(写真:TKO勝ちで王座防衛した村田)

 23日、ボクシングのトリプル世界戦が神奈川・横浜アリーナで行われた。WBA世界ミドル級タイトルマッチは王者の村田諒太(帝拳)が同級8位のスティーブン・バトラー(カナダ)を5ラウンド2分45秒TKOで破り、防衛に成功した。IBF世界フライ級タイトルマッチは同級14位の八重樫東(大橋)が王者のモルティ・ムザラネ(南アフリカ)に9ラウンド2分54秒TKO負け。WBC世界ライトフライ級タイトルマッチは王者の寺地拳四朗(BMB)が同級12位のランディ・ペタルコリン(フィリピン)を4ラウンド1分8秒TKO勝ち。寺地は7度目の防衛に成功した。

 

 村田のチャンピオンロード第2章はKO防衛で繋いだ。自らの拳でビッグマッチの夢を広げた。

 

 対戦相手は24歳のカナダ人。WBO1位にランクインしたこともある。通算戦績28勝1敗1分けだ。村田の倍近くプロのリングに上がっている。プロキャリアでは劣るが、オリンピック金メダリストで世界王者と実績は村田が格上だ。

 

(写真:破壊力抜群の右ストレートを打ち込んだ)

 序盤から圧力をかけ、相手を追い込む。射程圏に入れば、重いパンチを叩き込んだ。派手さはないが、確実に仕留めにいった。

 

 決着は5ラウンド。右の連打で追い詰めると、最後は左フックがアゴをとらえた。崩れ落ちるバトラー。レフェリーが試合を止め、ゴングが打ち鳴らされた。

 

 昨年10月に失ったベルトを7月に奪い返した。王座奪還に続く連続KOで2019年を締め括ってみせた。

「激動の1年だった。自分のホグシングを確立できた」

 

(写真:圧勝に見えたが被弾し、左目上を腫らした)

 日本のゴールデンボーイは東京オリンピックイヤーをどう迎えるのか。トップランク社のボブ・アラムプロモーターはビッグマッチを示唆。サウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)、ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)……。ビッグネームの名に周囲の期待は膨らむばかりである。

 

 村田自身も望むビッグマッチ。腰に巻くベルトをさらに輝かせるつもりだ。

「東京オリンピックの盛り上がりに花を添えられるように頑張ります」 

 

 八重樫は勝てば日本人最年長世界王座戴冠だったが、“日本人キラー”ムザラネの前に散った。

 

「力不足」という言葉を繰り返した。序盤はほぼ互角、ジャッジによっては八重樫優位に試合を進めた。

 

(写真:返しのパンチを浴びる場面も目立った八重樫)

 徐々に互いの顔をヒットするようになり、“激闘王”の真骨頂かと思われたが、先に足が止まったのは八重樫だった。

 

 勝負の決まった9ラウンドは、相手のラッシュに遭い、セコンドの大橋秀行会長がタオルを投げ掛けた。ここでは耐えたものの、防戦一方の八重樫に残り6秒でレフェリーが試合を止めた。

 

 試合後の控え室で八重樫は、「今は何も言えない」と進退について名言を避けた。3階級制覇の元王者は来年2月で37歳になる。

 

 寺地は、リングネームを本名に変えてから最初の試合を白星で飾った。

 

 当初予定されていたIBF王者のフェリックス・アルバラード(ニカラグア)との統一戦は相手の体調不良によって流れた。結局、試合はペタルコリンとのWBCタイトルマッチに変わったが、王座は揺るがなかった。4ラウンドTKOでV7を達成した。

 

(文・写真/杉浦泰介)