BCリーグ戦記は先月に続いて村山哲二BCリーグ代表のインタビュー後編である。14年目を迎えるBCリーグは今季から12球団でシーズンを戦うことなるが、昨年秋、いわゆる「福井ショック」と呼ばれる球団消滅の危機もあった。その苦難を乗り越えた今だからこそ関係者全員が抱く危機感とは? リーグのカネ、ヒト、モノについて村山代表に聞いた。

 

 オーバーエイジ枠の拡大

 14年目のシーズンを迎えるにあたり、ここまでリーグが存続し、発展してきたのもひとえに皆さまの応援のおかげと改めて感謝しております。

 

 さて、私を含めリーグ関係者には危機感があります。というのも昨年10月、福井ミラクルエレファンツが新シーズンに向けた加盟更新を行わないと発表しました。ずっと継続の方向で相談をしていたので、「まさか」という思いが強かった。その知らせを聞いたときに、まずは2008年に加入し、そこからの12シーズンをともに過ごしたエレファンツには感謝の思いしかありませんでした。その後は、「とにかく福井に球団を存続させなければ!」という方向で動き始めました。

 

 ここで福井から球団がなくなってしまったら、もう二度と福井にプロチームはできないんじゃないか、と。福井はサッカーやバスケットなどプロチームの空白地帯なんですよ。そういう状況で福井球団がなくなったら……。リーグとしてもスポンサーを探し、人を送るなどして、存続が決定しました。本当にホッとしました。新球団の名称は福井ワイルドラプターズ。旧球団と同じように福井の人たちに愛される球団になってほしいものです。

 

 福井ショックはリーグにとっても、他球団にとっても衝撃でした。だからこそもう一度気を引き締めて観客動員に力を入れる。2020年はそういう年になるでしょう。球団だけでなくリーグとしてもきちんとお金が回る体制やシステムを作っていく必要があります。

 

 これはよく聞かれることですが、「選手がドラフト指名されNPBに入団するとBCの球団にはいくら入るのか?」と。選手契約書にも書いてありますが、契約金と初年度の年俸の20%、それと2年目の年俸の10%が入ってきます。現状でその総額は年間で約1000万円。リーグ全体のビジネス規模の約2%です。

 

 アメリカの独立リーグであるアトランティックリーグは、メジャーリーグに選手を送り込むことをビジネスとして成立させています。メジャー球団が選手を獲得したらいくら、という契約がある。我々がその部分をビジネスとして確立するにはまだまだです。NPBから「払いますよ」というのが現状ですから、それを「これだけ払ってください」にするには長い時間がかかるでしょう。そのためにも、球団、リーグの力をつけなくてはならない。だから前回も言ったとおり観客動員の増加など足元をしっかりと固め、基盤を強固なものにしていくことがリーグ発展のカギになります。

 

 またファンの皆さまだけでなく、BCリーグに関わる人たちを増やすことも重要です。選手はもちろん、裏方さんや運営などのスタッフを含め、優秀な人材を引きつける魅力あるリーグにならなければいけない。「プレーしたい」選手はもちろん、「働きたい」という人材も数多くBC球団に来てほしい。そのためにも地元密着というのは大事なことだと考えています。

 

 今シーズンから26歳定年制とオーバーエイジ枠のルールが少し変更になります。26歳定年制はそのままですが、これまで5人だったオーバーエイジ枠を6人に拡大します。その理由は、以下の3つです。27歳以上の選手も多くのファンから支持されていること。そして若い選手にとって良い目標になっていること。高いレベルのプレーを披露していること。これらを踏まえ、拡大を決定しました。

 

 オーバーエイジ枠の運用ついては、各チームで個性が出ていますよね。NPBから人気選手を獲得してファン拡大や若手の見本とするチームもあれば、根強い人気の地元出身のベテランを主軸に据えているチームもあります。各球団の意見を取り入れながら、これからも試行錯誤していこうと考えています。

 

 選手に対しては、リーグとしてセカンドキャリアをサポートするキャリアサポートセンターの開設などを実現しました。リーグとして責任を持って次のステップを紹介し、その実績を積み重ねることで、アマチュアの指導者の方もBCを進路として選手に勧めやすくなる。これも選手の将来、そしてリーグの将来のためにも大切な部分です。

 

 立正大コーチを務める青木智史のようにBCリーグ出身者が大学のコーチや監督を務めることも増えてきました。今後、こうした人材輩出、人材育成面も充実させていきます。

 

 14年目のシーズンは12球団でスタートします。「ふるさとの全力プロ野球」のスローガンの下、開幕戦は4月11日に行われます。是非、地元の開幕戦に足を運んでみてください。これからもBCリーグへの応援をよろしくお願いします。

 

<村山哲二(むらやま・てつじ)プロフィール>BCリーグ代表・株式会社ジャパン・ベースボール・マーケティング代表取締役

1964年9月19日、新潟県出身。県立柏崎高校野球部に所属し、卒業後は駒澤大学北海道教養部に進学。同校準硬式野球部に入部し、主将としてチームを全国大会に導いた。大学卒業後は新潟県の広告代理店に勤め、アルビレックス新潟(Jリーグ)の発足時から運営プロモーションに携わる。06年3月に退社、06年7月に株式会社ジャパン・ベースボール・マーケティングを設立。代表取締役に就任した。

 

(取材・文/SC編集部・西崎)


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