BCリーグ戦記、2020年最初の更新は村山哲二BCリーグ代表に登場願った。今季から新球団・神奈川フューチャードリームスが加入し、東西計12球団でシーズンが戦われる。「12球団化はひとつの区切り」と以前から語っていた村山代表に、新シーズンに向かうリーグのビジョンや意気込みを聞いた。

 

 観客増に向け充実路線へ

 2006年からスタートしたルートインBCリーグは、おかげさまで14年目のシーズンを迎えることとなりました。これもひとえに皆さまの応援のおかげと感謝しております。

 

 今季から神奈川が新加入し、東西6球団ずつ12球団でリーグ戦を行います。12球団という一区切りがついたことで、リーグとして取り組むべきは「拡張」よりも「充実」だと考えています。12球団という体裁の良い入れ物は完成したので、今後はその中身をいかに膨らませていくかが課題となります。

 

 一番は観客動員です。昨シーズンは前年比103%となる22万8784人をリーグ全体で動員しました。1試合平均は595人で、各チームの1試合平均動員数は以下のとおりです。

 

◎2019年BCリーグ1試合平均観客動員数
福島 336人
茨城 573人
栃木 1409人
武蔵 425人
群馬 559人
新潟 732人
信濃 530人
富山 561人
石川 428人
福井 436人
滋賀 305人

 

 栃木の1409人がトップで、リーグが及第点とした1試合平均500人をクリアした球団は6球団。全体として動員は増えてはいるものの、やはり各チームでさらにファンを呼んでほしいですね。そのためにはスタジアムを「行きたい」「また来たい」と思わせる空間にする必要があります。

 

 観客数の多い球団とそうでない球団、実際にスタジアムに足を運ぶと、その差は明確です。たとえばスポンサー企業の屋台が並ぶなど食が充実していたり、試合前に選手がMCと一緒になってファンサービスを実施したり、試合終了後にもイベントがあったり、動員数の多い球団のスタジアムには「楽しさ」がありました。インフラなどチーム間でスタジアム事情に差はありますが、それでも「行きたい」「また来たい」という空間づくりの有無は数字に直結しています。

 

 球団を運営するスタッフはプロ集団であり、プロとはいい意味で予想を裏切ることができる人たちだと思っています。お客さんの予想をどこまで上回れるか、球団の腕の見せどころです。「楽しかった。また行きたい」と多くのお客さんに思ってもらえる。14年目を迎えるにあたり、各球団は改めてリーグ設立の理念を再確認し、ガバナンスを高めていってほしいですね。

 

 各球団のファンサービスで印象に残っているのが、埼玉武蔵です。球場の雰囲気を盛り上げるためのMCは今では当たり前ですが、武蔵はそのMCが5人もいるんですよ。試合前からあちこちでファンサービスに努めていたのが印象的でした。また選手の写真やサインをグッズとして販売。入場料以外にも球団の収入を確保し、その収益をまた次のサービスにいかしていく。そういう仕組みが見て取れました。武蔵のこうした取り組みからは、「全力でやる」という本気が感じられましたね。

 

 新しいシーズンに向けてどんなサービスを提供し、そしてファンの皆さんを満足させるのか。各球団の"プロフェッショナル"の手腕に注目したいものです。ファンの皆さんも1試合でも多く、「ふるさとの全力プロ野球」であるBCリーグに足を運んでください。4月11日の開幕をお楽しみに!
(つづく)

 

 

<村山哲二(むらやま・てつじ)プロフィール>BCリーグ代表・株式会社ジャパン・ベースボール・マーケティング代表取締役

1964年9月19日、新潟県出身。県立柏崎高校野球部に所属し、卒業後は駒澤大学北海道教養部に進学。同校準硬式野球部に入部し、主将としてチームを全国大会に導いた。大学卒業後は新潟県の広告代理店に勤め、アルビレックス新潟(Jリーグ)の発足時から運営プロモーションに携わる。06年3月に退社、06年7月に株式会社ジャパン・ベースボール・マーケティングを設立。代表取締役に就任した。

 

(取材・文/SC編集部・西崎)


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