7日、全日本スキー連盟(SAJ)は都内で会見を開き、男子ジャンプの葛西紀明(土屋ホーム)、男子ノルディック複合の渡部暁斗(北野建設)のソチ五輪メダリストの2人が出席し、2014-15シーズンに向けた抱負を語った。42歳の葛西は「まずはW杯の最年長Vを塗り替えたい。2月の世界選手権(ドイツ・リーベン)では、まだ持っていないメダル(個人で銀以上)を目指して頑張りたい」と、昨シーズン自らが樹立したW杯の最年長優勝記録(41歳7カ月)の更新などを目標に掲げた。W杯はアルペン競技は既にスタートしており、男子ジャンプが22日(ドイツ・クリンゲンタール)、男子ノルディック複合が29日(フィンランド・ルカ)に開幕する。
(写真:この日、発表された新公式ユニホームを纏った葛西)
 4年後の平昌五輪へ、新シーズンが「始動」する。今年のソチ五輪では7個(銀4、銅3)のメダルを獲得した全日本スキーチーム。日本選手団の国外開催における冬季五輪史上最多のメダル獲得数(8)に貢献した。

 五輪後は講演、イベントなどに引っ張りだこだったのが、葛西だ。多忙を極めた分、ここまでの調整は決して万全ではなかった。本人によれば、いつもより半分の練習量しか積めていないという。ベスト体重よりも2キロほどオーバー。経験豊富な葛西だが、これほどのトレーニング量でW杯を臨むのは「全くなかった」ことである。不安を抱えながら、新シーズンを迎えることになる。
(写真:東京運動記者クラブ・スキー分科会から「スノーリート賞」が表彰された)

 その一方で、葛西は未知のシーズンに期待感も持っている。「ジャンプ自体は、夏に飛んだ感じではそんなに落ちていない。昨シーズンのいいジャンプが体にまだ残っているし、そんなに一気に悪くはならないと思っています」。昨シーズンのW杯は6度の表彰台に上がり、ほとんどの試合で10位以内という安定したパフォーマンスを披露した。長年磨いた技術は、そう簡単には錆びないとの自負もあるのだろう。今シーズン、コンディションが悪い中でも結果を残すことができれば、更なる自信を手にするはずだ。

 ノルディック複合の渡部は、昨シーズンのW杯は総合3位につけ、ソチ五輪の個人ノーマルヒルで20年ぶりの銀メダルを獲得した。「オリンピックは、ある意味完成型でした。僕があの時にできるパフォーマンスとしては最大のものだった。ただ、それが今後通用していくというわけでもないと思うんです」。渡部が目指すものは、さらに上のレベルである。現在は「もう1レベル上げたい」と、主にジャンプの強化に取り組んでいる。「ジャンプの人たちと練習して盗めるものは盗もうと。かなりいい感じで仕上がっていて、シーズンが楽しみです」と手応えを掴んでいる。
(写真:独学のヨガを取り入れ、柔軟性も増した渡部)

 こちらは29日にW杯が開幕するが、渡部の最大の目標は、2月の世界選手権での金メダルに置いている。前回の大会では3種目で4位という結果に終わっている。渡部は「目の前でメダルを逃している。リベンジという言い方がふさわしいかは、わかりませんが金メダルは最大で4個獲れる。できるだけ多くの金メダルをとって帰ってこれたらなと思っています」と抱負を述べた。

 葛西と渡部は、ともにこのオフに結婚した。葛西が「サポートしてもらえるので、非常に助かっています。特に僕は減量したりするので、食事の面で支えてもらっている」と、その存在に感謝すれば、渡部は「ただ紙を出しただけなんですが、少し責任感が生まれたというか。気持ちが引き締まるような感じです」と精神面での変化を口にした。人生の伴侶を手にしたジャンプ、ノルディック複合の両エース。充実したシーズンを終え、再び戦いの旅に出る。

(文・写真/杉浦泰介)