(写真:プロリーグ化に向けた構想などを語った清宮副会長)

 19日、スポーツビジネスの促進とスポーツを通じた地域活性化のための展示会&カンファレンス「スポーツビジネスジャパン2019 together withスタジアム&アリーナ2019」が、さいたまスーパーアリーナで開催された。2日間行われるイベントの初日は、日本ラグビーのプロ化についての特別講演などを実施。プロ化を進める日本ラグビーフットボール協会の清宮克幸副会長、境田正樹理事に加え、サッカーとバスケットボールのプロ化に尽力した川淵三郎氏、ラグビー日本代表(ジャパン)の元キャプテン廣瀬俊朗氏が登壇した。

 

  JリーグとB.LEAGUEを立ち上げた川淵氏は、プロ化を進めるラグビー界にとっては、いわばプロ化の先輩である。「日本のラグビーを変える!~新しいプロリーグとは~」をテーマにしたパネルディスカッションでプロ化に提言した。

 

 ラグビーW杯日本大会でジャパンはベスト8入り。“W杯ロス”という言葉も聞かれるほどの盛り上がりを見せている現状に、川淵氏はこう印象を述べた。

「ラグビー用語をこれだけ覚えたことは、かつて日本人にはなかったんじゃないかと思う。それほど多くの人がラグビーを見ました。ぶつかり合いのすごさにみんな圧倒されて、そして日本チームが本当によく頑張ったということでラグビーのプロ化に向けてはすごくいい準備ができた」

 

(写真:川淵氏のアドバイスに耳を傾ける清宮副会長)

 一方で心配することもあるという。サッカーとバスケットボールを比較に用い、こう説明した。

「ラグビーのプロ化は難しいと思うんです。なぜならJリーグとB.LEAGUEはアジアの中でも日本は弱小国だった。オリンピックに、サッカーの場合は28年間出られなかったですし、男子バスケットボールも1976年以降出ていなかったんです。弱い国内リーグの中でプロ化をしたことで世界との比較がまるでなく、地域に根差すことに一生懸命注力した。ところがラグビーは既に世界のベスト8です。だからこれでW杯の試合と、どうしても比較されてしまうんですね。そういう意味ではサッカーの方がよっぽど楽だった」

 

 これに対し、清宮副会長は“反論”する。

「ラグビーはサッカーと違い、世界のトップ選手を呼べるんです。つまりW杯で見て活躍した選手がそのままリーグで試合するというサッカー、バレー、バスケットボールにはできないことができる」

 通常、秋から翌年の1、2月まで行わる日本ラグビー。当然、プロリーグもそのスケジューリングを組む流れである。清宮副会長が各チームの海外トップ選手獲得に自信を見せるのは、南半球のスーパーラグビーとは異なる期間に開催するために両リーグの選手が参戦も可能になるからだ。

 

 2021年秋のスタートを目指す新リーグが狙うのは、日本市場ではなく世界市場だ。清宮副会長は「放映権で稼ぐ」という。

「『どうやって稼ぐのか』と良く聞かれます。『ラグビーは年間の試合数は少ないし、選手の数もたくさん必要。プロ化しても採算が取れない』という声もたくさんある。僕らは世界をマーケットに考えています。放映権でこのリーグ成功させようと決めているんです。世界のラグビーファンが観るために、集めた資金と投資する。それを21年から数年間続ければ、世界のラグビーはおそらく再編がある。今は南と北に分かれているラグビーが、縦に分かれる時代が絶対くる。そのタイムゾーンによって、ラグビー界が分かれたときに日本が中心にいるべき。そこにいなきゃいけないと考えると、今プロリーグを立ち上げておかないとリーダーになれない。BでもJでもない世界をリードする組織を10年後につくるために地域に根差したファンに愛されるプロリーグをスタートさせなければいけない」

 

(写真:和やかなムードでプロ化に向けた思いを語り合った)

 意気盛んな清宮副会長をたしなめるように川淵氏はこうアドバイスを送る。

「プロとして成功するための、収入源は4つある。入場料、スポンサー、マーチャンダイジング、放送権料。清宮副会長が言われたのは放送権料中心に新しいラグビーリーグを成功させたいということだけども、やはり入場料収入、スポンサー収入にもやっぱり注力していかないと。『放送権料が全てを占める』と言ってるわけではないんだけど、それがなくなったらどうなるのか。4つの収入源を大切にした方がいいなと僕は思いますね」

 

 続けて川淵氏は「清宮副会長と境田さんがいれば大丈夫だとは思いますけど、僕も可能な限りはサポートできればいいと思っています。“絶対に成功しなければならない”という強い信念を持ってやることが大事です。ラグビー界で気心が知れた仲だと言っていても、最後の所で反対する人も結構出てくるもの。強い気持ちで突破していく。清宮副会長なら可能でしょう」とエールを送った。

 

(文・写真/杉浦泰介)