埼玉武蔵ヒートベアーズの松岡洸希です。埼玉西武からドラフト3位指名を受け、NPBへの第一歩を踏み出しました。ドラフト当日は、まさか3位で呼ばれると思っていなかったので驚きました。指名後は取材なども増え、考えられないくらい忙しくなりましたね。西武からの指名挨拶を受け、ようやく「NPBに行くんだな」と実感しているところです。

 

  林昌勇を完コピ

 NPBを意識したのはBCリーグに入ってからで、部活引退後に進路を考えていたときは「高校よりも上のレベルでもやれるんじゃないか」とは思っていましたが、NPBまでは考えていませんでした。しかも1年目でドラフト指名、とは全く頭にありませんでした。

 

 そもそもピッチャーに転向したのは高校3年の夏の大会を前にした頃でした。ずっと内野手をやっていたんですが部員が14人しかいなくて、投手不足ということで監督が「ピッチャーやってみるか」と。特に緊張することもなく、すんなりと転向できましたが、夏の埼玉県大会はボロボロでした。スタメン・サードで出場し、3回無死満塁のピンチでマウンドへ。花咲徳栄高との対戦でしたが1対10のコールド負け。向こうには北海道日本ハムに行った野村佑希がいて、2打席対戦しましたがデッドボールとツーベース、完全にやられてしまいました。

 

 BCリーグへ進んだのは、上のレベルで自分がどう成長するのかを試したかったという気持ちがあったからです。高校に入ったとき身長155センチだったのが180センチ近くまで伸び、そしてピッチャーに転向してそこそこやれる自信もあったので、地元の埼玉武蔵へ進みました。

 

 最初、自分が思っていた以上にリーグのレベルが高く感じたのを覚えています。選手の体の大きさや打球の速さなど、高校時代とはまったく違っていましたね。しかも自分はヒジを痛め、それまでのオーバースローだと負担がかかるということで角晃多監督や片山博視コーチのアドバイスもありサイドスローに転向。3月の終わり、もうシーズンが始まろうというときのフォーム変更で、最初は「横から投げる」ということになかなか慣れませんでした。

 

 サイドはサイドなりに体の負担があり、さらにフォームではバランスが一番大事だと感じたので、体幹を意識してトレーニング量を増やしました。サイドスローでお手本にしたのは東京ヤクルトなどで活躍した林昌勇投手の動画です。完全コピーといってもいいくらい林昌勇投手の投げ方を参考にしましたね。

 

 最初は132キロくらいの球速が149キロまで伸びました。球速が伸びたことと、あとは6月11日に行われたBCリーグ選抜と横浜DeNA2軍との交流戦。ここでNPBの打者を相手に3つの三振を奪えたことが自信になりました。投球にも強気な面を出せるようになり、投げっぷりも変わったんじゃないでしょうか。この試合がきっかけで、それまで「目指せるかな」と思っていたNPBが「活躍できる場所」というはっきりとした目標になりました。

 

 1年前を考えると自分の伸びしろに驚く部分もあります。体重は高校時代から2キロ程度増えたくらいですが、引き締まった感じがあり、動きやすさは一番ですね。

 

 NPBでの目標は早く1軍で活躍し、勝てるピッチャーになること。球速は最速149キロで、まだ伸びると思っていますが、でもマックスのスピードは見栄え程度だと考えています。それよりも平均で140キロ台後半を出せるようにボールの質を磨くことが目標です。

 

 母校初のプロ野球選手ということで祝福されたり、驚かれたり周囲の反応は様々です。西武の方からは「ドラフト3位と高い評価に恥じない活躍、花のある選手になってほしい」と言われました。BCリーグで応援してくださった埼玉武蔵のファンの皆さんには大変感謝しています。西武に行っても変わらず応援していただけたらうれしいです。よろしくお願いします。

 

(写真:入団会見に臨んだ松岡洸希。対戦したいバッターは「浅村栄斗選手」。「全球、直球で勝負してみたい」と語った)

<松岡洸希(まつおか・こうき)プロフィール>埼玉武蔵ヒートベアーズ
2000年8月31日、埼玉県出身。野球を始めたのは小学校1年生、地元の学童チームに所属し、ショートなど野手を務める。中学進学後、軟式野球部に所属。高校は「自宅から近く、兄も通っていた」との理由で県立桶川西へ進み、野球部へ。ポジションはサードだったが高3夏を前に、部員14人というチーム事情からピッチャーも兼任。夏の県大会初戦(2回戦)の花咲徳栄戦、3回からマウンドに上がるも1対10のコールド負け。高校入学時から身長が約25センチ伸びたこともあり、卒業後は上のレベルを目指し埼玉武蔵へ入団した。19年3月末にサイドスローに転向し覚醒。球速も149キロまで伸び、NPBのスカウトの注目を集めた。19年、32試合に登板し0勝2敗、33奪三振。19年秋、ドラフト会議で埼玉西武から3位指名を受けた。身長180センチ・体重81キロ。右投右打。

 

(取材・文/SC編集部・西崎)


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