8日、IIHF女子アイスホッケー世界選手権トップディビジョン予選第1戦が新横浜スケートセンターで行われ、世界ランキング8位の日本代表が同9位のチェコ代表と対戦した。日本は第2ピリオドにFW寺島奈穂(Daishin)のゴールで先制すると、第3ピリオドにはDF小池詩織(三星ダイトーペリグリン)が決め、リードを広げた。守ってはGK藤本那菜(ボルテックス札幌)を中心に体を張って、チェコの反撃を封じ、2−0のシャットアウト勝ち。先勝した日本は、世界選手権トップディビジョン(3月、スウェーデン)での出場へ、あと1勝とした。
(写真:初陣を勝利で飾った藤沢監督。チームの出来は「60点」)

◇第1戦
 守護神・藤本、28セーブで完封に貢献(新横浜)
日本代表 2−0 チェコ代表
【得点】
[日] 寺島奈穂(27分6秒)、小池詩織(53分54秒)
 スマイルジャパンの再出発は、まずまずのスタートを切った。全敗で終わったソチ五輪後、飯塚祐司監督が退任。藤沢悌史アシスタントコーチが昇格し、新体制となった。メンバーは五輪本大会からベテランのGK中奥梓、DF近藤陽子ら4名が代表を引退し、6人が加わった。新チーム最初の国際大会は、世界選手権トップディビジョン出場をかけた一戦だ。

 対戦相手のチェコは、日本よりランキング下位だが、決して容易く勝てるチームではない。今年のディビジョン1A(2部相当)で優勝しており、日本は1年前の同じリンクで4−5の逆転負けを喫している。

 立ち上がりは、藤沢監督が「自分たちのペースを掴めなかった」と語るように、苦しい展開となった。体格で勝るチェコの圧力に押され、競り負けるシーンが目立った。初戦というプレッシャーの硬さからかターンオーバーもあり、自陣で我慢する時間が続いた。

 3分53秒にはFW久保英恵(SEIBUプリンセスラビッツ)がペナルティーで一時退場。1人少ないキルプレーの強いられた。劣勢の中、冷静沈着なプレーでチームを支えたのがGKの藤本だ。ソチ五輪でもゴールマウスを守った25歳。「自分の仕事はゴールを守ること」と安定したセービングでチェコにゴールを割らせなかった。キャプテンのFW大澤ちほ(三星ダイトーペリグリン)は「那菜さんに助けられた」と頭を下げた。守護神の活躍により、第1ピリオドはスコアレスで終了した。
(写真:日本のゲームベストプレーヤーに選出された藤本)

 第2ピリオドに入ると、藤沢監督に「とにかくスケートをしよう」と送り出された選手たちは、徐々にエンジンがかかっていく。スピーディーなスケーティングで、パックをチェイスし、相手にもプレッシャーをかけた。すると、次第に主導権は日本へ。6分には立て続けにチャンスを作り、ゴールの期待感を漂わせた。

 7分、ついに均衡が破れた。左サイドの高い位置でFW浮田留衣(Daishin)がパックを奪うと、中央フリーで待っていた寺島にパスを送る。「攻め込まれる時間が長くて、みんなで我慢して我慢してフリーのチャンスが来た」という寺島。1年前はヒザをケガもあり、出場機会も少なかった。ソチ五輪の最終メンバーからも漏れ、悔しい思いをした。「“絶対結果を残す”と強い気持ちでここに来ました」。仲間がつないだ絶好のチャンスを逃すわけにはいかない。寺島のシュートはうまくパックをミートしなかったが、GKの股下を抜いた。待望の先制点が日本に入った。

 リードを奪った日本だが、ピリオド中盤以降は幾つかピンチを招いた。ここでも藤本が好セーブを連発し、ディフェンス陣も体を張ってゴールを守り抜いた。最終ピリオドに入ると、FW床秦留可(SEIBUプリンセスラビッツ)がチャンスを作る。5分に寺島、8分にはFW米山知奈(三星ダイトーペリグリン)にいずれも右サイドからゴール前に決定的なパスを送った。いずれも枠をとらえられなかったが、背番号14の17歳の存在感は際立った。

 11分にはチェコにゴール前で立て続けにシュートを打たれるが、藤本が連続セーブ。自陣で犯した味方のミスが招いたピンチにも身を挺してパックを弾いた。「いい守りができれば点を獲ってくれる」。チームメイトを信じて、藤本は耐えた。

 その期待に応えたのが13分。1人多いパワープレーのチャンスを確実に生かした。FW平野由佳(AIKストックホルム)、久保とつないだパックを受けた小池が、ゴールから遠い位置で「とりあえず思い切り打とうと思った」と、スティックを一閃。ディフェンスが死角になったのか、相手GKはパックに触れることすらできずゴールに吸い込まれた。2点のリードを奪った日本は、最後までチェコの反撃を許さず完封勝ちを収めた。
(写真:得点者の小池の元に集まり、歓喜の輪)

 4年後の平昌五輪出場を決めるために世界ランキング上位をキープしておきたい。2016年の世界選手権終了時点で、開催国の韓国を除く上位5カ国が無条件で五輪の切符を手にし、6位以下は予選に回る。日本にとって世界選手権トップディビジョンに残ることは、ポイント獲得のためにも重要である。世界ランキング上位を目指すのなら、この試合は通過点に過ぎない。明日も勝利し、一気に先へと進みたい。

(文・写真/杉浦泰介)