富山GRNサンダーバーズの松山真之です。オリックスから育成8位指名を受けたとき、驚きとともにやはり嬉しさがありました。指名後はどんどん取材が入り、会見などを行っていく中で、「やらなきゃいけない」とプレッシャーを感じ、決意を新たにしています。ドラフト当日は喜びがありましたが、全体では最下位評価の育成8位指名です。指名されたことに決して満足することなく支配下登録を目標に新たな挑戦の始まりです。

 

 驚き続きの1年

 高校を卒業し、今季から富山に入りましたが、入った当時を振り返るとドラフトで名前が呼ばれるなんて想像もしていませんでした。

 

 シーズン中、富山の試合には多くのNPB球団スカウトが来ていたものの、自分目当ての方はいませんでした。23試合に登板して0勝、防御率4.74という成績だから当然といえば当然です。指名のきっかけになったと思っているのは、9月、二岡智宏監督(当時)に勧められて受けたオリックスのテストです。ここで自己最速の147キロを投げられたので誰かの目に止まったのかな、と。まあテスト当日はそんなことを考える余裕もありませんでしたが。

 

 この1年、本当に驚きの連続でした。BCリーグのトライアウトを受験した際も、まさか合格するとはというのが本音でした。そこで出した球速は135キロで、当時自己最速の138キロにも届かなかったんですから。合格と言われて本人が一番驚きましたよ。

 

 富山に入ったら入ったで、150キロを投げる日本人投手、エグい変化球を放る外国人などがいて、彼らと比べると自分はまだまだなのは分かりました。全然、レベルに達していない、と。でもそこで焦る気持ちはなく、練習を積めば140キロ台に届くし、145キロは出ると思っていました。

 

 富山での初登板は今でも覚えていますが4失点ピッチング。でも対戦していく中で相手とのレベルの違いを感じることはなかったですね。1年、2年と過ごせばBCリーグで勝てる、結果を残すことはできると実感しました。最初は先発、その後は中継ぎで起用され、いろいろな経験をできたのも良かったと感じています。二岡監督からは「技術よりも気持ち」といつも言われていました。技術やトレーニングはすぐに結果は出ないけれど、気持ちや意識の持ち方はすぐにでも変えられて、結果にもすぐに表れる、と。シーズンを通して前向きの意識を持っていたことが、今につながっていると思っています。

 

 ルーキーイヤーを過ごしていく中、リーグで通用するとは思っていても、NPBはさらにその先の世界で考えもしませんでした。小学校、中学校とピッチャーの他にもキャッチャーや内野手を務め、高校ではバッテリー以外に外野も守りました。キャリアを通して全国大会には縁がなかったので、NPBというのは憧れ、テレビの世界でしたね。

 

 今、育成指名されて思うことは、「まだ自分はその入り口にも立っていない」ということです。支配下登録されて初めてNPBの入り口に立った、と言うことができるでしょう。対戦したい選手は同世代の甲子園組です。藤原恭大(千葉ロッテ)など、彼らの活躍は去年の夏、テレビでずっと見ていました。彼らと対戦できるところまで行きたいですね。高校時代は彼らと対戦することなんてまったく考えられなかったけど、今は挑戦権だけは得たと思っています。

 

 プロで目標とするのは藤川球児投手(阪神)です。ああいう風にまっすぐで空振りのとれるピッチャーになりたいし、ああいうストレートをものにしたい。そのためには球速ももっと上げないといけませんが、NPBでは155キロくらいまでは伸びると思っています。トライアウトの135キロから始まり、富山で147キロ。自分の伸びしろを信じ、オリックスでもさらに先を目指していきたいですね。

 

 富山ではチームの皆に本当によくしてもらいました。食事に連れていってもらったり、アドバイスをもらったり。さらに富山のファンの人たちの応援にはいつも勇気づけられました。富山球団OBとしてNPBでも活躍できるように頑張りますので、オリックスに行っても応援よろしくお願いします。

 

<松山真之(まつやま・まさゆき)プロフィール>富山GRNサンダーバーズ
2000年8月18日、東京都出身。野球を始めたのは小学校1年生。学童チームでは複数のポジションを経験した。中学進学後、軟式野球部に所属し、ピッチャー、キャッチャー、内野手を務める。都立四商に進み、ポジションはピッチャーを基本にキャッチャーとしてマスクも被り、外野手の経験もある。高校時代は都大会初戦敗退で全国大会に縁はなく、卒業後は就職を考えていたがこれに失敗。新たな進路として周囲から勧められBCリーグのトライアウトを受け、富山に入団した。ルーキーながら中継ぎを中心に起用され、高校時代のマックス138キロは富山で147キロまで伸びた。23試合に登板し、2敗1セーブ、防御率4.74。19年秋、オリックスから育成8位指名を受けた。身長174センチ・体重76キロ。右投右打。

 

(取材・文/SC編集部・西崎)


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