30日、日本シリーズ第5戦が行なわれ、ソフトバンクが松田宣浩が挙げた1点を守り切って、3年ぶり6度目となる日本一を達成した。お互いにランナーを出しながらも、あと1本が出ず、ゼロ行進が続いた。しかし8回裏、松田のタイムリーでソフトバンクが待望の先取点を挙げる。結局、これが決勝点となり、逃げ切ったソフトバンクが4連勝で優勝を決めた。

◇第5戦
 松田、価千金の決勝打(ソフトバンク4勝1敗、ヤフオクドーム)
阪神          0 = 000000000
福岡ソフトバンク   1 = 00000001×
勝利投手 五十嵐(1勝0敗)
敗戦投手 メッセンジャー(1勝1敗)
セーブ   サファテ(1勝0敗2S)
 今日勝って、秋山幸二監督にとって最後の本拠地で胴上げをしたいソフトバンク。一方、勝って甲子園に戻りたい阪神。そんな両者の対戦は、ともにホームが遠い試合となった。

 序盤、流れは阪神にあった。第2戦以降、元気がない打線に活気を取り戻そうと、起爆剤として1番に起用されたマートンだったが、サードゴロに倒れる。しかし、2番・上本博紀がヒットで出塁し、先制のチャンス到来かと思われたが、後続が続かず、得点することができなかった。2回表も1死から6番・西岡剛が二塁打を放ったが、ここも後続が続かない。7番・関本賢太郎は空振り三振、8番・藤井彰人はショートゴロに倒れた。

 3回表には機動力を使おうとするも、マートン、上本と立て続けに盗塁を失敗し、ランナーを返すことができなかった。

 一方、ソフトバンクは阪神の先発メッセンジャーの前に2回まで無安打に終わる。しかし3回裏、2つの内野安打で2死一、三塁とすると、メッセンジャーの暴投で二、三塁とチャンスを広げた。だが、2番・明石健志がセンターフライに倒れ、無得点に終わった。

 4回表、阪神の攻撃を、2三振を含む3者凡退に切ってとり、尻上がりに調子を上げるソフトバンクの先発、摂津正。一方、メッセンジャーは4回以降、再三ランナーをスコアリングポジションに背負うも、なんとかしのいで得点を許さない。終盤までゼロ行進が続き、前日に続いての延長戦へともつれるかと思われた。

 そんな中、均衡が破れる。8回裏、先頭の1番・柳田悠岐がヒットで出塁すると、明石が送りバントを決めて1死二塁。さらに3番・内川聖一もヒットでつなぎ、一、三塁とチャンスを広げた。4番・李大浩は空振り三振に倒れるも、前日の第4戦に先制の2点タイムリーを放った5番・松田宣浩が粘った末の8球目、ど真ん中に来たストレートをセンター前へ。三塁ランナー柳田が返り、ソフトバンクに待望の先取点が入った。

 なおも2死一、三塁。ここで阪神は力投を続けてきたメッセンジャーから、呉昇桓にスイッチした。呉は6番・中村晃をセカンドフライに打ち取り、なんとか最少失点で最終回の攻撃に入った。

 選手会長の一振りで流れを引き寄せたソフトバンクは、9回表、サファテをマウンドに送った。ところが、そのサファテがストライクが入らない。先頭の上本をストレートの四球で出してしまう。しかし、今度は一転、鳥谷を3球三振で仕留めた。これで1死。だが、サファテは再びストレートの四球で4番・ゴメスを出すと、続く5番・福留孝介にも粘られた末に四球で出し、1死満塁と一打逆転のピンチを招いた。

 打席には、この日2安打と当たっている西岡。その西岡に対してもサファテはボールが2球続く。3球目、西岡は見逃せばボールの高めのストレートを振りにいってファウル。4球目も外れて、カウントは3ボールとなる。そして5球目、真ん中高めに入るストレートを西岡が強振する。しかし、打球はボテボテのファーストゴロ。これをファースト明石がまずはホームへ送球し、三塁ランナーを刺して2死。そしてキャッチャー細川がすぐさまファーストへ送球するも、このボールが一塁へ走る西岡に当たり、ファウルグラウンドへと弾かれた。その間に二塁ランナー、ゴメスの代走・田上健一がホームへ返った。

 一瞬、阪神が同点に追いついたかと思われた矢先、球審が西岡にアウトのコールをしてゲームセットとなった。実は西岡は一本間に指定されているスリーフットラインよりも内側を走っており、守備妨害をとられたのだ。予想外の幕切れに、茫然とする阪神側をよそ目に、ソフトバンクは喜びを爆発させた。

 本拠地で10度宙を舞い、6年間の監督生活の有終の美を飾った秋山幸二監督は「選手たちが最後まで諦めずに1年間戦ってくれて、日本一になれたことを感謝したい。6年間、自分では精一杯やってきた。最後に日本一になれて、こんなに嬉しいことはない。これからも強いソフトバンクであり続けてほしい」と最後のメッセージを送った。

 MVPには第2、3戦でチームを勝利に呼び込む先制打を放った内川が輝いた。