2020年東京五輪・パラリンピック競技大会組織員会が都内で理事会を開き、大会開催基本計画案が承認された。理事会では、これまで理事を務めていた丹羽秀樹文部科学副大臣を副会長に選定。街づくり・持続可能性委員会、文化・教育委員会、経済・テクノロジー委員会と新たな3つの専門委員会の設置を決めた。大会開催基本計画は、2月上旬の国際オリンピック連盟(IOC)との事務折衝「第3回プロジェクトレビュー」で調整した後、IOCに提出する。
(写真:「あっという間に1年になりました」と振り返る森会長)
「すべての人が自己ベストを目指し、1人1人が互いを認め合い、未来につなげるという大会ビジョンに基づきまして、力を尽くしてまいりたいと思います」。発足から2年目を迎え、組織委員会の森喜朗会長はそう意気込んだ。

 今回の理事会で承認された大会開催基本計画は「大会ビジョン」「大会のクライアント」「会場・インフラ」「大会を支える機能(ファンクショナルエリア)」「推進体制」「アクション&レガシー」「エンゲージメント」の7章で構成されるという。森会長は「2020年に向けた準備の出発点になります。今後はこの計画に基づいて、アジェンダ2020などを踏まえIOC、IPC、NF(国内競技団体)、IF(国際競技団体)とともに連携を深めながら、ヘリテージ(継承)をさらに進めていきたいと考えています」と語った。

 2月までにIOC、国際パラリンピック委員会(IPC)に提出予定の大会開催基本計画案。組織委の武藤敏郎事務総長は、東京大会の独自色を3点挙げた。

 まず1点はビジョンの具体化である。「従来は簡潔で抽象的なものが多かった。エッセンスとなるところを抽出するようなかたちで取りまとめるいったような丁寧な手続きを取って決めました」という。もう1点はパラリンピック重視の姿勢を打ち出すことだ。東京は2回目のパラリンピック大会を開催する初めての都市であることを踏まえ、「パラリンピックムーブメントの発展に貢献し、活力ある共生社会を実現する記述を盛り込もうとしております」と語った。3点目は情報通信について「情報技術が進んでいる大会になるだろうと。サイバーセキュリティという難しい問題もあるが、これをうまくやっていくことが成功に必要である」との考えを示した。

 昨年12月に採択されたIOCの中長期改革案「五輪アジェンダ2020」。40項目に及ぶ提言の中に、既存施設の有効活用やコスト削減についても触れられている。東京が進めている会場計画の見直しへの影響は大きい。森会長は「我々の意向を汲んでくれたような気はします。“日本が求めている方向はいいんだ”と示してくれた。さらに会場の見直しを進めていきたいと思います」と語る。「とにかくお金をかけないことと、レガシーを残すこと」を優先に考えていくのだという。その会場計画については「できるだけ速やかに決めたい」と森会長は、7月のマレーシア・クアラルンプールでのIOC総会を目処としていることを明かした。

(文・写真/杉浦泰介)