18日、キリンチャレンジカップ2014が大阪・ヤンマースタジアム長居で行われ、日本代表はオーストラリア代表に2−1で勝利した。日本は序盤、オーストラリアにボールを支配して押し込まれたものの、GK川島永嗣の好守もあって無失点でしのいだ。するとシステム変更を機にチャンスをつくりだし、押し気味の展開で試合を折り返した。すると後半15分、MF今野泰幸のゴールで先制。23分にはFW岡崎慎司の得点でリードを広げた。アディショナルタイムに入り、FWティム・ケーヒルに1点を返されたが、そのまま逃げ切って年内最終戦を白星で飾った。

 岡崎、代表通算40ゴール目(長居)
日本代表 2−1 オーストラリア代表
【得点】
[日本] 今野泰幸(60分)、岡崎慎司(68分)
[豪州] ティム・ケイヒル(90分+2)
 指揮官の効果的な采配が勝利を手繰り寄せた。ハビエル・アギーレ体制初となるアジアの国との対戦。日本は前半中盤までオーストラリアに主導権を握られた。しかし、劣勢をしのいでシステム変更を行った後は常に先手をとり続けた。

 日本は序盤、ボールポゼッションを高める相手に対して効果的なプレスをかけられなかった。その結果、ずるずると全体を押し下げられて、シュートにまで持ち込まれた。前半17分、右サイドからのクロスをレッキーに頭で合わせられた。シュートはゴール左に飛んだものの、これはGK川島が横っ飛びでセーブ。守護神の活躍で先制点は与えなかった。

 しかし攻撃もリズムが悪かった。日本がボールを保持した時は、相手に激しいプレスをかけられて縦パスを入れられず、横パスを選択する場面が多かった。そこをオーストラリアに狙われ、パスミスからショートカウンターを仕掛けられる悪循環に陥っていた。

 この状況を受けて、アギーレ監督が動いた。前半35分を過ぎたところでシステムを4−3−3から4−2−3−1に変更。前線はワントップに岡崎、2列目に左からFW武藤嘉紀、MF香川真司、FW本田圭佑を並べた。またアンカーをなくし、MF遠藤保仁とMF長谷部誠がボランチでコンビを組ませた。ハーフタイムで仕切り直すという選択肢もあっただろう。しかし、メキシコ人指揮官は思い切った決断で苦境を打開しようと試みた。

 すると40分、本田がPA近くの右サイドでボールをキープしてから裏をとった香川へスルーパス。香川は右サイドをえぐってからゴール前の岡崎に送ったが、これはDFにクリアされた。得点にはならなかったものの、システム変更によって日本のリズムが変わった。

 ボールを収められる香川がトップ下に入ったことで、後方から縦パスの入る回数が増加。そして本田と武藤が両サイドに開いてマーカーを引きつけ、中央を固めていたオーストラリアの陣形を分散させることに成功した。ゆえに日本の選手は相手から受けるプレッシャーが軽くなり、ゴールに近い位置で前を向いてプレーすることができるようになった。前半を終えた時点で、試合の流れは日本に傾いていた。

 後半に入り、日本ベンチは遠藤を下げて今野を投入した。その今野がきっちりと仕事を果たした。後半15分、本田が蹴った右CKがニアサイドに密集した両チームの選手の上を通過し、ファーサイドへ流れる。ワンバウンドしたボールをフリーになっていた今野が頭で押し込んだ。アギーレ監督にとってはシステム変更に続いて、交代策も的中したかたちとなった。

 先制点でさらにリズムがよくなった日本は23分、岡崎に待望のアギーレジャパン初ゴールが生まれた。攻め上がっていたDF森重真人が右サイドを仕掛けてからクロス。岡崎は自身後方に来たボールを右足ヒールに当ててゴールに流し込んだ。本人が「テクニックというよりも気持ちで押し込んだので自分らしかった」と語るゴールで、ここまで全試合に起用し続けている指揮官の期待に応えた。

 日本はその後もともにMF乾貴士、FW豊田陽平が決定機を迎えるなど、主導権を握ったままアディショナルタイムに突入した。無失点で終えたいところだったが、“天敵”に一瞬のスキを突かれた。途中出場のケイヒルに左サイドからのアーリークロスを頭で叩き込まれたのだ。間もなくして試合終了となり、日本が勝利したものの、選手は最後の一瞬まで集中を切らしてはいけないということを改めて感じただろう。

「前半の途中からシステムを変えて、自分たちの狙いもはまるようになったので、良いリズムでサッカーができた」
 MF長谷部誠がこう振り返ったように、前半終盤でのシステム変更が試合の流れが変わった。日本はその流れにうまく乗ったといえる。アギーレ監督はリーガエスパニョーラ時代、戦力が揃っていないチームを率いて強豪と渡り合ってきた。スペインで培った引き出しのひとつが、この試合での布陣変更なのだろう。アギーレ監督は「(アジア杯連覇は)前からプレスをかけてくるオーストラリアがホストチームなので楽ではない」と前置きした上で、「我々の目標はタイトルを守ることだ」と言い切った。修羅場をくぐり抜けてきた指揮官に、恐れるものはない。

(文・鈴木友多)