ルーキーながら、快進撃を続けている柔道家がいる。今春、東海大学に入学した立川桃だ。同大柔道部の門を叩いてからの立川の戦績を紹介したい。

 

 

<2019年11月の原稿を再掲載しています>

 

 9月14日、全日本ジュニア柔道体重別選手権で、女子63キロ級で3位に入る。同月22日には、全日本学生優勝大会・女子5人制に出場。決勝の相手は大会5連覇中の山梨学院大。立川は4人目の副将戦の畳に立った。

 

 2-0で回ってきたため、彼女が勝利すれば東海大の優勝が決まる一戦。「自分が決めるんだ、と強い気持ちで臨んだ」。ルーキーは終了間際に小内刈りで見事、技ありを奪うとそのまま逃げ切った。立川の勝利で東海大が12年ぶりの優勝を達成した。

 

 28日には全日本学生体重別選手権の63キロ級を制覇。昨年、姉・莉奈(現福岡県警)が52キロ級で優勝していたため、“姉妹優勝”とも報じられた。

 

 立川の東海大への貢献はまだ終わらない。10月20日に行われた全日本体重別団体優勝大会。立川は決勝で三将(70キロ)にエントリー。本来は1階級上の相手に合わせ技でポイントを獲得し、同大会初制覇に貢献した。東海大は男子もこの大会を制し、全日本学生優勝大会に続きアベック優勝を成し遂げたのだ。

 

 飛ぶ鳥を落とす勢いの立川に自身の柔道の長所を聞くと、「うーん、どうなんでしょう」とつぶやき、考え込んだ後に、こう答えた。

 

「自分は考えて柔道をやるタイプではなくて……。感覚を大事にしています。4分間で決着をつけたいので、結構、攻めに出る方だと思います。その中でもタイミングは大切かなと思っています」

 

 今後の伸びしろ

 

 彼女の言うタイミングとは――。

「試合中に、“今、(相手の懐に)入れる”というタイミングがあるんです。その時に相手の懐に入れると、もう勝負が決まっているんです」

 

 私は立川を取材し、ますます彼女の将来が楽しみになっている。これだけの成績を残していても、型にはまっていないのだ。「得意の勝ちパターンは?」と水を向けるとあっさりと「特にないです」と笑顔で返ってきた。

 

 立川に今の課題を訊いた時に、さらに今後の伸びしろがうかがえた。

「まだ柔道をする体ができていないな、と感じるんです。可動域が狭く、動きが悪いと怪我にもつながってしまいます。だから今は体づくりを行っている段階です」

 

 彼女はまだ大学1年生である。完成形ではない。“フィジカル面がもっと向上すれば”と思うと、行く末が楽しみになってきてしまうのも無理もないだろう。

 

 立川は現在、呼吸法の見直しや呼吸で横隔膜に刺激を与えつつ、肩甲骨や股関節の可動域を広げるトレーニングに取り組んでいるという。この先を見据えつつ、自分を客観視し、地道な練習に励んでいる。

 

 将来性豊かな素材は、四国の地でどのように育ってきたのか。立川の幼少期を振り返ろう――。

 

(第2回につづく)

 

<立川桃(たつかわ・もも)プロフィール>

2001年1月6日、愛媛県四国中央市生まれ。階級は63キロ級。川之江柔道会-川之江北中-新田高-東海大。3歳で柔道を始める。高校3年時、全国高校柔道選手権大会63キロ級で3位入賞。同年、全日本カデ柔道体重別選手権大会同級で準優勝。翌年4月に東海大に入学すると、団体戦のタイトル獲得に貢献。個人戦では全日本学生体重別選手権大会で優勝を果たすなど、頭角を現している。

 

(文・写真/大木雄貴)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


◎バックナンバーはこちらから