなって、1死一、二塁。この試合絶対に負けられない阪神は、ここで守護神・呉昇桓が登場した。呉は松田をセカンドフライに打ち取って2死とした。打席にはこの試合1打席目でようやくヒットを打ったものの、打率1割台と不調に陥っていた中村。その中村がストレートで押し続ける呉の5球目、内角高めのストレートを振り抜くと、打球はライトスタンドへ。ポール際ぎりぎりに入るサヨナラ3ランとなり、ソフトバンクが劇的な勝利を収めた。これでソフトバンクが通算3勝1敗として、3年ぶりの頂点へ王手をかけた。